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北欧パッケージのミカタ 低関与・高関与

日本と北欧の比較で、「化粧品や電化製品」のパッケージデザインは違いがほとんど無いのに、「食品」のパッケージは明らかに違う。この違いは何なんだ!!

今回は食品という切り口でパッケージを考えてみます。

主観を入れて簡潔にいうと、日本は嫌われない守りのデザイン(没個性)、北欧は好きな人は好きな攻めのデザイン(新奇性)が多いと感じました。(どちらが正解、不正解という意図はありません)。

ざっくり言うと(要約)

低関与商品である食品のパッケージデザインは、商品棚でのインパクトや同類他製品との差別化を図るため主張の強さが求められるようになりました。

日本の食品パッケージを観察して「高関与商品であればあるほど、デザインの自由度は高い」という仮説にたどり着きました。

北欧の食品パッケージを観察して「低関与商品でもイマドキのデザイン(新奇性、攻め)が多い」ことがわかりました。


食品は低関与商品

まず、食品について調べてみることにしました。マーケティングの文献を読んでみると、消費者行動での「購買関与度」というキーワードに引っかかりました。

低価格で頻繁に購入される、ジュースやお菓子といった食品は、購入時の関心・興味が低く、「低関与商品」と位置付けられます。逆に、高価格で滅多に購入されない、化粧品や電化製品などは、購入時によく吟味され、「高関与商品」と位置付けられます。(100円のジュースと5000円の化粧品では、商品に対する関心・興味が違うと思います)。

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低関与商品である食品は、多くの場合スーパーやコンビニなどで購入します。日頃、スーパーを利用する時に、6〜9割の人は自分の買う食品を店頭で決めているという調査結果があります。しかも、日本の某飲料メーカーでは、店頭での消費者行動を「2秒戦争」と表現していました。2秒で買う物を決めているというのです!

その背景から、食品のパッケージデザインは、商品棚でのインパクトや同類他製品との差別化を図るため主張の強さが求められるようになりました。

販売チャネルと購買関与度

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食品の主な販売チャネルである店舗の中にも、イオンやセブンイレブンなどのマス・マーケティングから、成城石井やナチュラルローソンのようなセグメント・マーケティングといった特徴があります。食品の中での購買関与度として、二者を比較してみると、前者は低関与商品(低価格帯・大衆向け)を、後者は高関与商品(高価格帯・こだわり層向け)を多く取り扱っています。

写真のお茶の例で言うと、左の二つが低関与商品(低価格帯・大衆向け)、右の二つが高関与商品(高価格帯・こだわり層向け)です。左は優等生デザイン(没個性)で、右はイマドキのデザイン(新奇性)だと思います。(事例として恣意的に商品を選んでいます)。

いわゆる高級スーパーなど、高関与商品を取り扱うパッケージデザインの方が、自由度の高いイマドキのデザインの割合が多いです。

また、空港・駅・デパートなどで購入するお土産は、十分に時間をかけて吟味される傾向があると思います。食品の中でも高関与商品(高顧客単価・贈答用)であり、自由度の高いパッケージデザインを採用しているように思います。

最近は販売チャネルとして、ネット通販の需要が着実に伸びています。ネット通販における消費者行動の特徴の一つは、購買前に商品の情報を探索することにあります(高関与商品)。ネット通販であれば商品の情報を画面上で説明することができ、商品自体の情報量は削減することができます。同じお茶でも、店舗とネット通販ではデザインが異なる例も出てきました。店舗よりネット通販の方が比較的自由度の高いパッケージデザインを採用しているように思います。例えば、ロハコOisixPalsystemなどのパッケージデザインは秀逸です。

購買関与度とデザイン自由度

日本の食品パッケージを観察して「高関与商品であればあるほど、デザインの自由度は高い」という仮説にたどり着きました。

高関与商品とは、例えば、手にとって見る時間が長い商品、こだわりの強い商品、高級路線の商品などです。

デザインの自由度が高いとは、イマドキなデザイン=好きな人は好きな攻めのデザイン(新奇性)です。逆にデザインの自由度が低いとは、優等生デザイン=嫌われない守りのデザイン(没個性)です。

購入までに2秒の商品より、30秒かかる商品の方がイマドキのデザインが多いと感じています。

ここで「日本」の食品パッケージと言ったのは、「北欧」はこの仮説が当てはまらないからです。なんと、北欧は購入までに2秒の商品でも攻めてきます。

北欧の低関与商品(飲料)

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スウェーデンのミネラルウォーター

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スウェーデンのリラクゼーションドリンク

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ノルウェーのアイスティー

北欧のパッケージデザイン、、いつ見てもカッコよすぎです。日本のデザインよりかなり攻めています。これらの商品が現地の普通のスーパーやコンビニで売っているんです!

北欧の食品パッケージを観察して「低関与商品でもイマドキのデザイン(新奇性、攻め)が多い」ことがわかりました。

自分が消費者として感じる限り、日本のスーパー向けの食品パッケージにイマドキのデザインが採用されるようになったのはここ数年と認識しています。それ以前も単発では秀逸なデザインはありましたが、定着しないため、すぐに市場から撤退せざるを得ない状況であったと感じています。

北欧の素敵な食品パッケージデザインは、少なくとも僕が初めて訪問した2007年にはスーパーに浸透していました。10年以上前に、こんなおしゃれなデザインが並んでいるスーパーを日本にいながら想像できましたか?現地の店頭でこれらの秀逸なパッケージデザインを見ると興奮してしまうという感情に少しでも共感してもらえたらうれしいです!

いろんなミカタで北欧のパッケージ を考察していきます。
Tack!パッケージって楽しい!


・画像出典 / 参照
イオン https://www.topvalu.net/
セブンイレブン https://7premium.jp/
成城石井 https://www.seijoishii.com/
ナチュラルローソン https://natural.lawson.co.jp/

購買関与度とは、「購買決定や選択に対して消費者が感じる心配や関心の程度」と定義される。
Horkins, Best and Coney, Consumer Behavior, 1986
消費者のスーパーにおける購買行動のうち 6 割から 9 割が非計画購買であることが指摘されている。
太田秀一,「キオスク端末を売り場で生かす」, 日経情報ストラテジー, 日経 BP 社, 2004
多くの場合、店舗内で購買意思決定が下される低関与製品のパッケー ジデザインは、店頭での競争激化により、製品棚でのインパクトや同類他製品との差別化を図るための、広告としての主張の強さが求められるようになったことは否定できない。
梅田悟司, 生活空間に調和するペットボトルデザイン, 2014


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