声を利用した注目のSNSーー「Clubhouse」を考える

放送の様子はこちら(下記サイトでは音声配信も行っています)。
「声を利用した注目のSNS~「Clubhouse」を考える」
(Screenless Media Lab.ウィークリー・リポート)
2020.5/29 TBSラジオ『Session-22』OA

Screenless Media Lab.は、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、正式公開前から話題となっている音声SNSについて紹介します。

◾音声SNS「Clubhouse(クラブハウス)」

「Clubhouse(クラブハウス)」は音声版Twitterとも呼ばれるもので、4月にアメリカでベータ版が限定公開されると、アメリカのベンチャーキャピタルの間で話題となりました。現在はアプリへ申請して招待状を受け取る必要があり、招待されたユーザーは未だ数千〜多くても数万といわれており、参加人数は決して多くありません。ですが、正式公開前のアプリにも関わらず、異例の人気となっています(評価額は1億ドルとの報道もあります)。

Clubhouseの利用方法ですが、まずアカウント所有者が部屋をつくり、そこに友達を招待して会話を楽しんだり、あるいは手を上げて他人の部屋に参加することができます。部屋の中では音声だけで会話がやりとりされるのですが、自分から発言したり、他人の発信を聴くだけでもよく、パーティー会場にいるような感覚を味わうことができるというものです。また音声は残されず、その時しか聴くことはできないため、強い同期性を獲得しています。

それぞれの部屋の使い方も様々で、大勢の人を集めていても話し手は少数のカンファレンス形式のものもあれば、少人数で話すだけの場をつくることもできます。いずれにせよ、自由でありながら、Twitterのハッシュタグとも異なるコミュニティ形成の一面が見受けられます。

音声を利用したSNSはこれまでもありましたが、Clubhouseが注目された理由として、その場の一体感を生み出す同期性を獲得したとの声もあります。また音声で双方向的なやりとりが可能になるので、Twitterのように文章を読むのが面倒だったり、服装や場所といったプライバシーに配慮が必要な動画コミュニケーションとも異なるものとして注目されています。

◾Clubhouseの可能性と課題

Clubhouseは現在招待制であり、今後は招待制を廃して拡大すると予想されますが、そうなると思いもよらないトラブルが生まれることも想定できます。例えばすでに、招待されている人々に人種や性別の偏りがあることが指摘されており、改善が必要との声もあります。

また、海外でよく聞かれるFOMO(Fear Of Missing Out:取り残されることへの恐れ)の問題もあります。その場のコミュニケーションが重視されるので、寝ても覚めても、新しい情報から取り残されていないかといった恐れから、心理的な依存を生んでしまわないかが問われます。特にティーンエイジャー層にアプリが普及すると、問題が拡大されるようにも思われます。

このように課題もある音声SNSですが、昨今のオンライン動画会議やTwitterなどの文字情報に疲弊が生じる中で、音声SNSが開放感や楽しみをもたらしているのも事実でしょう。Clubhouseに関わらず、音声を介したコミュニケーションには、今後も大きな注目が集まるでしょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?