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ヨーロッパ文化教養講座(フィガロの結婚 シナリオ読破プロジェクト22 第16曲 フィナーレの7)

2023/02/01
前半のフィナーレの茶番劇はまだまだ続く。
第10景
ここで、アントニオ(庭師 バルバリーナの叔父)が入室して大騒ぎに!

アントニオ:
(infuriato)
Ah signor … signor…
(激高して)
ああ、旦那様、旦那様

伯爵:
(con ansieta’)
Cosa e’ sato?
(心配そうに)
何があったのだ?

アントニオ:
Che insolenza! Chi’l fece! Chi fu!
何という侮辱! 誰がそれをやったのか! 誰がいたのか!

伯爵夫人、スザンナ、伯爵、フィガロ:
Cosa dici, cos’hai, cosa e’ nato?
何を言っている。何があった、何が起こった。

アントニオ:
(come sopra)
Ascoltate …
(同様に)
聞いて下さい。

伯爵夫人、スザンナ、伯爵、フィガロ:
Via parla di’su.
さあ、早く言いなさい。

アントニオ:
Dal balcone che guarda in giardino
Mille cose ogni di’ gettar veggio,
E poc’anzi, puo’ darsi di peggio,
Vidi un uom, signor mio, gittar giu’.
庭に面しているバルコニーから
たくさんのものが、毎日、投げ出されるのを見ます、
でもそして、多分、更にひどいものが、
男を見た、旦那様、そこから投げ出されるのを

伯爵:
(con vivacita’)
Dal balcone?
(陽気になって)
バルコニーから?

アントニオ:
(mostrandogli il vaso)
Vedete i garofani.
(鉢を彼に見せながら)
カーネーションを見て下さい。

ボマルシェ の 原作 では giroflée( = アラセイトウ = ストック) で ある が、 この 花 の イタリア 語 は violacciocca で、 原語 の フランス語 の“ ジロフレ” から 発音 が 遠い。
そこで 音 の 近い“ ガローファニ( = カーネーション)” と なっ た の だろ う。
なお garofani の アクセント は、 後ろ から 3 番目 の 音節 ro に おちる が、 ここ の この 語 に関して は、 慣習 として garofàni と 発音 さ せる( かつて は、 と 言う べき かも 知れ ない が)。
それ は アントニオ が 単語 の アクセント を 十分 に 知る 言葉 の 素養 を 持ち合わせ ない こと を 示し、 彼 の 人物 像 の 一面 を 表す ため で ある。 譜面 では 4 音節 に 同じ 長 さの 音符 が 均等 に 付さ れ て いる が、 後ろ から 2 音節 目 の fa が 4 拍子 の 小節 の アタマ で、 他 の 音節 より 強拍 と する と、 作曲 者 の 意図 も garofàni だっ た か?…

電子版より

伯爵:
In giardino?
庭に?

アントニオ:
Si’.
はい。

スザンナと伯爵夫人:
(piano a Figaro)
Figaro all’erta. *stare all’erta 見張る、用心する。
(小声でフィガロに)
フィガロ、ご用心

伯爵:
Cosa sento!
何を聞いてしまったのか!

スザンナ、伯爵夫人、フィガロ
(Piano)
Costui ci sconcerta.
(forte)
Quel briaco che viene a far qui? *briaco -> ubriaco酔っ払い
(小声で)
こいつは、私たちを狼狽させる。
(大声で)
その酔っ払いは、ここに何しに来た?

伯爵:
(ad Antonio con fuoco)
Dunque un uom … ma dov’e’dov’e’gito? *gito -> gettato 投げられた
(アントニオに、興奮して)
ところで、その男。。。しかし、どこへどこへ、投げられた。

アントニオ:
Ratto ratto il birbone e’ fuggito
E ad un tratto di vista m’usci’.
素早く、素早く そのならずものは、逃げ出しました
そして、見る間にいなくなりました。

スザンナ:
(piano a Figaro)
Sai che il paggio …
(小声でフィガロに)
知ってる、小姓が。。。

フィガロ:
(piano a Susanna)
So tutto lo vidi.
(Ride forte!)
Ah, ah, ah!
(小声でスザンナに)
全て知っている、彼を見た。
(大笑いして)
は、は、は!

伯爵:
Taci la’.
黙りなさい、そこ。

アントニオ:
(a Figaro)
Cosa ridi?
(フィガロに)
何を笑う?

フィガロ:
(ad Antonio)
Tu sei cotto dal sorger del di’.
(アントニオに)
君は酔っ払っている、日の出から。

伯爵:
(ad Antonio)
Or ripetimi: un uom dal balcone …
(アントニオに)
さあ、私に繰り返し言いなさい:ある男がバルコニーから。。。

アントニオ:
Dal balcone …
バルコニーから

伯爵:
In giardino…
庭に。。。

アントニオ:
In giardino…
庭に。。。

スザンナ、伯爵夫人、フィガロ
Ma signore, se in lui parla il vino!
でもご主人様、もし、彼の中のワインがしゃべっているのでしたら!

伯爵:
(ad Antonio)
Segui pure: ne’ in volto il vedesti?
(アントニオに)
続けなさい:そのものの顔を見なかったのか?

三重唱
アントニオ:
No. Nol vidi. *Nol ->Non lo
いいえ。それを見なかった。

スザンナ、伯爵夫人
(piano a Figaro)
Ola’ Figaro ascolta!
(小声でフィガロに)
ねえ。フィガロ聞いて!

コメントと感想:
庭師アントニオは、ケルビーノやフィガロが嫌いなのか、伯爵に恩義があるのか、意外に粘り、なかなか退場せず、話が続く。

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