社会保険に入るべき人、また入るタイミング、そしてどのように社会保険料が決まるか
はじめに
スタートアップでも会社を設立(または法人化)してご自身が会社の社会保険(健康保険や厚生年金)に加入する、また初めて社員を雇う時に社会保険(健康保険や厚生年金)以外にも労働保険(労災保険や雇用保険)の加入が必要なタイミングが出てきます。
一般的に社会保険という言葉は大きく2つの意味で使われることがあります。
広い意味での使われ方:労災・雇用保険・健康保険・介護保険・厚生年金
狭い意味での使われ方:健康保険・介護保険・厚生年金
求人サイトとかで「社会保険完備」と書いてあるのは恐らく広い意味での使われ方かと思います。
今回は社会保険=狭い意味での使われ方(健康保険・介護保険・厚生年金)を定義として、かつ特定適用事業所ではない前提で進めていきます。
社会保険に入るタイミング
入社した時
まず一番基本となるのは入社した時です。
たまに雇入日が土日などで初出社日と異なる場合がありますが、こちらは雇入日が社会保険の加入日となります。
逆に前職を3/31に退職して4/1が休日なので雇入日を4/2としてしまうと1日空白期間ができてしまい、厳密には4/1は前職でも次の会社でも社会保険に加入していないため、ご自身で国保等に入る必要が出てしまうので前述のケースでは雇入日は4/1とすることをお勧めします。
では社員はともかくアルバイトの入社時はどうなるのか?
まず社会保険の加入基準は以下となります。
"1週の所定労働時間および1月の所定労働日数が常時雇用者の4分の3以上"
簡単に言うとその会社の社員とほぼ同じくらい働くなら社会保険に入りなさい。といった感じでしょうか。(ただし日雇いや2ヶ月以内の期間を定めて雇用する場合などは除く)
具体的にはその会社の社員の1日の所定労働時間が8時間で休日が土日祝の場合は週の所定労働時間が40時間なので、4分の3=週で30時間以上働くことが確定、また月の所定労働日数がおおよそ20日だと4分の3=16日になるので、アルバイトでも8時間シフトで週4日だと入社時から社会保険の加入が必要となります。
また逆に言うとこの基準を満たすと強制加入になるので、本人が入りたくないという希望は考慮されません。そのためアルバイトで入社して社会保険に入りたくない(扶養のままが良いなど)場合は上記の基準を下回る雇用契約かつ実態の労働時間も抑えなくはいけません。
また役員や非常勤役員の場合はどうなるか?
基本的には役員報酬が発生している+代表取締役の場合は強制加入。
またそれ以外は業務執行権の有無、役員会への参加有無、常用的使用関係の有無などを考慮して総合的判断になります。
労働契約変更時
次に多いケースとしては例えば週2日のアルバイトから社員になったなどが挙げられます。ただ同じアルバイトでも1日8時間のシフトが週2日から週5日になった場合でも基準の4分の3要件を満たすので、そちらも加入が必要となります。
ではアルバイトなどで契約内容の変更はなく、働いた時間が一時的に4分の3要件を満たした場合はどうなるのか?
例えば週2日で契約をしたが繁忙期に入り、その1ヶ月は週5日×8時間とかで働いた場合や入社時の契約内容では具体的な所定労働日数や時間を決めずに毎月事前にシフトを組む、またはシフト自己申告制の場合もあるかと思います。(要は入社の段階ではどのくらい働くかがわからない場合)
その場合は一般的にはおおよそ3ヶ月ほど実際の労働時間を見て、3ヶ月連続して4分の3要件を満たすようであれば加入とする方法が良いかと思います。
社会保険料はどう決まる?
社会保険料=標準報酬月額によって決定されます。
標準報酬月額とはおおよそ毎月支払われる給与を下記のレンジに当てはめて等級が決定します。※協会けんぽ(令和2年9月分〜東京都の場合)
引用:令和2年度保険料額表(全国健康保険協会 協会けんぽHPより)
また社会保険料については毎月上記のレンジに当てはめて変動するわけではなく大きく分けて3つのタイミングで決定します。
1. 入社時
2. 算定時
3. 月変時
入社時
入社で社会保険の手続きをする際に報酬月額を記載する箇所があります。
このアの箇所に含まれるものは以下となります。
・基本給(役員の場合は役員報酬)
・諸手当(固定残業手当、住宅手当、家族手当、役職手当、通勤手当など)
時給者の場合は、時給×月の想定労働時間+諸手当となります。
上記の300,000円の場合は等級のレンジに当てはめると健康保険料:29,610円(折半なので本人負担は14,805円)厚生年金保険料:54,900円(折半なので本人負担は27,450円)※40才未満で介護保険料がかからない前提
算定時
毎年7月頃に算定基礎届というものがあります。
簡単に言うと4月.5月.6月の3ヶ月の給与を平均して新しい社会保険料を決定します。
4月:320,000円 5月:300,000円 6月:340,000円 平均:320,000円
この平均を上記のレンジに当てはめて社会保険料が決定します。
なので4月から6月の給与が支払われる時期にたくさん残業をしてしまうと社会保険料が上がる可能性があります。
ここで決まった社会保険料がその年の9月から変更となります。
月変時
上記の入社時と算定時だけだと入社時は高い給与でその後すぐに給与が下がった場合などは次の算定まで低い給与で高い社会保険料が取られてしまいます。そうならないために月変(随時改定)というものがあります。
月変(随時改定)は2つの条件が当てはまると社会保険料が変更となります。
・固定的賃金の変更+変更して3ヶ月の平均が前より2等級以上の変更
例えば月給30万の方が10/1に40万に昇級した場合は10月-12月の3ヶ月を平均して上記のレンジに当てはめて1月から社会保険料が変更となります。
※他にも産前産後や育休明けなどもありますが今回は省略します。
さいごに
今回は社会保険に入るべき人、また入るタイミング、そしてどのように社会保険料が決まるかなどを書かせて頂きました。
IPOでも法令遵守の観点から「社会保険加入者の適正について」は最低限クリアしなくてはいけない項目かと思います。
また年金事務所の調査でも加入漏れなどがあれば遡って加入の手続きを求められるなどのリスクは生じます。
そのためアルバイトなどの方は毎月の労働時間をしっかり把握して適正なタイミングでの加入を怠らないように管理していきましょう。