見出し画像

人事トラブル相談所⑤「有給休暇の取得順序って会社で勝手に決めていいんだよね?!~労働基準法の隙間~」

 「働き方改革」って何でしょうね?
コロナでリモートワークが増え、密を避けるために余計な接待、夜遊び、浪費が減り、結果的に早く帰宅できる。これも立派な「働き方改革」なのではないかと思う最近です。
(早く帰宅すると妻にイヤな顔をされるという人にはキツイかもですが)

労働基準法の歴史と今

「働き方改革」というワードが出る中、世の中ではリモートワーク、副業、フリーランスなどなど各人の勤務形態や時間の使い方も劇的に変化しているにもかかわらず、色々改訂の経緯はあるにせよ労働基準法だけは、どうも時代に取り残されているように感じてしまいますね。

 制定当初は週48時間労働が認められていたなど歴史はありますが・・・
時間外労働の抑制などはかえって企業のクビを締めるようにしか思えません。特にコロナ対応で朝5時まで勤務している厚生労働省のお役人様はそもそも36協定違反にならないのでしょうか・・・疑。

有給休暇

 働いたことがある人には馴染みが深く、労働基準法にも規定されている「有給休暇」ですが「義務を果たさずに権利ばかりを主張する人が多い」という経営者の呟きネタでだいたい上位に上がるものです。

そのネタとされる有給休暇もネット検索すれば「入社後6ヶ月で取れる」「アルバイトでも権利がある」などGoogleさまさまで経営者や人事の方々も、よく噛みつかれているのではないでしょうか。

労働基準法の隙間

 その有給休暇ですが、労働基準法には規定されていないものがあります。
ある程度勤務年数があり、複数回付与をされている人にかかわるもの。

それは・・・

「有給休暇の取得順序」

法定通りに考えると、入社して6ヶ月経過後「10日」付与され、そこから1年後(=入社後1年6ヶ月後)「11日」が付与されます。
そして、それぞれの有給休暇は付与から2年間権利があり、複数回付与がある場合は古いものと新しいものが重複する期間が生じます。(下記参照)

画像1

有給休暇の取得順序

ここまで色々決めておいて・・・
この取得順序には、規定がないという前代未聞の放置プレー(労働基準法の隙間)があるわけです。

世間ではなんとなく・・・
「古いものから取得するでしょ、普通」みたいな空気があるのですが・・・

規定がないってことは、会社が決めちゃってもいいんですよ、はい。
だって、就業規則って会社が定めるものですからね( ゚Д゚)


自分がコンサルティングをする時、必ず就業規則の作成時に「有給休暇繰越分の扱いってどうされますか?」と役員や人事の方に確認をいれます。

「新しい方から取得にしちゃいますか?」というと「え、そこまで厳しくしちゃっていいの!?」なんて事も言われますが・・・

画像2

個人的には「はい、もちろんです」の答え一択ですね。
(といいつつ、会社の意向に沿って最終的には決めますが)

一応根拠として堅っくるしいものを引用すると・・・

民法488条(同種の給付を目的とする数個の債務がある場合の充当)

債務者(=会社)が同一の債権者(=労働者)に対して同種の給付を目的とする数個の債務(有給休暇付与)を負担する場合において、弁済として提供した給付が全ての債務を消滅させるのに足りないときは、弁済をする者は、給付の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる。

ちょっと、何言ってるかわからないので・・・
ドラえもんから「翻訳こんにゃく」を借りて要約するとこんな感じです。

付与した有給休暇の一部を労働者が取得する場合「繰越されたもの」と「新たに付与したもの」のどちらを優先するかは会社が定めることができる。

というわけで、就業規則などに明文化しておけば、取得順序は会社が決めても良いということです。

有給取得の義務化なども増え労働者の権利が強くなりすぎてる今だからこそ、きちんと考え直す部分があるのではないでしょうか。

記事内容が少しでも有益だったと感じていただけた場合にサポートいただけますと幸いです!また新たな記事作成に向けた仕込みをしていけるように頑張ります!