自曲のサブスク配信で躓いた話(後編)
前回探した中で、Avexが運営するディストリビューションであるBIG UP!に登録してみることにしました。
BIG UP!審査落ち
BIG UP!には無料プランがあり、初期費用0円で配信を開始する事ができます。これはいいと思い、一気に過去作と新譜すべてを登録して審査に出しました。1st~3rdまでのアルバムは数日後に無事審査が通ったとのメールが届いたのですが……
4th、5thアルバムの審査に落ちました。
いずれも「フリー音源/ゲームの効果音を使用している可能性がある」という指摘。ゲームの効果音というかまぁゲームそのものですのでね。どういう仕組みで審査しているのかはわからないんですが、別サービスながら過去にも似たような事例を見た事があったのであ、これか~と。
とにかくゲームみたいな音だから商用利用の許諾書を送れとの事なのですが、フリー音源を使っているわけでもなければ許諾が必要なものは無いので異議申し立てをする事に。
異議申し立て①
まず許諾が必要となるような音源や素材は使用していない事を説明し、もう一度確認してもらうように問い合わせました。
5日ほどで返信がきました。
無断転載はご遠慮くださいとの事なので、返信に関しては内容のみざっくり記述しますが、
"LSDjなどのソフトを使用しているようなので商用利用に関するライセンスを提出してほしい”
という内容でした。
異議申し立て②
前提としてLSDjやDn-FamiTrackerは「ソフトウェア音源」ではなく「作曲ソフト」です。ここではっきりさせておきたいのが、LSDjにせよ、Dn-FamiTrackerにせよ基本的に「ソフトウェアの利用に関する許諾」は存在しても「制作した楽曲に関する許諾」は無いという事です。
一般的なDAWを使って作曲する人でもそれで作った曲を売るためにDAWの制作会社に許諾を取ったりはしませんよね?(フリー/有料の”音源”を使用する際には音源側に許諾があったりするので注意するべきですが)
参考までにLSDjのライセンスは以下の通りです。
という事で再び問い合わせを送信します。
再び返ってきた内容は、
LSDjのライセンスを確認したところ、
”個人的または教育的な使用のみを目的としたフリーウェアです。
営利目的の方は、まず著作権者の許可を得てください。
商用利用には、Little Sound Djの代金を請求することも含まれます。”
とあるので、商用利用する場合はライセンス費を払う義務があり、また、権利者の許諾を得る必要があるようです。
とのこと。原文だと
Little Sound Dj is freeware for PERSONAL AND/OR EDUCATIONAL USE only.
Commercial users should seek permission of the copyright holder first.
Commercial use includes charging money for Little Sound Dj.
この段ですね。
これはBIG UP!側の読み違いで、ここでいう使用やLSDjの代金を請求する行為というのは、先ほど述べたようにLSDjのROMを勝手に販売するとか、フラッシュカートリッジに焼いて販売するとかそういう事に対する内容です。
確かに「個人使用や教育目的以外で使うな」とも取れる文面ではあるので仕方ない気もしますが。
もうこの辺で話が進まなくてどうしたもんかなという感じ。
異議申し立て③
もうこれは正式に権利者に確認して黙らせるより仕方ないなという結論になり、正直こんな連絡とるのも申し訳ないと思いつつLSDjの開発者であるJohan Kotlinskiにメールを送りました。
返信、軽。
即OKが出たので「正式に開発者から商用利用の許諾を受けた人」になりました。もう誰にも文句は言わせません。
という事でまたまた問い合わせを送信。
勝訴
BIG UP!からの返信は、
”確認が出来ましたので、このまま再申請を行ってください。”
との事でした。そりゃそうだ。
無事お墨付きを得たので再度配信の申請をしました。できれば新譜含めて全て同日配信スタートできれば最高だったんですが、まぁ仕方ないですね。
BIG UP!が悪い訳ではない
そんな感じで配信までにいくつかの壁があったわけですが、結局の問題は割と語られがちなチップチューンに置ける権利問題に近かったような気がします。LSDj、もといGBやFCで作ったチップチューンを商用利用できるのか?というね。
この問題は定期的に界隈で語られているような気がしますが、自分が色々調べた中での結論は「問題ない」です。厳密には「LSDjやFamiTrackerで作曲をし、それをソフトウェア上で録音する分には何も問題はない」ですが。
