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霧とリボン企画展|スクリプトリウムvol.3〜植物図譜

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オンライン開催|2021.9.16〜24 *9/19〜21休|「スクリプトリウム」とは修道院の写字室のこと。本展では、修道院の営みを彩る「植物|ハーブ」を題材に、13組のアーティ… もっと読む
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#絵画

スクリプトリウムvol.3|くるはらきみ|心地よく秘密めいた庭

Text高柳カヨ子  修道院と植物の関係は深い。  修道院自体が庭から始まったと言われるほど、植物とは切っても切れない関係が存在する。そこは祈りの場であると同時に、自給自足のための食料を生産する菜園や薬品を製造する薬草園でもあったのだ。修道士は優秀な庭師でもあり、注意深く植物の声を聞きながら脈々とその知識を伝えてきた。  そしてその修道院の庭には薬草やハーブだけでなく、美しい花々も見事に咲き揃っていたことだろう。  緑多き長野の地で創作を続けるくるはらきみの作品には、

スクリプトリウムvol.3|DAY 1

本記事は、オンライン開催の霧とリボン企画展《スクリプトリウムvol.3〜植物図譜》DAY 1の配信記録をまとめたものです 最新の配信情報は霧とリボン ツイッターでお届けしています Text霧とリボン  秋の訪れと共に、スクリプトリウムの新しい扉が健やかにひらきました。写字室の一角にひっそりと咲き誇っていたのは、アーティストたちが育てた多彩な植物群。いにしえから続く植物と人間の深い関係に思いを馳せながら、今ここに生きる伸びやかな強さを湛えて、私たちを迎えてくれました。  

スクリプトリウムvol.3|永井健一《1》|草は緑、空青し

Text高柳カヨ子  淡くにじむ水彩の色合い。  水気をたっぷりと含んだその色彩は、どこまでも静謐である。  永井健一が描く作品は、孤独と文学を愛する精神のしっとりとした静寂で満たされている。  ヴァージニア・ウルフの小説『オーランドー』は、その饒舌で情報量の多い語り口と多層的な内容から、様々な読み方ができる作品だ。  一般的には、主人公オーランドーが男性から女性に変化し300年以上に渡って生き続けるという、その外連味たっぷりの設定に注目されがちだが、この小説の面白さ

スクリプトリウムvol.3|金田アツ子《1》|修道院の薬草

Textヨネヤマヤヤコ  こじんまりとしたガラス張りの温室には煌々と月明かりが差し込んでいます。金田アツ子さまの温室のこちらの一角では、主に薬効を持つ植物と聖なる名前を持つ植物が育てられています。馨しき植物療法へと参りましょう。  蜂蜜色と菫色が鮮やかな三色菫。凛と顔をあげたアツ子さまが描かれる清冽な少女たちの佇まいを宿しているよう。  甘く濃厚な香りを辿ってみればハート型の葉の間から花のシャンデリア。菩提樹の花のお茶は悪夢を払い安眠を誘います。  アツ子様が映す

スクリプトリウムvol.3|金田アツ子《2》|聖なる名前の植物

Textヨネヤマヤヤコ  マドンナリリー。月あかりを受けて花弁はいっそう白く輝き、静謐な美しさをたたえています。 クレルヴォーの聖ベルナルドゥスは「マリアは謙譲のスミレ、純潔の百合、慈愛の薔薇」となぞらえました。  葉に白い斑模様があり、それが聖母マリアのミルクがこぼれたように見えることからマリアの名前が付けられたアザミ。幼子イエスに授乳する聖母の高潔な魂が宿っています。  ちいさな花たちの囁きを聞き逃すまいと繊細に描かれたアンジェリカ。守護天使ミカエルの記念日に咲

スクリプトリウムvol.3|DAY 3

本記事は、オンライン開催の霧とリボン企画展《スクリプトリウムvol.3〜植物図譜》DAY 3の配信記録です 最新の配信情報は霧とリボン ツイッターでお届けしています Text霧とリボン  降ったり止んだりの雨音が、菫色の写字室に響いた一日。お客様が訪れることでいっそう香り立つ植物園の風景——前半を締めくくるDAY 3の本日、可憐な植物が咲き誇ったスクリプトリウムへ、お越し下さいました皆様に御礼申し上げます。  開幕から三日間で、15本の記事を配信、作品とコラボ商品を約4

スクリプトリウムvol.3|永井健一《2》|詩作するオーランドー

Text霧とリボン  秋風がカーテンを揺らし、スクリプトリウムにひらかれた一冊の書物のページの上を過ぎりました。  月桂樹、楢の木、サンザシ、シダ——夏の追憶と共に、ページから、様々な植物の青々しい香りが漂ってきます。  ひとりの少年が詩作する風景を、ひとりの画家が描きました。  本ドローイング・シリーズの題材は、ヴァージニア・ウルフの小説『オーランドー』。  本展にてローンチする霧とリボンのポプリブランドとのコラボで発表する、オリジナルのトワル・ド・ジュイのため