【脚本】後編 あなたの足跡

登場人物
大村 陸     (21) 大学生
山本 みやび(22) 大村の同級生
光木 礼司    (21) 大村の同級生
志方 裕  (22) 大村の同級生

13. 大学・教室
   光木の隣に座る大村。
大村「俺、諦めたよ。ごめんな、調子乗りす
 ぎてた」
光木「本当だよ」
   笑い出す二人。
志方の声「お前が光木か?」
   振り返る大村と光木。目の前に志方が
   不機嫌な表情で立っている。
志方「お前、何やってくれているんだよ」
光木「何がですか?」
志方「とぼけんじゃねえよ」
   みやびが走って志方の元に駆け寄る。
みやび「裕、こんなところでやめてよ。私は、
 大丈夫だから」
志方「こういう変態野郎はガツンと言っておかないと
 ダメなんだ」
光木「僕は、全く見に覚えはありません」
   困惑した光木。志方は、怒りのあまり
   机をバンと叩く。
志方「じゃあこれはなんだよ」
   そこには、大量の光木からの着信履歴
   顔が硬直していく光木。
志方「みやびにストーカーしてんじゃねえよ」
   立ち上がる光木。何も言わず泣き出し
   そうな顔で逃げるように教室を飛び出し
   ていく。口をぽかんと開け、その姿を
   見つめる大村。
志方「マジきっも」
   大村のよこを通り過ぎる志方。申し訳な
   さそうな表情でみやびが駆け寄る。
みやび「なんか…ごめんね」
大村「いや…俺はいいんだけど」
   大村は、無意識にポケットに手を入れる。
   次第に覚悟を決めた表情に変わる。



14. 大学・入り口(夕)
   大村が周辺を挙動不審に歩いている。
   みやびが出てくる。
みやび「陸くん。どうしたの?」
大村「なんか今日は、ごめん」
みやび「あれは、陸くんは、関係ないから謝ら
 なくていいのに」
   大村の顔が次第に汗まみれになる。沈黙
   する二人
大村「ごめん。ごめん。俺、あなたのこと好き
 になってしまいました。本当にごめんなさい」
   沈黙が流れる。
みやび「急にどうしたの?」
大村「いや…その…なんか光木見てたら、ここで
 ちゃんとけじめをつけないとって。迷惑かけ
 たくないし」
みやび「あの…」
   大村の正面のビル影に光木の姿を見つける。
志方の声「お!待った?」
   志方が駆け寄る。
大村「邪魔したね。じゃあお幸せに」
みやび「ちょっと?」
   大村は、手を振りながら、去っていく。
   大村は、早足で光木のもとに向かう。
志方「どうしたの?」
みやび「いや…なんでもないよ。うん」
   みやびが少し笑みを浮かべている。
志方「じゃあ一緒帰るか」
   二人は、ゆっくり歩き出す。

15. 路地
   光木の元に走る大村。露地に入った瞬
   間、光木と大村がぶつかる。大村は、
   苦しみの表情を浮かべm、立ち尽くす。
   目の前には、青ざめた表情の光木の姿。
光木「ごごごめん、俺どうかしていたんだ。す
 まない」
   大村は、腹に目線を向ける。そこには、
   真っ赤に染まった服。
大村「お、お前、何やっているんだよ」
   大村は、倒れ込む。光木は、恐怖で一人
   走って逃げていく。

16. 歩道
   二人で並んで歩くみやびと志方の姿。

17. 路地
   その姿をじっと見つめる大村。
   薄れゆく意識の中、ポケットからハンカチを
   取り出す。ハンカチは、鮮血で赤くなっていく。
   ハンカチを見て次第に笑みがこぼれる。みやびと
   志方とみやびは、大村に気づかず、次第に遠くに
   離れていく。二人の姿を見ながら、ゆっくり
   目を閉じる。周囲の人間が大村の姿を見つけ、
   悲鳴を上げる。
大村(M)「あなたの人生の一部に僕は加わることが
 できましたか?」
   大村のスマホ画面が光る。そこには、みやびからの
   メッセージが届いている。

(了)

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