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動物園ミニチュア風撮影は意外といいぞ

0. 概要

 風景を撮影するうえで高い展望台などから「ティルトレンズの逆ティルト機能」を利用して撮影したミニチュア風写真が流行った時期がある。これをまさかの「動物園」に応用すると「意外と」いい写真が撮れる。いつも撮影する園館の魅力を別の視点から引き出すことができるので意外といいぞ。

1. ミニチュア風撮影とは?

1-1. ミニチュア風撮影とは?

 すでに風景のミニチュア風写真が流行ってから10年ほど経っているので撮影技術は先人が至るところに纏めています。詳しくはこちらの記事をご覧頂きたいです。

 要はレンズそのものを傾けることでピント面を傾けるのですが、ピントが合わなくなる方向に傾けることでピント面を制御している撮影技術です。

 下図で言えば通常タヌキに対して斜め45°から撮影すると木や草にもピントがあってしまいますが、レンズを傾けることでタヌキだけにピントを合わせています。

1-2. ミニチュア風撮影の撮り方

 ミニチュアっぽい撮影とは「人間が小さいもの(この場合はおもちゃ)に目を近づけたときの見え方」を再現すればいいことになります。

・ 焦点をあわせた場所以外は強くボケている
・ 彩度を高くする(色を鮮やかにする)
・ できれば斜め45°付近から撮る(ミニチュアは上から見ることが多い)

2. 動物園でミニチュア風撮影を活かすには?

2-1. 動物園でミニチュア風撮影をするメリット

・ 日中でも動物がいい位置にさえいれば絵になる写真が撮れる
・ 動物のいる風景写真を変わったテイストで撮れる
・ 普段通っている園館を違った目線で見ることができる

 普段推し個体の動きを狙って撮影するカメラマンとしてはどうしても手持ち無沙汰になる時間帯があるわけで動物がいい位置にいてさえくれれば撮れる撮影技術は貴重な動物園撮影の時間を無駄にしなくて済むので本当にありがたい。

 それと珍しい動物がいない園館だったり小規模な園館だとしても工夫すれば絵になる園館の写真が撮れる。むしろ小規模な園館だからこそあえて小さく建屋全体を写せたりもしますし。本当に可能性の塊だなと。

岡崎市東公園動物園 SONY α7iii + ASAHI Pentax Super-Takumar 55mm F1.8

2-2. 高台から撮影する場合

 ミニチュア風撮影の王道ですが展望台などの高台から撮影すればそれっぽくなります。

のんほいパーク SON α7iii + KMZ Jupiter-9 85mm F1.8
のんほいパーク SONY α7iii + ASAHI Pentax Super-Takumar 55mm F1.8

大型サファリの展望台などで上から眺められればとりあえず試してみるのをおすすめします。日中になるべく空は映さず地面を写してあげるのがよさそうかな……と。

2-3. 自分の身長を活かす場合

建物系のミニチュア風撮影との違い。それは自分自身が動物から見て高台の位置にあることです。いわゆる動物のアイラインが取りにくい展示場なのですがそれを逆手にミニチュア撮影を行ってしまおうという魂胆ですね。

のんほいパーク SONY α7iii + ASAHI Pentax Super-Takumar 28mm F3.5
東山動植物園 SONY α7iii + ASAHI Pentax Super-Takumar 55mm F1.8

狙いとしては下記の点を意識すれば撮りやすいかな……と思います。

1. ガラス展示場でありギリギリまで近づける
2. 獣舎内に落ち葉や草・雑多な物などが置いてある
3. 動物が地面あるいはそれに準ずる位置にいる
4. なるべく広角のレンズを使用する
5. 日の丸構図にする

動物が小さく写りすぎてしまうと意味がないのですがある程度ボカすための背景が必要な撮影技術でもあるので広角~標準寄りのレンズが必要になりそう。望遠レンズだとちょっとうまくいかないんですよね。

SONY α7iii + ASAHI Pentax Super-Takumar 135mm F3.5
手前のゾウにピントをあわせ後ろがボケているがこれなら普通の望遠レンズでもよさそう

