敦煌莫高窟へ

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莫高窟へは2回行ったことがある。何年か前に来たことがある訳ではない。この旅行で2回目行ったのだ。

なぜそんなことになったのかは、前回の若者に関係する。

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敦煌に来て2日目、持参した「地球の歩き方」を信じて莫高窟行きのバスを探したところ、案外簡単に見つかった。運転手に聞くとこのバスで良いと言う。早速乗り込んだ。

しばらくすると続々と人が乗り込んできた。市内用のバスであり、地元の人しか知らないような雰囲気だった。最後に乗り込んできた若い大男が彼だった。

料金の支払い方を周囲に聞くと、先払いだと言う。2元だったか?タクシーだと数十元なのでずいぶん安い。若い頃は少しでも安くしないと気が済まなかったが、最近は安すぎると却って気が引けてしまう。私は金持ちでもないが、少しでも観光地に貢献した方が良いような気がするからだ。

とはいえバスは出発した。

地元のバスのため、一体どこで降りるのかがよくわからなかったがなんとなく着いた。運転手に礼を言って降りると、大男が後ろから駆け寄ってきて話しかけてきた。

「莫高窟に行くんですか?」

「ええ、そうですが、あなたも?」

「一緒に行きましょう」


観光地で話しかけてくるのは怪しい人が多いが、なぜだか彼にはそんな雰囲気がなかった。しかも中国語だ。ただの良い人なのかもしれない。

一応警戒しつつ双方自己紹介。私が日本人だと知ると慌てて英語に切り替えようとしたので勘弁してもらった。私の英語は3歳児並みだ。中国語の方がいい。私のことは台湾人のおじさんだと思ったそうだ。

チケットを買うときに、彼は外国人の私のために骨を折ってくれた。事前に映像を見なければいけないのだが、料金が別にかかるからだ。

また、日本語通訳をつけるコースがあるが少し高い。彼はそのことを気にしてくれていた。彼の提案では「あなたの中国語のレベルは高いし、わからないところは私が解説しますが、どうですか」と。

私の中国語は日常会話は問題なくこなせるが、歴史用語は難しいだろう。ガイドの話は聞き取れないのではないか。とはいえ、若い彼のせっかくの好意なので受けてみることにした。

どうせ旅行だ。聞き取れなくったって構わない。楽しければそれでいい。と、私はその時思っていた。

研修センターのようなところで動画を見ることになった。時間まで一緒にコーヒーを飲むことにした。彼は安徽省のある大学の学生証を出して今年卒業なんだと話してくれた。私も自分の身分を明かし、お互いの写真を見せ合った。大学時代に建設現場での実習があったと言う。鉄骨を担いで登ったり降りたりしたのが本当に辛かったと言っていた。

育ちも良いのだろう。両親は国営企業に勤めていて、まだ50代だそうだ。大学も実家からほど近い。一つ問題があるとすれば彼の標準語中国語はかなり安徽省の発音の影響を受けていて、時々何を言っているかまるでわからなかった。その度にスマホアプリで翻訳してくれた。時々スマホアプリも彼が何を言っているかわからないらしく困っていた。「僕の発音はとても田舎くさいんです」と恥ずかしそうに言うので、私の中国人の友人の話をした。綺麗な標準語を話せる人は一人しかおらず、みんなどこかおかしい、だから気にするなと。

動画視聴中、彼が私の荷物を気遣ってくれていいるのに気づいた。おそらく物盗り対策だろうか。最近中国で物盗りにあった経験はほとんどない。治安が非常に向上したんだろうと勝手に思っている。

研修センターのようなところから莫高窟へはバスで移動した。

25年前、私は中国に留学していた。一年だけの語学留学だったが、夏休みに敦煌へ向かった留学生は多かった。へそ曲がりの私は「みんなが行くところへは行きたくない」と別の場所に向かったのだが、あの時行っていたらどうだったのだろう。もう少し生の姿が見られたのではないか。

最近中国を回っていると観光地が非常に整備されていることに気がつく。もちろん良いことなのだが、一抹の寂しさを感じないわけではない。

バスが着いた。川の向こうにありの巣穴のような穴が空いている。あれが莫高窟だ。

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