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くるはらきみの画室

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自然の中で暮らしながら絵画や人形を制作するくるはらきみの小部屋。油彩を中心にちいさな祈りを込めた作品を発表します。
運営しているクリエイター

#江口理恵

RIE EGUCHI & くるはらきみ|文学者の音楽室《3》|物語と音楽にみる舞踏会幻想

 『シンデレラ』などのおとぎ話や『ボヴァリー夫人』『谷間の百合』などのフランス小説で出会いの場の象徴として、あるいはエドガー・アラン・ポーの『赤い死の舞踏会』のようにシュールすぎる時代を映す場として描かれてきた「舞踏会」。  今の日本ではなかなか参加する機会がないけれど、海外では今も毎年色々な所で開催され、日本からも参加できるイベント的なものもあるらしい…。  今回、Mauve街で開催中のオンライン「舞踏会」もそのひとつ。しばし、文学や音楽で描かれた舞踏会を空想し、幻想の舞踏

くるはらきみ個展《ヒルデガルト点描》|緑煌めくヒルデガルトの春

 緑豊かなラインラントの貴族の家に生まれたヒルデガルトは、8歳で修道院に預けられた。本共同企画展のメインヴィジュアル「少女ヒルデガルト~小さな羽の旅立ち」でくるはらきみが切り取ったのは、幼いながらも将来への一歩を踏み出す決意に満ちた少女の得も言われぬ表情だった。  ヒルデガルトが成長して立派な修道女となり、ドイツの厳しい冬を乗り越え、植物園での植物たちとの感動の場面を描いた「春の再会」。たおやかな立ち姿の彼女が手を差し伸べる相手は、明るい緑色のフェンネルの精。ヒルデガルトは