見出し画像

Chicago (That Toddlin’ Town)

「シカゴ Chicago」は1922年にフレッド・フィッシャー Fred Fisher が作詞・作曲したポピュラーソング。スウィングでもマヌーシュ・ジャズでもよく録音されるスタンダード。

さて、シカゴの代名詞といえば「風の街」、つまり「ウィンディ・シティ Windy City」だろう。だが、この曲でフィッシャーは新たに「あのよちよち歩きの街 That Toddlin’ Town」という代名詞を街に与えた。この「よちよち歩き」とは、いくつか考え方があるようだが、さしあたり酒による千鳥足を意味していると思ってよい。シカゴといえばアル・カポネを代表するようなマフィアの巣窟を思い起こすだろう。そうしたシカゴの街では、禁酒法であってもマフィアが酒の密売を取り仕切った関係で、酒を飲むことができた。歌詞には「ビリー・サンデー Billy Sunday」なる人物が登場するが、かれは禁酒主義の伝道師で全米を酒の恐ろしさについての説教をしてまわった。そんなビリー・サンデーでも「黙らせることができない」街と描写されるのがこのシカゴである。だからこの街ではお酒に酔っ払い「よちよち歩き」をすることができたのだ。

アル・カポネとビリー・サンデー。こうしたマフィアがもたらすものを賞賛するような内容を聴くと、まさに当時のシカゴにおけるミュージシャンとマフィアの関係性が透けて見えるようだ。

録音

Quintette du Hot Club de France (Paris April 26 1937)
Stéphane Grappelli (Violin); Django Reinhardt (Guitar); Pierre “Baro” Ferret (Guitar); Marcel Bianchi (Guitar); Louis Vola (Bass)
グラッペリのテーマのフラジオがとんでもなく美しい。というかもうバンドとして別格。

Stephane Grappelli (Villingen-Schwenningen March 1971)
Stéphane Grappelli (Violin); Eberhard Weber (Bass); Kenny Clare (Drums); Marc Hemmeler (Piano)
グラッペリの大名盤に吹き込まれた一曲。この頃はグラッペリの何度かの全盛期と言えるかもしれない。音も演奏もどちらも美しい。

Brady Winterstein Trio & Martin Weiss (Forbach, France 2013)
Martin Weiss (Violin); Brady Winterstein (Guitar); Hono Winterstein (Guitar); Xavier Nikci (Bass)
とんでもなく力強い録音。ロマ・ヴァイオリンのマーティン・ウェイスの深いスウィング感覚が炸裂している。ツィガーヌっぽいヴァイオリンが美しい。

Duved and his Transatlantic Five (Montreal, QC. November 2-5, 2019)
Duved Dunayevsky (Lead Guitar); Daniel Garlitsky (Violin); Denis Chang (Bass); Zak Martel (Rhythm Guitar)
去年来日していた(わたしは行けなかった、というか知らなかった)Duved Dunayevsky のバンドの録音。とても心地のよいスウィングを展開しており、とくにジャンゴ・ラインハルトの録音に志向している。

Wawau Adler (Stutensee, German 2022)
Wawau Adler (Guitar); Alexandre Cavaliere (Violin); Denis Chang (Guitar); Hono Winterstein (Guitar); Joel Locher (Bass);
ワワウ・アドラーのリーダー作。わりとパンキッシュな録音で聴きごたえがある。


投げ銭箱。頂いたサポートは活動費に使用させていただきます。