見出し画像

「認知症の人が見ている世界」と「家族やケアをする人が見ている世界」

 私はこれまで数多くの認知症の人と接し、認知症の方の心理状態について模索してきました。そうした中でわかってきたことは、認知症の人の目に映る世界と認知症でない私たちが見ている世界には少しズレがあることです。

 70〜80代の認知症の人に年齢を聞くと、自分のことを40代と答える方もいます。これは、自身が今いる場所・日付や時間の把握が苦手になる「見当識障害」のせいで、自分の正しい年齢がわからなくなってしまうためです。

 そこでみなさんに知っていただきたいことは
認知症の人がみている世界」があるということです。そのことがわかってくると、認知症ご本人が戸惑い、不安や孤独感にとらわれ、頑張っていることがわかると思います。そうした心理の中に良質なケアのヒントがたくさんあるのです。

 認知症ケアでは、ご本人に安心してもらうことが重要です。ご本人が何を考え何を求めているかを想像できれば、どう接すればご本人が安心してもらえるかをケアする者が考えられるようになります。認知症の人が安心を獲得できれば、徘徊・暴言・介護への抵抗などの行動心理症状(BPSD)が和らぎケアする側の負担を減らすことにも繋がります。

 ただし認知症の世界は、本人の生活歴・性格なども関係しています。同じよう世界が見えていても、どのような対応が適切かはその人によって異なります。「これが正解」というものはありません。注意深く認知症の人の様子を見て、話を聞いてどう対応すれば安心を引き出せるかを柔軟に考えることが大切です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?