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給与の締め日と支払い日の決め方

この記事を読んでわかること
・給与の締め日と支払い日を決める時には何に考慮して決めるのが良いのか

はじめに

まず従業員を雇う前に決めなくてはいけないのが、給与の締め日と支払い日です。前に働いていた会社がそうだったからそれに合わせたなどでなんとなくで決めてしまうと中々あとから変更するのが難しい内容のため初期の設定段階で様々考慮をして決定することをお勧めします。
本記事はあくまでも労務目線を中心として、どのようなことに考慮すべきかを書いていきます。

賃金支払の五原則

労働基準法では賃金支払の五原則というものがあり、(1)通貨で(2)直接労働者に(3)全額を(4)毎月1回以上(5)一定の期日を定めて支払わなければならないと規定されています。

今回締め日と支払い日を定めるにあたってはとりあえず(5)一定の期日を意識する程度で良いかと思います。
具体的には給与支給日を●日と設定する必要があり、毎月第●週の●曜日など月によって日にちが変わるのはNGとなります。

また支払い日が土日祝などの場合は、その前の営業日に給与を振り込むことが一般的です。決して休日明けに振り込むことがNGではないですが月末払いで月末が休日だと翌月になってしまい、(4)毎月1回以上をクリアしていないことになるので注意が必要です。

何に考慮して決めるべきか

まず締め日と支払い日は企業によって様々あります。

・末締の翌月25日払い
・15日締の当月25日払い
・末締の翌月10日払い

上記の労働基準法の賃金支払の五原則を見てもわかるように、締め日と支払い日は比較的会社側が自由に決めることができます。
その中で具体的には以下について考慮して決めるのが良いかと思います。

1.キャッシュフロー
2.事務処理
3.従業員側目線

1.キャッシュフロー

人件費という比較的大きな金額で繰り越しができないものが毎月固定のタイミングで動くためキャッシュフローの中で最も資金が多くなる時期を算出して、その直後を給与の支払い日に設定するケースが考えられます。

2.事務処理

まず締め日が終わると給与計算上では前月の勤怠や経費を締めなくてはいけません。

例えば末締めの翌月5日払いに設定をすると、新しい月になったらまず前月の勤怠を締めます。ここで打刻漏れがあったり、休暇の申請を忘れてたなど様々従業員とのやりとりが発生する場合があります。

また給与と一緒に経費精算などをする場合も同様で申請漏れや内容の確認などを急ピッチで行う必要があります。さらに1日から5日の間に休日があれば確認が遅れる可能性もあり、作業や確認がかなり収縮されます。

やっと勤怠と経費が締まったら、今後は実際に給与計算の作業が始まります。勤怠を反映して残業や深夜の計算、入社や退社、給与変更者の確認や反映、交通費の計算、社会保険料などの変更や計算、扶養家族の確認など様々あります。

それらが終わり、やっと振込が完了といったスケジュールになります。
そのため短い期間ではミスも発生しやすい、また一時的負荷がかかりやすいという理由から締め日から支払い日までは2週間程度は離した方が良いかと思います。

また一般的に入社は1日付入社、退職は月末、昇級なども1日付などが多いかと思います。

例:15日締めの当月25日払い 

4/1入社の場合
・4/25支給:基本給を日割り(4/1-4/15分のみ)

4/1に時給が1,100円から1,200円になった場合
・4/25支給:時給1,100円(3/16-3/31分)+1,200円(4/1-/4/15分)

上記のようになり給与計算が煩雑になる恐れがあるため、締め日については月末締めをお勧めします。

3.従業員側目線

公共料金やクレジットカードなどの各種支払いの引き落としの日が月末に設定されているケースが多いため、給与の支払い日は月末よりも前に設定するケースも考えられます。

また入社して早く給料が貰えるということで社員は当月末締めの当月25日払いなどにするケースもありますが、これについては事務処理だけを考慮するとあまりお勧めはできません。

当月払いについて
末締めの当月25日払い(残業は末締めの翌月25日払い)の場合

4/1に入社した場合 
・4/25支給:基本給のみ
・5/25支給:基本給+4月の残業代など 

4/26に欠勤した場合 
・5/25支給:4月欠勤分を控除

4/1から基本給30万から40万へ昇級した場合 
・4/25支給:40万+3月の残業代
※ただし3月の残業代は30万で計算


また給与計算を仮に月の中旬くらいで完了した場合、その後で月末までに入社した人たちの給与は翌月に乗せて支給、また例えば4/25の給与を振込をした従業員が4/25から全く連絡がつかず会社にも来なくなってしまった場合は25日から30日分の賃金を本人から回収できないリスクなどもあります。

その他にも社会保険料の納付は翌月末と決まっております。
4/1入社の方は5月末が納付期限。また社会保険料は会社と本人が折半のため、その人にかかる保険料が10万なら半分の5万を本人の給与から控除します。

翌月25日払い
4/1入社の場合
・5/25支給:4月の基本給-4月分の社会保険料

当月25日払い(社会保険料は翌月徴収)
4/1入社の場合
・4/25支給:4月の基本給のみ
・5/25支給:5月の基本給-4月分の社会保険料

上記になるため当月払いでは初月で控除できていないため退職の最終月では2ヶ月分の社会保険料を本人から控除する形となります。

さいごに

上記で色々書きましたが、まとめると条件はこんな感じです。

・自社のキャッシュフローで最も資金が多くなる時期にする
・締め日と支払い日は2週間程度は離す
・なるべく締め日は末日の方が良く、支払いは翌月払いの方が良い
・従業員のことを考えると末日払いより少し早めが良い


条件を踏まえると個人的な結論としては末締の翌月15日〜25日払いあたりが無難ではないかなと思っています。
とはいっても一旦決めてしまうと簡単には変更できない(場合によっては不利益変更で同意が必要になる)ので諸々踏まえた上で決定されることをお勧めします。

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