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Dippermouth Blues

「ディッパーマウス・ブルース Dippermouth Blues」はキング・オリヴァー Joe "King" Oliver が1923年に作曲したジャズ・ナンバー。

柄杓口のブルース

「ディッパーマウス」は言わずもがなルイ・アームストロングのあだ名だった—口が柄杓(ひしゃく)のような大きかったからだそうだ。だからルイ・アームストロングも作曲に貢献しているのではないかという説もあるようだ。Dipper Mouth Bluesの表記もある。トラッド・ジャズの大スタンダード。

ジャズとブルースがとても近い曲で12小節のブルース進行が特徴的。また、後年になってドン・レッドマンがこの曲を元にアレンジだけ変えた「シュガーフット・ストンプ Sugarfoot Stomp」を作曲している。

ディズニー映画『プリンセスと魔法のキス The Princess and the Frog』でもワニのルイが演奏をしていることから、ディズニー映画が好きな人は一度は聞いたことがあるはず。

録音

King Oliver's Creole Jazz Band (Richmond, Indiana, April 6, 1923)
King Oliver (Cornet); Louis Armstrong (Cornet); Honore Dutrey (Trombone); Johnny Dodds (Clarinet); Lil Hardin (Piano); Bill Johnson (Banjo); Baby Dodds (Drums)
King Oliver's Jazz Band (Chicago, June 23, 1923)
King Oliver (Cornet); Louis Armstrong (Cornet); Honore Dutrey (Trombone); Johnny Dodds (Clarinet); Lil Hardin (Piano); Bud Scott (Banjo, vocal); Baby Dodds (Drums)
さて1923年に2回録音されたオリヴァー・バンドのディッパーマウス・ブルース。ルイ・アームストロングにとっても重要な録音で「問題はコルネットのミュート奏法のコツを得ることができなかったことだった。アームストロングがどんなに頑張っても、[ルイ・アームストロングがアイドル視していた]オリヴァーのワウワウ・ソロをうまく演奏することができなかった。」と記述される (Harker, 2011, p. 22)。だからこそ彼はオリヴァーとは違ったコルネットの奏法を模索するようになり、その結果は「コルネット・チョップ・スーイ Cornet Chop Suey」のような録音として立ち現れるようになった。

Kid Ory's Creole Band (Los Angeles, California, 5 August 1945)
Kid Ory (Trombone, Vocal); Mutt Carey (Cornet, Trumpet); Omer Simeon (Clarinet); Buster Wilson (Piano); Bud Scott (Guitar); Ed Garland (Bass); Minor Hall (Drums)
さすがオリーのバンドというべき素晴らしい演奏。

This is Jazz! (NYC, 26 April, 1947)
Louis Armstrong (Trumpet); Wild Bill Davison (Trumpet); George Brunies (Trombone); Albert Nicholas (Clarinet); An Hodes (Piano}; Danny Barker (Guitar); Pops Foster (Bass); Baby Dodds (Drums)
40年代の東海岸に残ったジャズメンのオールスターというべきバンド。ルイ・アームストロングはいくつかこの録音をしているがこれがベストテイクだと思う。ソロもバンドのアンサンブルもとにかく素晴らしい。

De De & Billie Pierce (NY March 31 1962)
De De Pierce (Trumpet); Billie Pierce (Piano)
夫婦デュオ。シンプルな構成だからこそグッとくるものがある。

Bob Schulz And His Chicago Rhythm Kings (Atlanta April 16 2000)
Bob Schulz (Cornet, Vocals); Tom Fischer (Clarinet); Mark Shane (Piano);Marty Grosz (Guitar);Mike Karoub (Bass); Hal Smith (Drums);
シカゴ・スタイルの大御所たちの録音。ボブ・シュッツのコルネットがまさにニューオーリンズ・スタイルでトム・フィッシャーのコルネットのドライブ感が素晴らしい。さらにハル・スミスの抜けのよいスネアがバンドを盛り上げている。

Le Dancing Pepa Swing Band (Valencia, Spain, 2016)
Eduard Marquina-Selfa (composer, arranger, piano); Joan Saldaña (alto saxophone); Paco Soler (trombone); Fede Crespo (trumpet); Javi Perez (double bass); Jose Reillo (drums)
ヴァレンシアのスウィング・バンドのレ・ダンシング・ペパ・スウィング・バンドの録音。サウンドとしてはニューオーリンズ・スタイルをもとにニューヨーク・スウィングを足したような感じ。これも素敵。

Annie and the Fur Trappers (St Louis 2019)

Annie Linders (trumpet); Nathan Rivera (banjo); Matthew Berlin (Tuba); Taylor Maslin (clarinet); Ed Goroza (trombone); Rob Rudin (Washboard)
セント・ルイスで活動しているアニー・アンド・ファー・トラッパーズの録音。ニューオーリンズ・スタイルの録音でバンドとしてかなり完成されている。

Secret Six Jazz Band (New Orleans 2023)
Haruka Kikuchi (trombone); Craig Flory (clarinet); Zach Lange (trumpet); Nathan Wolman (trumpet); John Joyce (upright bass); Hunter Burgamy (guitar); James McClaskey (banjo); Defne “Dizzy” Incirlioglu (washboard)
ニューオーリンズでブイブイ言わせているメンバーたちによるバンド。オールドスクールな音作り。これは生で見たらまじで最高なんだろうなあと何度も思う。クレイグ・フローリーのソロが素晴らしい!

参考文献

Harker, Brian. (2011). Louis Armstrong’s Hot Five and Hot Seven recordings. Oxford: Oxford University Press.


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