見出し画像

JFAが始めた女性リーダーシッププログラム。女性に特化することの必要性と気をつけること。

★★★★★★★★★★
S.C.P. Japanのウェブサイト・SNSです。

★★★★★★★★★★

音声バージョンはこちらから

こんにちは。いつもコラムをご覧いただきありがとうございます。

今週はWEリーグの話題を書きたいと思います。今日から「JFA女性リーダーシッププログラム」が開催されています。開催概要はこんな感じです。

目的:サッカー界、スポーツ界をけん引する女性役員/経営人材を養成する
主催:日本サッカー協会、日本女子プロサッカーリーグ
受講資格:次の事項のいずれかを満たし、今後、組織での経営人材を志す女性
(1)9地域/4都道府県サッカー協会において、副会長以上の役職に就く者
(2)WEリーグ参入予定クラブの経営人材候補者
(3)その他、サッカーおよびスポーツ関連団体における経営人材候補者
内容:
「ジェンダーと自己理解」「マインド改革」「経営リテラシーの獲得」を柱とし、研修や課題、オンライン講座等でプログラムを実施する
Module1 2020年10月31日(土)~11月1日(日)
Module2 2020年11月28日(土)~11月29日(日)
Module3 2021年1月30日(土)~1月31日(日)
Module4 2021年2月20日(土)~2月21日(日)
場所:高円宮記念JFA夢フィールド
JFAホームページより抜粋:https://www.jfa.jp/news/00025566/

WEリーグの3つのビジョンの中に「世界一アクティブな女性コミュニティー」が含まれており、『クラブスタッフの50%を女性にすること』、『クラブ役員に最低1名は女性を入れること』を参画クラブには義務付けているので、当然ながら「女性」を育てる必要がある。ということは間違えないと思うのですが、このように敢えて「女性」に特化する研修を設けることは良くあることです。

「女性」に特化した研修

日本でもビジネス界では女性に特化した研修というのは多いですが、日本のスポーツ界はあまりこのようなアプローチは少ないです。いくつか紹介します。

順天堂大学女性スポーツ研究センターが「女性コーチアカデミー」を2015年から実施しています。

また、日本スポーツ振興センターも2019年に女性トップコーチセミナーを実施しています。

2020年から、日本体育大学も女性エリートコーチ育成プログラムを展開しています。

日本はあまり事例は多くないのですが、海外では女性に特化した研修はたくさんあります。全米大学体育局(NCAA)も女性リーダーシップシンポジウムや女性コーチ研修を実施しています。

FIFAもUEFAも女性リーダーシップ開発プログラムを実施しています。

あげだしたらキリがないのでこれくらいにしておきます。

なぜ女性に特化する研修が効果的なのか?

数年前に私がスポーツの行政組織で働いていた時には、「なぜ女性に特化した研修を設ける必要があるのかわからない」、「通常の研修に女性が入ればいいではないか。私たちは差別していない」という声を様々な方面から良く耳にしました。

高ーい高ーい壁を感じました。

女性に特化した研修を実施する必要性、、、そもそもスポーツ界というのは男性を中心にできてきた歴史がありこれは事実です。今は女性アスリートも活躍していますし、スポーツ界で働く女性も増えていますし、女性の指導者も増えています。ですが、やはり伝統的に男性が作ってきた社会の中で出来上がったネットワークに女性が入っていくのは難しさが残ります。また、男性視点だけでは気付かないところで女性が抱えている困難は沢山あるのです。

特にスポーツ界は出来上がったネットワークの中で人事が動くことが多いです。人は同質性の高い人たちと一緒にいることを好むため(ホモソーシャル)何かチャンスがあると、同質性の高い人にチャンスがいきやすい傾向があります。男性ネットワークが強いスポーツ界では男性の方が知らず知らずのうちにチャンスをもらいやすい傾向にあるということは様々な研究でも明らかになっています。教育機会があったとしても女性はチャンスを得られずらいということが度々起きてしまいます。また、男性ばかりのネットワークの中で頑張る自信が持てずにチャンスがあったとしても女性は遠慮しがちになります。

さらに、まだまだ男性中心(地域ではより顕著ですが、、、)のスポーツ界の中で女性は孤独を感じながら頑張っていることが多いです。良い、悪いは男性の行動が判断基準になってしまうことが無意識のうちにあります。男性のようにできない自分自身を攻めてしまう女性も多いです。

女性向けの研修は、女性が学べる機会であることをあえて発信し、女性が優先して知識やスキルを獲得できる状況が作れます。そしてそれぞれの場所で奮闘する女性たちが集まり悩みを共有し、励まし合いながら連帯することで、「力を合わせて頑張っていこう」、「現状を変えていこう」というネットワークができるのです。

女性に特化したプログラムで気をつけなければならないことは?

しかしながら、女性だけに特化した研修を設けることの懸念点も当然あります。

よく言われていることは、女性だけが変わっても社会の仕組みや構造、規範が変わらなければ、知識やスキルを身につけた女性が出る杭となり余計に状況が難しくなることがある。という点です。

女性を特別視することで「女性は特別視しなければならない社会的に力の弱い立場である」ことを再生産してしまうこともあると言われています。

またよく人権関連のムーブメントで見られることですが、ある特定のグループに属する者たちが連帯し力を持つと、これまで支配的であったグループから大きな反発をもらう可能性が高くなります。もともと社会的に優遇されていたグループの人たちが自分たちの権利や立場が脅かされることを恐怖に思いバックラッシュになります。

さらに、女性に特化することで「男」か「女」のジェンダー二元論が強調されてしまいます。昨今の議論では自認する性は「男」か「女」のどちらかに限定できるものではなく、日によって、場所によって自認する性を柔軟に変える人もいますし、定めたくないという人もいます。そういったXジェンダーやノンバイナリーの方々、さらにはトランスジェンダー女性の存在は「女性」に特化した研修では見落とされがちです。

バランスが必要

ある特定のカテゴリーを作ってそのグループに特化することは、そのグループの問題を可視化させ、通常ではなかなかサポートの手が届かない人々にサポートを届けることができます。機会が平等ではないから、平等になるようにサポートをするのが「公平(Equity)」のアプローチです。

一方で、人々をある特定のグループにまとめることは、個々人の多様性が見えづらくなり、特定の特徴を持つグループとして一般化され、グループごとの分断が顕著になり、特定のグループの立場の弱さが再生産されてしまうために、カテゴリーに分けること自体をやめましょう。というのが「平等(Equality)」のアプローチです。しかしながら、平等アプローチでは解決されていない課題が埋もれてしまうという問題点もあります。

ここから有料記事となりますが、最後のまとめの数行のみを有料部分としています。内容自体は無料部分で全てカバーされています。本記事を読んで、「新しい視点を得られた」、「S.C.P. Japanの活動を少し応援したい」と思っていただけたら、有料記事を購入いただけますと幸いです。よろしくお願いします。

ここから先は

283字

¥ 200