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子どもにもう体力抜かれたかも、と感じた日帰り登山

小学校高学年の子どもは、外遊びが好きな親にとって「ゴールデンエイジ」の年頃である。体力がついて多少負荷のかかることができるようになるし、親が「行こう」と言えばまだ大抵は連れ出せる。

上の子は、中学に入った途端に部活やら友達との約束やらで休日の過ごし方が全く変わり、一緒にどこかへ行くことがほとんどなくなってしまった。それは自然な成長の過程で喜ばしいことだが、親としては寂しさも感じる。だから下の子は、より意識して小学生のうちにいろんな場所へ連れ出すことにしている。

ゴールデンウィークの連休は、日帰りで長めの山登りに連れていくことにした。この季節は自然の中を歩くのが気持ちいい。しかし、高尾山とか箱根とか、メジャーな山は人出もすごそうだ。せっかく自然の中に行くのに人だらけというのは避けたい。私がこれまでに歩いたことがある場所から、良さそうなところはないか検討した。

探したのは、しっかり山を登り下りできて、混んでなさそうで、スタートとゴールを鉄道の駅にできる場所だ。駅からバスで30分とか1時間かけて登山口に行くようなところは、着いた時点で子どもが飽きたり疲れたりしてしまう可能性がある。私が行ったことのある場所に限定したのは、万が一にも子連れで道に迷ったりしないようにするための素人なりのリスク低減策だ。結果、私が以前一度歩いたルートを選ぶことにした。

当日はおにぎりと多めの水分、スポーツドリンクとお菓子(行動食)を持って出発。目的の駅から歩き始めた。

私の見込みは予想以上だった。登り始めから2時間、他の誰にも会わなかったのだ。最終的な目的地はよく知られた場所なので人が増えることはわかっていた。しかしその2キロほど手前までは、3組の登山者に会っただけだった。大型連休の真っ最中だとは思えないほど静かな山登りを子どもと楽しむことができた。

全てが順調だったわけではない。普通の登山道であるにもかかわらず、普段から人がほとんど通らないようで、登り始めからしばらくは藪漕ぎとまではいかないが草木をかき分けて進むところが何ヶ所もあった。また、オオスズメバチが飛んでいたり(威嚇はされなかったから、巣の近くなどではなかった)、畑にイノシシ用かと思われるごつい鉄の檻が置かれていたりと、かなり人と野生が拮抗した場所を歩いていることを実感させられた。

私が以前に来たのは早春だった。季節が進むと野生がそれだけ活性化するのだろう。実際に危険を感じたことはないが、そこは思いが至っていない部分だった。

子どもも、「街中やちょっとした森林公園みたいなところとはなんだか違うぞ」と感じたのかもしれない。普段は歩くのを面倒くさがったりすることもあるが、この日は全く文句を言わずに最後まで歩き通した。休憩も入れ下山して駅に着くまで全部で18キロ、6時間の山登りだった。

帰路、「随分体力がついたな」と偉そうにその日の山行を総括した私は、帰りの電車で疲れて子どもより先に寝ていた。こうした小さなことを重ねながら、子どもは自分の成長や「親って実は大したことないな」といったことを読み取っていくのかもしれない。 

以前大きなマラソン大会に出たとき、会場に多くのブースが出店されていて、その一つが実施していた体力テストを受けたことがある。1分だったか、縄跳びを飛んで測定するというものだ。「急いで飛ばなくていいですよー」というスタッフの案内を聞いて余裕を持って飛んだら、飛んだ回数も着地点のズレなどとともにしっかり体力判定に使われた。

私の診断は5段階でちょうど真ん中の3だった。体力自慢ではないし不足もしていないと思っているので、納得できるところだ。そのときに言われたのが、「体力レベル3、平均、小学校5年生並みです」という評価だった。

「えっ、小学生並み?」とその時は思った。せめて、中学2年とか、それぐらいじゃないかと。でも自分の子どもと接していると、小学校5年生というのは体はまだ小さくても体力はかなりあることが実感できる。小学校高学年は、下り坂にある親の体力とグングン伸びる子どもの体力がちょうど交差するあたりなのかもしれない。

私が電車で先に寝てしまったのも、実はもう子どもの方が体力で上回っている証だったりするのだろうか。だとすると、中学生になる頃には仮に一緒に山に行っても私が付いていけないようなペースで歩いたりするのかもしれない。やっぱり、子どもの小学校高学年という年頃は、親にとって「ゴールデンエイジ」だと思う。



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