他にもあまりにシンプルすぎる獣舎もボカすものがないのでミニチュアっぽくならないです。これだと望遠レンズで素直に撮影したほうがよさそう……

SONY α7iii + ASAHI PENTAX Super-Takumar 55mm F1.8
手前にボカすものがないのでミニチュアっぽく映らない

とはいえ巨大なモート展示場なら135mmの望遠レンズでもそれっぽい撮影にはなります。レンズ自体は安価なので持っておいても損はないかもしれないです。

SONY α7iii + ASAHI PENTAX Super-Takumar 135mm F3.5

2-4. 無理やりティルト撮影する場合

SONY α7iii + Super-Takumar 55mm F1.8

 高台がなくて人間と動物が同じ目線の獣舎でもカメラ自体を持ち上げてしまえば少しはミニチュア風撮影となります。ミラーレス気なら液晶画面を見ればファインダーを覗かなくても容易に撮影できます。

3. 撮影機材

3.1 マウントアダプター

ティルト対応レンズは非常に高額なため現実的なコスト感で撮影するにはマウントアダプターにティルト機能を持たせるのが安価です。他メーカーとくらべてPixco(バシュポと読むそう)のチルト対応アダプターが5000円台と安く使用してても困らないのでこちらがおすすめ。

PixcoだとM42・Minolta MD・Canon EF・Nikon F (Ai形式)・Leica RマウントをEマウントに変換するティルトアダプターが販売されています。一部マイクロフォーサーズ版の販売とのこと。

なお、お金が有り余ってる人はCanonおよびNikonがティルトシフトレンズを出しているのでこれでいいと思います。EF・Fマウントのみ対応ですが商品や建屋などの商業撮影では未だに現役。特にCanonはこれが充実しているのでこのレンズを買うならCanon機のほうがおすすめですね。

3.2 ボディ

正直アダプターが装着できるなら何でもいいです。とは言え実はアダプターがほぼミラーレス機に限られています。安価に導入できるのは実質SONY機とマイクロフォーサーズぐらいでしょうか。ボディに手ぶれ補正機能があったほうが望ましいです。あとMF撮影となるため慣れてない方はピーキング機能はほぼ必須と思ってください。

というのもミラーレス機になってからミラーがいらなくなった分フランジバックが短くなり、その空いた隙間にティルト機構を忍ばせているため。何のことかわからなければ解説記事を載せておきます。

なおピーキング機能とはマニュアルフォーカスでピントをあわせる際にピントのあっている位置をモニターに表示する機能です。目測でピントが合わせられる方には不要ですが

3.3 レンズ

 これはアダプターに対応するレンズを購入してください。安価に済ませるならM42マウントのSuper-Takumarのうち28mmと55mmを揃えるのが無難かなと思います。EF・Fマウントの単焦点レンズがあるならそちらを転用するのもアリかなと。

 他にも似たようなレンズとしてSMC Takumar(Super-Multi-Coated Takuamr)と呼ばれるレンズもありますが趣味で撮影する分には少し高くてもSuper-Takumarを購入することを強くおすすめします。オールドレンズらしいフレアやゴーストを活かした写真も撮れるので別の役割も持たせられます。

なおお金が有り余っているならばCanonとNikonがそれぞれティルトシフトレンズを出しているのでこちらをおすすめします(ただしEF・Fマウントのみ)。未だに商品撮影や建屋撮影などの商業撮影では現役で使われているとのこと。

補足:実はアプリでもできるぞ?

ここまで紹介しておいて何ですがPhotoshopで帯状にぼかすエリアを作れば似たようなことはできてしまいます。

 もちろんPhotoshop前提ですがLightroomを使ってる人なら大抵持っているツールのはずですので正直ティルトレンズをわざわざ買わなくても成立してしまうと。

 実際商品撮影で使われていたティルトレンズは深度合成写真を撮ることで対応可能なので、3~40万も払ってレンズを買うコスト感が似合わせないからか使われなくなりつつあるそうです。一方で作品作りという意味ではミラーレス機の登場で安価なオールドレンズとマウントアダプターの組み合わせでミニチュア風撮影ができるようになったので一々編集する手間を考えたら撮影したほうが楽なんじゃないかな……とは思います。

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