『地球の限界』を考えてみよう。それは・・・(25)

車好きの皆さんには、少し古い情報も織り交ぜながらになりますが、
その経緯を知って戴きたいので、既存情報をお読みください。

5)フランス/
2017年10月号 フランスの電気自動車政策
2017.09.18
フランスの電気自動車政策

 7 月、世界中がざわめくような政策が発表された。アメリカの「パリ協定」離脱を横目に、CO2 削減および大気汚染対策のため、2040 年までに国内のガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する旨を、フランスは公表した。環境問題に大きな一石を投じたのである。

それらの車両に替わるのは、電気自動車(EV=electric vehicle)である。現在までもフランスはEV の普及を推進してきた。しかし、それでも2017 年上半期の新車の販売台数では、ガソリン・ディーゼル車が95.2%を占め、ハイブリッド車(HV=hybrid vehicle)が3.5 %、EV はわずか1.2%だ。EV 普及には、走行距離、バッテリー寿命、充電インフラなど、解決しなければならない問題が多くある。
 1 回の充電による走行距離については、ルノーが400km の走行を可能にしたという。フランス政府が、ルノーとPSAの大株主であることも、技術開発推進に追い風となっている。また、充電インフラもパリのシェアEV(Autolibʼ)の発足時、短期間のうちにパリ中に充電箇所を整備した実績もあり、自信を持っているのであろう。

このフランスの政策は、世界に大きな影響を与えた。ドイツにもガソリン・ディーゼル車の販売禁止への動きがあり、環境問題に積極的なオランダやノルウェーも同調している。また、アジアでも、インドは「30 年までに販売車両を全てEV にする」と大きな目標を掲げ、中国も同様の政策を試案している。
 現状では、EV の方がコスト高であるが、部品や製造工程を比較すると、EVの方がはるかにコストカットしやすいとの報告がある。車両販売価格の問題は、価格低下や助成金で解決できるとして、次に電気代の問題がある。燃料費である電気代が高ければ、普及の足かせになることは明らかだ。
 この点、原発大国のフランスは自信満々である。フランスの電源別電力構成比は、2014 年時点で、原子力77%、水力・再生可能エネルギー17%、石炭・石油・天然ガス5%で、CO2 の観点からも問題がなく、安い。他方、フランスは「原発の発電量比率を下げる」と表明しているが、この意味を取り違えてはいけない。これは、「比率を下げる」のであり、「発電量を下げる」のではない。つまり、次のようにするということだ。
・2014 年:6,313 万kW(全体の75%)
・2025 年:6,320 万kW(全体の50%)
 この電力供給に対し、日本は、化石燃料86%、原子力0%、再生可能エネルギー14%である。たとえEV が普及しても、燃料でCO2 を排出するのであれば、意味がない。どのような対策をたてるのだろう。
 
 
6)デンマーク/
「2050年までに化石燃料によるCO2排出をゼロにする」という国を挙げた政策を打ち出しているデンマーク政府が「2030年までにガソリン車・ディーゼル車を廃止し、2035年までにハイブリッド車も廃止していく」という計画を発表しました。政府は同時に、電気自動車や燃料電池自動車を100万台販売するという目標も掲げています。

Denmark to ban petrol and diesel car sales by 2030 – EURACTIV.com
https://www.euractiv.com/section/electric-cars/news/denmark-to-ban-petrol-and-diesel-car-sales-by-2030/

 デンマーク政府は、化石燃料の使用率を2020年までに50%、2050年までにゼロにするという目標を掲げ、環境に優しい政府を目指しています。実際に、政府は電力発電には積極的に風力発電を利用しようと働きかけており、その結果、2015年には総電力消費の42.1%を風力発電が占めています。

by Jay Iwasaki

 2018年10月2日、デンマークのラスムッセン首相は議会演説で、「デンマークのディーゼル車とガソリン車は過去のものにならなければなりません。未来は環境に優しいものです。12年後には、ディーゼル車とガソリン車を新規に販売することを禁止する予定です。さらに、17年後にはデンマークの新車をすべて電気自動車やゼロエミッション車に置き換えます」と宣言。2030年までにガソリン車やディーゼル車を、2035年までにハイブリッド車を段階的に廃止したいという考えを明らかにしました。

 また、実際に2030年までにガソリン車・ディーゼル車の販売が禁止になると、需要として100万台の電気自動車・ハイブリッド車が必要となる可能性があると、ラスムッセン首相は認めています。9月末の気候評議会では「電気自動車を50万台にまで増やしたい」としていた目標が倍になることについて、ラスムッセン首相は「目標の達成は容易ではない」とコメントしています。

 これに対して、デンマークのエネルギー企業「Dansk Energi」の副社長を務めるアンデルス・ストゥゲ氏は「電力業界は、ガソリン車・ディーゼル車の段階的な廃止を支える覚悟はできています。ただし、電気自動車を普及させるためにはまず充電スタンドを用意して、電気自動車に十分電力を供給できる電力インフラを準備しなければなりません」とツイートし、電気自動車の普及よりもまず充電スタンドなどのインフラ整備を優先すべきだと述べています。

by News Oresund

 なお、国内自動車産業を持たないデンマークでは、自動車の登録税として車両価格の180%が課されます。電気自動車には優遇措置として登録税を免除していましたが、経済政策の一環として2015年末に電気自動車への税優遇制度を廃止し、デンマークの電気自動車市場は急激に縮小。実際に、デンマークにおける電気自動車の新車登録は2015年に4762件ありましたが、2016年には1438件、2017年には913件まで減少したとのこと。

 電気自動車の販売台数目標を倍にしたいという政府の思惑に対して、経済政策による電気自動車市場の縮小は明らかな向かい風となります。ラスムッセン首相はこの状況を改善するべく、電気自動車に対する補助金制度を見直すつもりだとコメントしています。
 
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