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Don't Take That Black Bottom Away

「ドント・テイク・ザット・ブラック・ボトム・アウェイ Don't Take That Black Bottom Away」は、1926年にハリー・リンクHarry Linkが作曲し、アディー・ブリット Addy Britt とサム・コスロウ Sam Coslow が作詞したポピュラーソング。ジャズのスタンダードと言うほど録音/演奏されているわけではないが、軽快で可愛らしい曲。

ブラックボトムの人気っぷりがわかる曲

これまで「ブラックボトム・ストンプ Black Bottom Stomp」「ブラックボトム Black Bottom」などダンスとしてのブラックボトムにかんする曲を扱ってきた。それぞれの曲でブラックボトムというダンスが賞賛されている。この曲も1920年代のこうした流行を追った曲で、まさに「ブラックボトムをどこかに持っていかないで」ということが繰り返し述べられている。これによって、ブラックボトムがそれほど人気のダンスであったこと、このことを知ることができる。

歌詞のなかではさまざまなものの引き換えに、ブラックボトムの大切さが歌われている。ヴァースから「このステップを覚えてから、だれも私を転ばせたりしなくなった。わたしはパーティの人気者になった。でもみんなこのステップを私から取り上げようとしてるんだ」とはじまる。つまり、自分をパーティの人気者にしてくれたブラックボトムをほかの人たちが真似してしまうということが言われている。

1番は、「コートや帽子、犬や猫をどっかに持って行っても構わない。でもブラックボトムは持っていかないで」と歌われる。二番は今度はブラックボトムが廃れないこと、このことが歌われる。「シミー・ダンスが自分の手から離れても気にしなかった。チャールストンが時代遅れになっても泣いたりはしなかった。でも毎日の終わりに私は祈っている。あのブラックボトムをどこかにやらないで」といった感じで時代や流行の移り変わりを歌っている。

録音

Annette Hanshaw (NYC, October 1926)
Annette Hanshaw (Vocal); Red Nichols (Cornet); Jimmy Lytell (Clarinet); Miff Mole (Trombone); Irving Brodsky (Piano); John Cali (Banjo); Joe Tarto (Brass Bass);
記念すべき初録音。アネット・ハンショウの録音。イントロからとてもヒップでちょっと物悲しそうな歌声も素敵。

Adrian Rollini And The Golden Gate Orchestra (October 14, 1926)
Bobby Davis (Clarinet, Alto Saxophone, Soprano Saxophone); Frank Cush (Trumpet); Roy Johnston (Trumpet); Sam Ruby (Tenor Saxophone); Abe Lincoln (Trombone); Adrian Rollini (Bass Saxophone); Unknown (Violin); Tommy Felline (Banjo); Jack Russin (Piano); Herb Weil (Drums); Ed Kirkeby (Vocal)
エイドリアン・ロリーニの楽団による録音。これもホットな録音。ボビー・デイヴィスのクラリネットが冴え渡っており、またヴァイオリンのオブリガードも非常にかっこいい。エド・カークビーの歌声も素敵。

Janet Klein And Her Parlor Boys (NOT GIVEN, Released in 2004)
Janet Klein (Vocal); Brad Kay (Piano)
この曲が発表されてからおよそ80年間ほとんど録音されなかったけど、この曲が有名になったのは間違いなくジェネット・クラインによるところが多いだろう。ピアノとヴォーカルのデュオのシンプルな構成なんだけどやはり素晴らしい。

Barbara Rosene (NOT GIVEN, Released in 2013)
Barbara Rosene (Vocal); Andy Stein (Baritone Saxophone); Pete Martinez (Clarinet); Craig Ventresco (Guitar); Conal Fowkes (Bass);
ニューヨークで活動しているバーバラ・ローシーンの録音。ピアノとドラムのいない構成なんだけど、わりと雰囲気はアネット・ハンショウの録音に似ている。アンディ・スタインはここではバリトン・サックスを吹いている。

Vanessa Tagliabue Yorke (Levico Terme TN, Italy, 26 December 2014)
Vanessa Tagliabue Yorke (Vocal); Francesco Bearzatti (Clarinet); Mauro Ottolini (Trombone); Paolo Birro (Piano);
イタリアで活動しているバネッサ・タグリアブエ・ヨークのライブ実況録音。ジェネット・クラインのフォロワーと言うべきなのかわからないけど、似たような雰囲気をまとっている。ただ歌声は結構深くでミドレッド・ベイリー的な雰囲気もある。


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