Xのようなタイムラインをもつ、新たな音声SNSが欧米で話題に――「Airchat」とは何か

2024.5/03 TBSラジオ『Session』OA

Screenless Media Lab.は、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、欧米のテック界隈などで注目を浴びている新たな音声SNSについてご紹介します。

◾コロナ禍で流行った「「Clubhouse」

みなさんは、音声SNSの「Clubhouse」を覚えているでしょうか?2020年4月にアメリカでβ版が限定公開されると、アメリカのベンチャーキャピタルの間で話題となり、その後2021年の1月には、コロナ禍の日本でも非常に有名になったことは、記憶に新しいのではないでしょうか。実際、当ラボでもClubhouseについては何度も言及しました。

初期は招待制だったClubhouseは、Xなどでも招待状を必要とするユーザーの投稿が相次いだり、また芸能人もClubhouseを通じて声を届けるなど、一時的なブームとなりました。とはいえ、その後ブームは過ぎ去り、現在もClubhouseは運営されていますが、一時の勢いは失っています。

◾Xのようなタイムラインのある音声SNS「Airchat」

そんな中、アメリカでは新たな音声SNSが密かに注目されています。それは2024年4月中旬に、すでに公開されていたものを大きく刷新して登場した「Airchat」という名の音声SNSで、iOSとアンドロイドでアプリが使用可能です。

このAirchatについて簡単に説明すれば、「Xのタイムラインに音声が組み合わされたもの」と言えるでしょう。ただし、テキストを入力することはできず、基本的にすべて音声が利用されます。

まず、ユーザーは電話番号等で登録を終えると、アプリのはおすすめのタイムライン(フィード)が現れます。そこにはユーザーが投稿した文章が掲載されています。しかし、この文章はユーザーがタイプしたものではなく、ユーザーが声で発した音声の書き起こしになります。すなわち、ユーザーの投稿はすべて音声で行われており、アプリが自動的に音声を書き起こすので、一見するとテキストが投稿されているように見えるのです。

したがって、すべては音声で投稿されており、タイムラインをスクロールすると、投稿された音声が自動的に流れるようになっています(音声は途中で止めることも可能であるほか、原稿執筆時点では、音声の速度も1~3倍まで設定可能です)。

つまりAirchatは、Xのような文章がタイムライン上に掲載されるのですが、実際はすべて音声で行われており、文章はすべて投稿者の声で、そのユーザーの息遣いを含めて聞くことができるのです。その他、タイムラインやリプライ等の概念は、概ねXの仕様と似ています(ただし、これは2024年5月現在のものであり、リリースされたばかりということから、今後は仕様が頻繁に変わることが予想されます)。

また、特定の話題やユーザーと音声チャットルームのような機能もあります。こちらもClubhouseとは異なり、文章が書き起こされるLINEグループ投稿のようなものとなります。リリース当初は招待制だったAirchatですが、現在は招待制が廃止されており、誰でも登録すれば利用可能です。

現状は日本のユーザーはまだ少なく、Clubhouseと同様に、欧米のテック関係者やベンチャーキャピタル界隈の人たちの間で人気になっています。

◾Airchatは日本で流行るか

Clubhouseは音声が文章化されず、常に言葉が文章として残らないという点が、良くも悪くも特徴でした。一方のAirchatは、自分の声がログとして残るため、その人の特徴だったり、あるいは誹謗中傷等の投稿が一定程度制限されるものと思われます。ただし、現状ではコンテンツモデレーション(投稿監視)がないとの報道もあり、SNSから生じる様々な問題に対応するためのルール作りが必要とされるでしょう。

また、こうしたサービスが日本で(一時的であれ)流行るかは、やや疑わしいと思われます。というのも、良くも悪くも日本のインターネットの特徴は、「2ちゃんねる」時代から続く「匿名文化」があるからです。匿名であれ、人間の声がウェブ上に残るのであれば、多くの匿名ユーザーは発信を躊躇うように思われます。

無論、声を加工して発信することも可能ですが、そこまでしてこのアプリを使うことも考えづらいでしょう。ただし、特定のキャラクターの声などに加工し、キャラの声で投稿するなど、いわゆる「ネタ的利用」は考えられるかもしれませんが、いずれにせよ、明確なルール運用が求められるでしょう。

Airchatが流行るかどうかは別にしても、新たなサービスには可能性と課題がつきものです。気になった方はチェックしてみてはいかがでしょうか。

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