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日比谷でひとりミッドナイトスワンを観に行った

こんなに最初から最後まで苦しい気持ちになる映画はないと思います。自分と似た境遇や共通点を持つ登場人物は誰1人いないはずなのに、それぞれが抱える痛みをひしひしと感じてしまう。自分自身も含めて、生きづらさは大なり小なり誰にでも抱えているものだと気づかせてくれます。

実はこの映画は、2020年公開された当初にも一度観ています。草彅さんが好きな母に連れられ地元にある映画館に観に行きました。大学に入った年で、まだ上京していない頃でした。観る前には、正直、映画のポスターで草彅さんの女性の姿を見てなんとなく違和感を感じてしまいました。しかし、映画を観終わって、もう1度ポスターを見た時にその違和感が嘘みたいに消えていて衝撃を受けたのを覚えています。

大学生活を経て、そして上京して多くの人と関わるようになった今、以前よりも色々と考えさせられました。人と人がお互いを理解し合うことの難しさも日常的に感じるようになりました。つい、合わない人を見つけると「ま、いろいろな人がいるからな~」と相手を解ろうとするのを、本気で関わろうとするのを諦めてしまう場面も多々ありました。だから、孤独であった凪沙と一果が互いの苦しみを理解し、唯一無二の存在になった時には少し希望を感じました。

人間が苦しみもがきながら必死に生きていく姿を美しいと見せる脚本も多いと思います。だけど、この映画は美しいだけで終わらせなかったことがポイントだと思います。単に、ジェンダーとか多様性とかネグレクトといったそんな言葉や問題では片付けたくはないです。生きづらさの解消法や幸せの答えが何なのか分からなくなります。

ラストの2人のシーンは、渚沙にとっては幸せの答えであったのかもしれません。それでも観ていて、とても苦しかった。あまり映画で泣くことはないタイプだけれど、静かに涙が出ました。

エンドロールが流れてもみんな席に座り最後まで観ていました。すすり泣く音も聞こえました。エンドロールでも流れていたあの音楽も本当に綺麗ですよね。余韻に浸りながら、本当は文庫本も買って帰りたかったのですが、遅くまで開いている本屋がなく諦めて帰路につきました。

21時半頃の日比谷、多くの人で賑わっていました。そんな人達を見ながら、どんなにキラキラしているように見える人でも、普通に装っている人でもきっとどこかで生きづらさを抱えているんだろうなあと、ぼーっと考えながら歩いていました。同時に人との出会いで人生や自分にとっての幸せの意味が大きく変わることもあるんだろうなあと思います。

これは母にプレゼントします。今度母と草彅さんの
舞台を観に行きます。楽しみです(^^)

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