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「どこにいるのかがわからない」 〜時間と場所の見当識(けんとうしき)障害〜

そもそも『見当識』とは?!

 みなさんは、『見当識(けんとうしき)』という言葉を聞いたことがあるでしょうか。医療・介護現場ではよく耳にする「見当識」ですが、これから資格取得を目指す人は聞きなれない言葉かもしれません。

 見当識とは、日付現在の時刻場所周囲の状況人物の把握などを総合的に判断し、自身が現在置かれている状況を把握し理解する能力のことをいいます。これらの能力が欠如してしまい、さまざまな日常生活を送る中で障害となってしまうと「見当識障害」と診断されます。
 
 見当識障害とは、人・時間・場所がどこかを認識しづらくなることをいいます。「いつ」なのか、目の前にいる人が「誰」なのか、ここが「どこ」なのかという認識が苦手になってしますので、本人はとても不安や恐怖を感じてしまいます。

認知症の症状の1つ「見当識障害」で現れる3つの症状

見当識障害には大きく分けて3つの症状があります。

◇今がいつなのか解らなくなる「時間」の見当識障害

日付や時間を間違えることが多く、24時間の中で朝昼夜の判断や今の季節の認識ができなくなります。そのほか、遅刻しがちになったり、朝食を食べた記憶が無く家族に何度も尋ねたり。また、時間感覚欠如により外出の準備ができない。季節外れの服を着てしまう。などといった症状も見られるようになります。

◇どこにいるのか解らなくなる「場所」の見当識障害

建物や風景の識別ができない「街並み失認」と、家や目的地までの道順が解らなくなり迷ってしまう「道順障害」が出現します。これらにより、目的地は解っているのに、そこにたどり着くためにどこをどう通ればよいかの判断ができなくなります。

◇誰であるか認識ができない「人」の見当識障害

見当識障害が現れると、人を間違えることが多くなります。家族や友人、知人等のつながりが解らなくなったり、自分の名前や産まれてこれまでの記憶や認識があいまいになったりする障害です。

脳には位置情報を認識する『GPS機能』が備わっている

 私たちは当たり前のように、自分がどこにいるのか、今は何年何月何日なのかを認識しています。スマートフォンには、位置情報を認識する「GPS機能」や時計の機能が備わっています。実は、私たちの脳にも同じような機能が備わっています。ところが、認知症になると、その機能が低下して自分がどこにいるのかわからなくなってしまうときがあります。

 その原因として、自分を実年齢よりも若いと思い込み、昔の世界に戻っていることが考えられています。特に男性の場合、働き盛りだった30〜40代に戻るケースが多いようです。これは認知症による不安を解消するために、自分がはっきりわかる時代や元気で充実していた時期に戻るのではないかと推測されています。

対応のポイント
◉まずは安心してもらうために笑顔で話を聞こう。
 相手と同じ高さの目線にしましょう。
◉本人の様子をよく見て、相手がどのような場所・時間にいるかを想像しよう。
◉認知症の世界と非認知症の世界のギャップが少なくなるように接しよう。

 みなさんも、目が覚めた時に自分がどこにいるのかがわからないと、不安になって混乱すると思います。こうしたケースでは、優しく場所を説明すれば正しく認識してくれる可能性もあります。大切なのは安心できるように笑顔で声をかけ、ご本人の状態をよく見て話を聞くことです。
 
 ご本人が「どこにいるのか」「いつの時代にいるのか」を想像できることがあります。その世界に寄り添い、認知症の世界と非認知症の世界のギャップが少なくなるように接していくことが大切です。


 

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