見出し画像

北欧パッケージのミカタ 絶対評価・相対評価

子供の頃って自由で力強い絵を描いていませんでしたか?しかし成長するにつれ、太陽は赤っぽい色だとか、一点透視図法だとかいう常識やテクニックに流されてしまいます!北欧と日本の食品パッケージにも似たような印象を感じています。

今回は「評価方法」という切り口でパッケージを考えてみます。


食品パッケージデザインの絶対評価・相対評価

画像5

グラフィックデザインを学ぶ日本の学生のことを自分なりに想像してみると、ビジネスやマーケティングなどの理論より、自分の中から生まれてくる発想やアイデアを大切にしているのではないかと思います。ひとまず、定石や制約は片隅に置いといて、自分自身のデザインと対話します(絶対評価)。その結果、好き嫌いは分かれるけれども、オリジナリティの高い、のびのびしたデザインに到達するのだと思います。これは自分起点のアート思考だと思います。

彼ら・彼女らが社会人になり、パッケージデザインを仕事にするとどうなるのでしょうか。例えば事例写真のトマトの缶詰(厳密には紙パック詰)をデザインする際、まずは、これまで市場に投入されたデザインを集めたり、パッケージデザインのルールを取り入れたり、組織の意思決定者の好みなどからベンチマークを掴むと思います。ベンチマークとなる商品のデザインと自分のデザインを比較すると、これじゃ目立たない、文字が読めない、シズル感が足りないとか消費者目線の修正が入ります。その結果、万人に嫌われることのない優れた表現なのだけれども、当たり障りのないところに落ち着き、デザイナーとしては窮屈なのではないかと思っています(特に低価格の食品)。これは行動観察起点のデザイン思考だと思います。

主観を入れて簡潔にいうと、北欧は絶対評価の生き生きしたデザイン(アート思考)、日本は相対評価の優等生デザイン(デザイン思考)が多いと感じました。(どちらが正解、不正解という意図はありません)。


北欧の食品パッケージデザインは絶対評価

「北欧は絶対評価の生き生きしたデザイン」と考えた事例をいくつかご紹介したいと思います。

画像2

北欧最大手の乳業メーカーArlaのイチゴミルクとココア。Arlaは北欧各国で商品が異なります。これはフィンランドの商品。絵あわせになっていて、飲み終わった後も楽しめます。フィンランドの公用語は2つ(フィンランド語とスウェーデン語)なので、表と裏で両方併記しています。例えば牛乳という単語は、MAITO(フィンランド語)とMJOLK(スウェーデン語)です。数個だけ買ったけれど、あらためて見ると全部欲しい!!イラストレーターはMatti Pikkujamsa氏。

画像3

SwedenのPB(プライベートブランド)であるGarantの肉(ビーフ、ポーク)。AxfoodグループのスーパーHemkopに売っています。普通、食欲失せる淡いパステルカラー、しかもムラサキ色って使いますか?色で減点なはずなのに、肉のホロホロ加減が絶妙で食欲をそそるという不思議な感覚。

画像5

SwedenのPB(プライベートブランド)であるICAの冷凍食品(魚・タラ)。背景の草花は紙を切り貼りしていて、さりげないクラフト感が冷凍食品の罪悪感を軽減してくれます。それにしても、商品のメインとなる魚を、パウチ包装した状態で写真撮るか、、。レンジ商品でもあるから正直ではあるけれども、、衝撃。

画像4

SwedenのNB(ナショナルブランド)であるOATLYの植物性オートミルク。自ら、背面の成分表示の部分にthe boring side(退屈な表示)って書きますか?たしかに退屈だけど 笑!ビーガン向けでもあるので、そういうこだわりの強いターゲット層は細かい記載まで読んでくれそうです。


北欧のパッケージ 、ワクワクしませんか!?

これらの北欧のパッケージはほんの一部です。他にも個性豊かなデザインが溢れています。もし比較対象となるベンチマーク的な商品があったら、このようなデザインにはなっていないと思います。これが北欧のパッケージデザインを絶対評価と考える理由です。(ただし、全ての商品に当てはまるわけではありません)。

北欧のパッケージデザインを眺めていると、制作したデザイナーが心から楽しんでいる姿が伝わってくる気がします。その作り手の感情はきっと消費者に届いています!心豊かな人が周囲に幸せを分かち合うことで幸福の輪が広がります。北欧の精神的な豊かさは、日常生活のひとコマにもあると確信しています。

日本の食品パッケージに関して、北欧のようなパッケージの割合が選択肢として増えてほしいと思います。これまでは同じものに価値がありましたが、これからは違うことに価値が生まれてきます。今後、市場の成熟とともに、デザイナー自身が心踊るような創造性豊かなデザインは増えていくと思います!


最後に、日本を代表するプロダクトデザイナーの深澤直人氏は、著書「デザインの輪郭」の中で、子供の頃の絵を回想しています。好きな絵を描けという課題で、画用紙をオレンジ1色で塗りつぶしたという出来事です!


いろんなミカタで北欧のパッケージ を考察していきます。
Tack!パッケージって楽しい!



・画像出典 / 参照
Arla    https://www.arla.fi/
Garant   https://basid.se/
ICA    https://www.icagruppen.se/
OATLY   https://www.oatly.com/
デルモンテ https://www.kikkoman.co.jp/


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?