「Clubhouseの流行」を考えるーー隙間時間に生まれるコミュニケーション

Screenless Media Lab.ウィークリー・リポート
2021.1/29 TBSラジオ『Session』OA



Screenless Media Lab.は、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、この数日で急速に日本でも話題となった音声SNS「Clubhouse」について紹介します。

◾Clubhouseとは何か


音声版Twitterとも呼ばれる「Clubhouse」ですが、この数日で日本でもTwitterを中心に話題となっています。このClubhouse、当ラボでも2020年5月に紹介しています。

Clubhouseは米Alpha Explorationが2020年3月にサンフランシスコで立ち上げたソーシャルサービスです。現地時間の1月24日に新たな資金調達がなされ、その資金がクリエイター助成プログラム(クリエイターの収入源等)にも利用されることもあり、日本でもITスタートアップ系の人々を中心に、一気に話題となりました。

Clubhouseは好きな時に「room」という音声だけで会話する部屋をつくり、自由に話します。そこに友人が訪ねてきたり、オーディエンスとして参加していたユーザーが話し手になることもできるなど、その場で、「参加できるポッドキャスト」の配信が可能になります。一方で音声は記録に残ることがないため、気軽に、自由に話すことが可能です。

Clubhouseは現在のところ招待制を取っており、連絡帳に登録している、つまり電話番号を知っている人にのみ招待が可能です(二人までです)。また現在はiphoneアプリでのみ利用可能であり、基本的に英語版だけです。

もともとコロナ禍において、zoom等のオンラインツールが注目されました。その後ビデオチャットとして、「Houseparty」等のツールもIT界隈では注目を浴びています。音声チャットでは「discord」も人気で、オンラインゲームでのコミュニケーションに使われる他、Clubhouseと同様の使い方がされることもあります。


◾隙間時間を埋めるコミュニケーションの快楽

Clubhouseの魅力は、コロナ禍で失われた「隙間」時間を創出する点にあります。zoom等のオンラインツールの欠点として、「雑談」の喪失が挙げられます(加えて言えば、画面疲れも挙げられます)。

Clubhouseは自宅の休憩時間や料理中といった何気ない時間に、誰かの部屋=会話空間にお邪魔して話を聴いたり、そのうちに声をかけられて自分も話すことができるなど、ゆるく、それでいて能動的な「コミュニケーション」を楽しむことが可能です。それは立食パーティーで歩き回りながら人の話を聴いているうちに、その話の輪に入って楽しむ、といったものでしょう。

あるいは、競合他社のビジネスマン同士のセッションが生まれ、その場で新たなアイディアが生じるといった、セレンディピティ(偶然のひらめき)が生まれるのでは、といった点も注目されています。

こうした音声SNSはClubhouseの他にも生まれており、前述のdiscordの他、TwitterもClubhouseと同様の形式の「Audio Spaces」という音声ベースのサービスのテストを開始しています。このように、音声SNSは戦国時代へと突入していると言えるでしょう。

◾差別やいじめの温床になる可能性

一方で、Clubhouseには問題も指摘されています。第一に、ログが残らないが故の気軽なトークが公序良俗に反したり、差別的な議論が横行してしまう点、つまり過激な言葉の温床となり得るという問題です。また、セミナー形式による悪質な詐欺も懸念されます。

Clubhouseは基本的に実名登録であり、招待した人がわかる仕組み等、人とのつながりが重視されることが、こうした問題の抑制になるという声もあります。とはいえ、興味関心が集中すれば、当然差別を肯定するグループが現れることも想定されます。いずれにせよ、ユーザーが増加する中で、そのような抑制が有効であるかどうかが判明するでしょう。

また、以前も紹介したように、FOMO(Fear Of Missing Out:取り残されることへの恐れ)の問題が懸念されます。仲間内のトークを逃さないよう若者がLINEに集中することと同様の問題です。加えて、音声トークはログが残らないが故に、いじめを誘発する会話がされるといったリスクも考えられます。さらに言えば、単に音声SNSが楽しすぎて時間を消費しすぎる、といった問題も指摘できます。

新たなSNSの登場に、大きく取り上げられているClubhouse。招待制ということで現在では利用できるユーザーは限られますが、可能性と課題を、今のうちに検討することが重要です。

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