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Blue Turning Grey Over You

「ブルー・ターニング・グレイ・オーヴァー・ユー Blue Turning Grey Over You」は1929年にファッツ・ウォーラーが作曲し、アンディ・ラザフが作詞したポピュラー・ソング。大スタンダードのひとつでファッツ・ウォーラーを代表する曲のひとつ。

1929年。ウォーラー=ラザフのチームは、舞台『ホット・チョコレート』の成功のあと、それまで契約していたミルズ社から新しい出版社を変えることになった。 新しい出版社はジョー・ディヴィス Joe Davisが経営していた。これについてウォーラーの息子ウォレンス・ウォーラーの記述を見てみたい (Waller and Calabrese, 1977)。ちなみに、息子の視点で書かれた本なので、原文だとファッツ・ウォーラーの呼称は「父dad」となっている。「父」のままだとちょっと読みにくいし、わざわざ毎回修正すると煩雑になるので「ウォーラー」を使用する。

強面の実業家だったディヴィスは、ウォーラーに仕事とマネージメント契約をオファーし、ファースト・リフューザー権(ウォーラーの音楽を最初に聴く出版社になるという保証)を求めた。ディヴィスはまた、事務所を訪れるソングライターやヴォーカリストのためにピアノを弾くこともウォーラーに求めた。彼はウォーラーに週給と印税、そして1日2本の酒を支払うことに同意した。10時から5時まで、狭い部屋で曲作りをするというのは、ウォーラーにとって新鮮だったけれども、とても窮屈な経験だった。しかし、ジョー・デイヴィスはウォーラーと密接に働き、ウォーラーの最高のピアノ・ソロのいくつかは、ジョーの監督の下で書かれたり、発展させたりしたものだった。

Waller and Calabrese (1977) p. 89

この「ブルー・ターニング・グレイ・オーヴァー・ユー」が書かれたのは、まさにこの時期。恋人に新しい好きな人ができてしまった男の失恋の歌で「おれは憂鬱 (blue)。きみのせいで(over you)僕は白髪になる(turning grey)」という感じ。

録音

Louis Armstrong Orchestra (New York February 1 1930)
Louis Armstrong (vocal, trumpet); Henry Allen (trumpet); Paul Barbarin (drums); William Blue (clarinet); Pops Foster (string bass); J. C. Higginbotham (trombone); Teddy Hill (clarinet); Charlie Holmes (alto saxophone); Otis Johnson (trumpet); Will Johnson (guitar); Luis Russell (piano)
ルイ・アームストロング楽団の録音。ジャズにとっては記念すべき初録音。

Fats Waller and His Rhythm (New York January 1938)
Fats Waller (Piano, Vocal); Eugene Sedric (Alto Saxophone); Al Casey (Guitar); Cedric Wallace (Bass); Slick Jones (Drums)
インスト。ユージン・セドリックは2回目のソロの方がかっこいい。それとこの録音だとスリック・ジョーンズのビートがかっこよくてずっと聴いている。

James P Johnson (New York, 28 June 1944)
James P Johnson (Piano); Eddie Dougherty (Drums)
ジェイムズPは前年もこの曲を録音しているんだけど、この録音の方がタメが効いているのと都会的なブルースを感じれて好き。

Ralph Sutton Trio (New York 1950)
Ralph Sutton (Piano); Buzzy Drootin (Drums); Bob Casey (Bass)
ラルフ・サットンによるファッツ・ウォーラーのトリビュート。ラルフ・サットンの録音のなかでももっとも好きな録音のひとつ。めちゃくちゃかっこいい

Ernie & Emilio Caceres (San Antonio, Texas September, 1969)
Ernie Caceres (Clarinet); Emilio Caceres (Violin); Curly Williams (Guitar); Cliff Gillette (Piano); George Pryor (Bass); Joe Cortez, Jr. (Drums);
クラリネットとバイオリンの兄弟デュオの録音。スタッフ・スミスを彷彿とさせる演奏がかっこいい!

Fred Sokolow (Los Angeles[?], 2008[?])
Fred Sokolow (Vocal, Guitar); Unknown (Bass); Unknown (Drums)
ギタリスト、バンジョー奏者としてさまざまな録音と教則本を出しているフレッド・ソコロウの録音。ヴァースから歌っていてバラードからスイングになるところもかっこいいんだけど、参加しているメンバーがわからない。

New Orleans Jazz Vipers (West Long Branch, New Jersey October 2012)
Joe Braun (Vocal, Saxophone); Dave Boswell (Trumpet); Craig Klein (Trombone); Mindaugas Bikauskas (Guitar); Joshua Gouzy (Bass);
ジャズ・ヴァイパーズの、いわゆるバンドの分裂後の録音。モーリー・リーヴスの加入前。モダン・ニューオーリンズ・ジャズの先頭を走るようなバンド。

Catherine Russel (New York November 30 2015)
Catherine Russell (Vocals); Mark Shane (Piano); Matt Munisteri (Guitar); Tal Ronen (Bass); Mark McLean (Drums)
ディーヴァ、キャサリン・ラッセルの貫禄のある録音。ジャンゴ・スタイルを彷彿とさせている、

Jacks'&'Jills Swing Band (Paris 2020)
Antoine Bonvoisin (Guitar, Vocal); Dimitri Hélias (Trumpet); Garry Nayah (Clarinet); Rudolphe Stenge (Trombone); Josselin Prud'hom (Bass); Arnaud Plantier (Drums)
パリのスイング・バンド。都会的なトラッドジャズ。

参考文献

Waller, Maurice and Calabrese, Anthony (1977). Fats Waller. New York: Schirmer Books.


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