Clubhouseにみる音声SNSの将来ーー「文字から声へと変化するSNS」

Screenless Media Lab.は、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、前回もお伝えした音声SNS「Clubhouse」を中心に、音声SNSの可能性と課題についてお伝えします。


◾文字から声へーー変化するSNS

引き続き盛り上がりをみせる音声SNS「Clubhouse」。多くの人が利用するに従って、問題も見えてきたように思われます。

まず基本事項を確認します。Clubhouseは音声を利用した(現在のところ)招待制のSNSであり、トークルームを開いて気軽に会話ができるサービスです。注目度の高まりの背景は前回お伝えしましたが、SNS全体で言えば、文字中心のSNS(TwitterやFacebook)から、画像をメインとしたInstagram、そして音声SNSへと、文字から声とツールが変化していると指摘できるでしょう。


声は感情がダイレクトに伝わるなど、コミュニケーションがもたらす喜びを感じることができるため、音声市場は今後より注目されると考えられますが、前回もお伝えしたように、Twitterも同様のサービス「Spaces(スペース)」の試験運用を開始しています。

こちらは音声チャットだけでなく、リアクション用の絵文字やツイートの共有が可能なので、聴衆の反応が絵文字でわかったり、話題のきっかけにTwitterの投稿を全員で確認することができます。こうした機能が今後どのような影響をもたらすか、注目です。

◾将来は招待制を撤廃?

Clubhouseは招待制ですが、CEOのポール・デイビソン氏はCNBCの番組で、Clubhouseをすべての人々にオープンにするための取り組みをしていると述べています。これは、将来的に招待枠を廃止し、大量のユーザーを受け入れることを目標としていると思われるとともに、招待制のうちに問題点を発見・修正していると考えられます。

Clubhouseは今後、クリエイターの収入を目的とした計画があることを明かしています。具体的にはサブスクリプション、チケット、投げ銭(チップ)を通してClubhouse上で収入を得られるようにする考えがあります。

特別な番組をClubhouse上で配信するチケット、特定のクリエイターの配信を定額料金化するサブスクリプション。そして、トークに価値があると判断した場合に、ユーザーから金銭を支払える投げ銭。投げ銭はYouTubeをはじめとして様々なプラットフォームで行われていますが、ひとりのユーザーがその場のお祭り的な雰囲気で多額の金銭を支払ってしまうことなどが問題となっており、きめ細かな対策が必要であると考えられます。

◾Clubhouseの課題

一方、Clubhouseにはいくつか確認しておくべき論点があります。

Clubhouseにはコミュニティ・ガイドラインや利用規約があります(英語)。そこには、利用は18歳以上であることや、トークの録音やメモも禁止するといったルールが提示されています(もちろん、「公開取材」など、事前に内容を伝えることが示されている場合は、この限りではありません)。

もちろんいじめや差別発言も禁止されており、違反した場合にユーザーが通報することができます。その際には、一時的に会話が録音され、運営による審査が行われるとされています。こうした仕組みは重要ですが、一方でどの程度このルールが守られるか、音声は文章に比べて確認が困難であり、運営の姿勢が問われます。

次に、招待に必要な電話番号です。電話番号はあまり変わることがないが故に、重要な個人情報です。Twitterなどで招待を求める投稿、あるいは招待してあげるという投稿がありますが、個人情報を知らない第三者に伝えることには注意が必要です。また、招待に伴い電話番号だけでなく、ユーザー登録によって、自身の名前も相手にわかってしまいます。

メルカリでも招待枠が取引されていますが、サービスや権利などの販売は規約違反であり、メルカリ側で削除されています。こうした取引は行わないでください。また海外でも、eBay等のオークションサイトで同様の取引が行われています。

またサービスからの退会手続きが難しく、現時点では運営に英語でメールを送る必要があるなど、問題点も指摘されています。

こうした課題をどのように克服するか。またTwitterなど、続々と参加が予想される音声SNSについて、当ラボでは今後も定点的な観測と分析を行いたいと思います。

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