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Cornet Chop Suey

「コルネット・チョップ・スーイ Cornet Chop Suey」は1924年にルイ・アームストロング Louis Armstongが作曲したジャズ・ナンバー(録音は1926年)。トラッド・ジャズのスタンダード。

ノヴェルティとしてのジャズ

また詳しく書くが、芸術音楽になってしまう前のジャズには大きく分けて2つの方向性があった。第一に、ダンス・ミュージックとしてのジャズだった。そういったジャズは主にダンス・ホールで展開され後のスウィングを作り上げた。第二に、ノヴェルティとしてのジャズを挙げることができる。ノヴェルティとしてのジャズは、もともとヴォードヴィルで展開されていた出し物の派生と見なすことができ、そうしたジャズは「珍妙さ」や「楽しさ」を売りにしており、驚くような演奏がもてはやされた(Harker, 2011)。もちろんそういった「驚くような演奏」というのは「おかしさ」や「笑い」だけではなく、巧妙なソロも含まれるのは言うまでもない。

この曲のルイ・アームストロングの録音はまさに後者のノヴェルティのジャズに位置付けることができる。それはまさにこの曲で展開されるコルネットのソロはまさに当時の観客の度肝を抜くような演奏だったからにほかならない。ルイ・アームストロングは必ずしもヴォードヴィルで演奏はしなかったが、この曲にそうした「初期のジャズにおけるヴォードヴィル的な感性」(Harker, 2011, p. 17)を見出すことができる。

録音

Louis Armstrong and Hot Five (Chicago February 26 1926)
Louis Armstrong (Cornet); Kid Ory (Trombone); Johnny Dodds (Clarinet); Lil Hardin Armstrong (Piano); Johnny St. Cyr (Banjo)
ジャズの新しい未来を予感させるホット・ファイブの最初の録音。1930年代のジャズにおけるトランペットの名人芸の先駆けとして見ることができる (Harker, 2011, p. 17)。

Ruby Braff (Paris, October 20, 1969)
Ruby Braff (Cornet); George Wein (Piano); Barney Kessel (Guitar); Larry Ridley (Bass); Don Lamond (Drums)
ちょっとモダン・ジャズっぽいシカゴ・スタイルの録音。ルビー・ブラフのサッチモ愛たっぷりのコリネットにうっとりする。

Dick Wellstood (NYC 1981)
Dick Wellstood (Piano)
最初聴いた時、この曲をソロ・ピアノでするのか!と驚いた。ピアノ一つでこんなに美しくも雄弁にコルネット・チョップ・スーイを演奏するなんて…といつも感動する。

Hal Smith's Creole Sunshine Orchestra (New Orleans, August 4, 1998)
Duke Heitger (Trumpet); Brian Ogilvie (Clarinet); Mike Owen (Trombone); Steve Pistorius (Piano); Tom Saunders (Bass); Hal Smith (Drums);
ハル・スミスのバンドの録音。ニューオーリンズ=ディキシー・スタイル。わたしとしてはマイク・オーウェンのトロンボーンに萌える。

The 'O' City Vipers (Bordeaux, France 2021)
Jules Delaby (Trumpet); Vincent Darribère (Clarinet); Maxime Pache (Trombone); Perry Gordon (Guitar); Jean-Philippe "Tchak" Soler (Bass)
フランスのオー・シティ・ヴァイパーズの録音。ニューオーリンズ+ジャンゴ・スタイルの組み合わせとして展開している。トランペットかっこよ!マカフェリ・ギターのポンプがめちゃくちゃ気持ちいい。

参考文献

Harker, Brian. (2011). Louis Armstrong’s Hot Five and Hot Seven recordings. Oxford: Oxford University Press.


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