【声劇台本】067「スノームーン・フレンド」
昨日が、スノームーンと言われる満月だったということで。
それをお題にして1作品書いてみました。
「スノームーン・フレンド」
《人物》
深沢陽子(17)高校2年生。
紺野明(17)高校2年生。
《本編》
陽子のMO「満月に手が届きそうな夜は、あなたを思う」
陽子「もしもし」
紺野「はい。もしもし」
陽子「深沢です」
紺野「紺野です」
陽子「こんばんは」
紺野「こんばんは」
陽子のMO「私たちの通話の導入はいつもどこかよそよそしい」
陽子「お元気ですか?」
紺野「元気です。深沢さんは?」
陽子「私も元気です。紺野君。最近はどうですか?」
紺野「うん。それなりかな。深沢さんは?」
陽子「私はちょっと大変でした……」
紺野「どうかした?」
陽子「大丈夫。なんか紺野君の声聴いたら、忘れちゃった」
紺野「そっか。大丈夫なら、よかった」
陽子のMO「紺野君が転校してしまう最後の日、思い切って連絡先を聞いてよかった。あれからもうすぐ1年になる。私たちはひと月に1回、満月の夜だけ電話でお互いの近況を報告しあうようになっていた」
紺野「知ってる? 2月の満月って、スノームーンっって言うらしいよ」
陽子「スノームーン?」
紺野「一年で一番白く透明に輝いて見えるらしい」
陽子「知らなかった」
紺野「見えるよ。窓の外」
陽子「いまみてみてるね。あ。ホントだ。白い満月、見えた」
紺野「俺も、いま見てる」
陽子「なんか、変な感じだね」
紺野「なにが?」
陽子「遠く、別の場所にいるのに、同じものを見てる感じ」
紺野「確かに」
陽子のMO「私たちに優しい沈黙が流れた」
陽子「あの、さ」
紺野「うん」
陽子「もうすぐ春休みだね」
紺野「だね」
陽子「また、来月も、話せるかな?」
紺野「うん。また来月も話そう」
陽子のMO「会いたい。本当はすごく会いたい。でも、そんなこと絶対に言えない。だけど、この気持ちはきっと届いてる。きっとあなたも同じ気持ちでいてくれている。満月だけが私たちをつないでいた」
(おわり)
今後の執筆と制作の糧にしてまいりたいと思います。