よくN社に怒られるのではとか言われるんですけど、冷静に考えてほしいのが個人開発のLSDjというソフトウェアとBIOS不要(もしくは互換BIOS)のエミュレーターを使っている時点でN社とはあまり関係がないので、いきなりN社から怒られるというのは基本起こり得ないと思います。怒られそうな場面といえば「”改造した実機”とROMを焼いた”マジコン”でライブする」とかそういう部分なので、曲を作る事でどうこう言われる事はまずないと認識しています(改造実機でライブしてた人間が言ってもアレですが)。まぁこの辺の話はまた別の機会に気が向いたらします。たまにこの辺で突っかかってくる人は、まぁいるんですがそういう人は別に権利者でも何でもないので皆さんは気にせずに創作活動に専念してほしい、僕は。
さて、とにかくBIG UP!としては「得体の知れない作曲ソフトで音楽を作っているので、もしこれが商用利用ダメなソフトや音源だったら審査を通したディストリビューターにも飛び火しそうだ」という事でわざわざ審査落としてきたわけでしょうし、実際の必要性は置いておいても書類を提出することで申請が通るようになったわけですから、むしろ誠実なんじゃないでしょうか。
しかしながら突っ込んできたのは恐らくこのサービスだけである事は言っておきます。既にLSDj使っててサブスク配信してる知り合いに聞いてみても許諾で突っ込まれた人はいませんでした。だって本当は突っ込む必要ないから。
そもそも自分がリリースの説明欄に「LSDjとDn-FamiTrackerで制作した~」て書いたから突っ込まれたので何も書かなかったら普通に通ってた気もします。でも「LSDjのみで作った」3rdアルバムまでが突っ込み無しで審査通って、2曲しかLSDjを使用していない4th、まして「1曲もLSDjを使っていない」5thアルバムがLSDjの許諾の事で審査落ちしたのは全然納得いってませんが。ここ本当に突っ込みたかったんですけど、向こうの機嫌を損ねて「3rd迄の許可もやっぱり取り消しますね」とか言われたら困るので特に聞きませんでした。実際どうなんだろ、審査してる人が違うとかあるのかもしれませんね。
後は一斉配信日を指定して登録したはずなのに指定日前にApple Musicの配信が始まっちゃってたりしましたが、BIG UP!側、Apple Music側どちらのミスか断定できないのとそこまで困る話でもないのでまぁいい事にします。
結論として改めて、BIG UP!はサービスとしてそこまで悪くないと思います。というか無料で配信させてくれるんだからこれくらいの事で文句言ってもしょうがないという気はしないでもない。無料でもう少しちゃんとしたサービスがあると言われればそこまでなんですけど。いいサービス受けたければ金払ってくださいという話なので……
BIG UP!の機能として無料プランでも再生数とか見れるようなので後は1年くらいやって再生数次第で採算取れそうなら有料サービスへの乗り換えを検討すればいいかなと思います。
ちょうどいいので配信されている実際のページを見てみます。
とりあえずApple Musicについてはですが、気になっていた「日本語タイトルと英語タイトルの混在」も勝手にカタカナにされたりする事なくそのまま配信出来ているようで安心しました。ただアーティスト名がアルファベットの場合頭が大文字で以降小文字にされてしまうのはもう仕様として諦めるしかなさそうです。後日再び確認したら小文字表記に修正されていました。
本当に元手0円でそこまでの苦労もなく(無くはないけど)配信出来てしまったので気になってる人はお試し感覚でもやってみるのはアリだと思いました。
他の配信先については指定日である24日以降に確認しようと思います。
配信成功、その結果
4/26追記
とりあえず先に審査が通った分の配信が始まったので見てみました。
アーティスト名も全て小文字表記になっていました!Apple Musicの方も再度確認したらいつのまにかきちんと小文字表記に修正されてました、ありがたいですね。そして他の配信サービスを見てもアーティスト名・曲名問題なく日本語英語混在で大文字小文字もそのままで配信が出来ていました。
英語での表示もきちんと登録した英題に切り替わって表示されているようです。前回あれだけ悩んだのが嘘のように簡単に登録出来て驚きです。
というわけで無事に無料で各ストリーミングでの配信に成功しました。よかったよかった。
今後ともよろしくお願いします!以上。
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