「なぜ」「どうして」が話をこじらせる―理由を聞いただけなのに怒りだす子ども―
「どうしてそんなに時間にルーズなの?」
「なぜ遅刻をしたの?」
「どうしてそんなことをするの?」
お子さんに対してこんな風に言ったことはありませんか?
その後のお子さんの反応はどんな風だったでしょう?
そして、それに対して、ご自身はどのように反応したでしょう?
理由を聞きたいだけなのに…悲しい齟齬
「今日、遅刻したって学校から連絡があったよ。どうして遅刻したの?」
「は?何だって良いじゃん!」
「何だって良いわけがないでしょう!」
最初は単純に「どうして遅刻なんてしたんだろう」と思っただけなのに、怒るつもりなんて全くなかったのに、それに対する子どもの反応が想定外のもので、つい口喧嘩に発展してしまった…
こういう齟齬は良くある話です。
子どもの気持ちを知りたい、子どものことを分かりたい、と思っての発言が、このような事態を引き起こしてしまっては悲しすぎます。
「なぜ」「どうして」の意外な使われ方
「なぜ」「どうして」は、文面上は純粋な疑問のように見えますが、叱責や指導のニュアンスが含まれていることがあります。
先ほどの例で考えてみましょう。
「今日、遅刻したって学校から連絡があったよ。どうして遅刻したの?」
この「どうして」は、純粋な疑問ばかりではありません。
それは、例えば『どうせ、朝寝坊をしたに違いない。最近夜更かしばかりしていたもの』とか、『どうせ理由なんてない。最近気が緩んでいる』とか、そういう決めつけや先入観がある時です。
そんな気持ちを少しでも感じ取ろうものなら、いくら「どうして」が単純な疑問であったとしても、子どもは「攻撃された」「非難された」と感じ身構えてしまいます。その結果が「は?何だって良いじゃん」という言葉です。
子どもの方にすでに後ろめたさがあったりすると、この傾向が一層強くなります。
また一方で、もしかしたら親の方も、自分でも気付かないうちに、子どもを非難したいような、叱責したいような、そんな気持ちがあったのかもしれないですね。
「なぜ」「どうして」は、疑問だけでなく、叱責や指導をする際にも(知らず知らずのうちに)使われることの多い言葉なのです。
「どうして遅刻したの!(あれほど時間は守るように言ったでしょう!)」は疑問ではなく、まさに、非難の際に使われる「どうして」です。
「なぜ」「どうして」は相手を問い詰めるニュアンスがある
親が本当に純粋な疑問として「なぜ」「どうして」を使たとしても、子どもによっては、反射的に身構えることもあります。
それは以前、「なぜ」「どうして」に非難のニュアンスを感じ取ったことがあるからです。
もちろん、親が原因とは限りません。学校の先生や塾の先生、友だちなど、子どもには色んな対人関係があります。
その中で、子どもなりに「なぜ」「どうして」に非難のニュアンスを学んでいったのです。
親の何気ない「どうして?」に対して、子どもが「どうしても!」と怒りだすのは子どもなりの学習の結果です。
理由を訊ねる時の言い回し
もともと「なぜ」「どうして」という言葉は、相手を問い詰めるようなニュアンスを与えてしまう単語です。なので使い方には注意が必要です。
そこで今回は、相手に理由を訊ねたい時にカウンセラーが普段やっている方法やコツをご紹介します。
①目を合わせない
会話をする時は相手の目を見ましょう、と小さなころから教わってきた人が多いのではないでしょうか。私たちは普段から、無意識のうちに相手の目を見て発言しようとしてしまいます。
しかし、「なぜ」「どうして」を用いる時は例外です。「なぜ」「どうして」と目を見て言われてしまうと迫力が増してしまいます。
それでなくても相手を問い詰めるようなニュアンスのある言葉が、それ以上の力を持ってしまい、相手は委縮してしまうのです。
ちょっと目線を逸らせながら言うのが良いです。
②ぼやくような感じで
ぼやくような感じ、というのはどういうことかというと、
「どうしてなんだろう…」「なぜなんだろう…」とぼんやり斜め上あたりを見ながらひとりで勝手にぼやくような、そんなイメージです。
目を合わせない、に関連するのですが、あくまでも素朴な疑問ですとアピールするつもりで「なぜ」「どうして」を使います。
「今日、遅刻したって学校から連絡があったよ。なんだか最近遅刻が多いよね。どうしてなんだろう…?」
この時、あくまで「ただ自分の興味だけで、あなたの遅刻の理由を疑問に思っている」というような雰囲気を出すのがポイントです。
③「なぜ」「どうして」を使わない
いっそのこと、「なぜ」「どうして」を使わない言い回しを考えるのはどうでしょうか?余計な齟齬が生まれにくくなるはずです。
オススメなのは、理由を聞きたい時には「なぜ」「どうして」という枕詞を使うのではなく、「何か理由があったの?」という疑問文にすること。
「今日、遅刻したって学校から連絡があったよ。何か理由があったの?」
「そのことなんだけどね…」
「なぜ」「どうして」を使わずに理由を訊ねる方法を試してみたら、新しい発見があるかもしれませんね。
いかがだったでしょうか?
コミュニケーションにおいて齟齬が出やすい「なぜ」「どうして」。
ちょっとした工夫で円滑なコミュニケーションが出来るかもしれません。お試しあれ。
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