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年次有給休暇についてのアレコレ

はじめに

2019年4月から年5日の年次有給休暇の取得義務が始まったことなどから労働者側や会社側も有給についてより意識をするケースが増えてきたように思います。
今回は改めて実務上において年次有給休暇にまつわる疑問点をまとめてみました。

有給の申請について申請期限を設けることは可能か?

会社によっては有給の申請は●●日前までに行わなければならない。といったルールにしている会社もあるかと思います。

ただこの●●日前というのは法律では定めがなく、あくまでも会社側が時季変更権を行使するか否か、また代わりのスタッフの手配などにかかる時間を考慮して合理的な期間であれば申請期限を設けることは可能です。

ただし法的な効力があるわけではないので、期限を過ぎている理由だけを持って却下するなどはNGです。また申請期限を3日前としているのに、実際は1日程度で判断や準備ができるような状態であれば合理的な期間とは言えないです。

また当日の申請にあたっては時間的に時季変更権の行使の判断が不可能であるという理由や実際には労働日が始まっており(労基法では午前0時から労働日)事後申請であるため当日の取得を認めないことについては妥当性があると考えます。

とは言っても労働者の事情などでやむを得ない場合も考えられます。
また有給の年5日取得の義務も始まったこともあり極力当日であっても柔軟に対応していくことも今後は必要になってくるかと思います。

有給申請時に理由を聞くことは問題ないのか?

原則はNG。そもそも有給の申請には理由は必要ありません。
申請書に理由欄をつけて任意とする程度であれば問題はないですが、理由がないからとか、理由の内容によって却下することはできません。

ただ例外として例えば同じ日に対して多くの従業員から有給の申請があり、その中の一部の従業員に対して時季変更権を行使せざるを得ない状況では有給休暇の利用目的などを考慮して判断することはOKとされているため理由を聞くことが認められるケースもあります。

退職時に有休消化を求められた場合、どのように対応すべきか?

よく退職時に有休消化をされる方もいらっしゃいますが、問題となるのは引き継ぎの問題です。
退職日が決まっている以上はそれを超えて時季変更権を行使することもできないため、そのまま有給取得となると、まともに引き継ぎができない状態となり残った従業員や会社側は非常に困ります。

そのため対策としては以下が考えられます。

1.退職日の調整を交渉する
2.有給の買取を行う
3.普段から有給を取りやすい状況にして残日数を減らしておく

有給の買取は違法では?と思う方もいらっしゃるかと思いますが、これは退職時については認められております。ただ会社側に買取義務があるわけはないので本人からの請求に全て応じる必要はなく、あくまでも会社側の任意の中で行うことになります。

買取をする場合の支給方法は法律で定められているわけではないですが、例えば月給者であれば日割りをして、それを日数分支給するといったお互い納得感のある計算式で支給することが一般的かと思います。(退職時の有給買取については退職所得となります)

半日申請の利用は可能か?

年次有給休暇は1日単位で取得することが原則ですが、労働者が希望した上で会社側が同意した場合は労使協定が締結されていない場合でも、1日単位取得の阻害とならない範囲で半日単位の有給を与えることが可能です。

ただし労働者が1日単位で申請をしているのに会社側が半日へ変更することはNGです。

年5日の有給取得義務の対策はどんなものがあるか?

具体的な対策としては個別管理や計画的付与などがありますが、そもそも有給を申請しづらい環境があるのが原因の1つと考えると、会社側としては有給奨励日を年間でいくつか設けるというのも1つの手かと思います。

あくまでも会社としてこの日はできる限り有給を使ってねと周知することで労働者側も有給申請のハードルが下がるメリットがあります。(ただ強制はできない)
飛び石連休や年末年始など会社の休日として設定してる日の前後などを会社の繁忙期を考慮しながら設定する方法が現実的かと思います。

産休に入る方が有給申請するのは可能か?

まず労働基準法における母性保護規定により、産後8週間は労働が禁止されているため、産後期間については有給は使えません。
ただ産前の期間については有給or無給はご本人が選択できます。

また産前に有給を使用した日については出産手当金は支給はされません。
出産手当金はおおよそ給与の2/3となります。そのため有給の残日数や有給の時効消滅の日を考慮して、あえて有給を使い給与の満額をもらう方を選択することも考えられます。

さいごに

今回はQ&A形式で実務上で考えられそうな点に絞って書かせて頂きました。
書いている中で思った事として普段から有給を取りやすい環境整備やそれに必要な各労働者への業務配分の調整や管理は基本的かつ当たり前ではありますが見直すべき重要な点だなと改めて感じました。

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