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(Back Home Again in) Indiana

「バック・ホーム・アゲイン・イン・インディアナ Back Home Again in Indiana」は1917年にバラード・マクドナルド(Ballard MacDonald)が作詞をし、ジェイムズ・ヘンリー(James Hanley)が作曲したポピュラーソング。ジャズのスタンダード。タイトルは録音によって”(Back Home Again in) Indiana”だったり”Back Home Again in Indiana”、”Indiana”だったりする。

都会から故郷へ

田舎から都会に移った人が故郷を思い返す歌というものは多くある。「アラバミー・バウンド」もそうだった。この曲でもまさにインディアナの風景が詳細に記述され、それが故郷に対する想像を駆り立てている。インディアナの人々、つまり「フージャー Hoosier」に愛される歌で、フューリアとラッサーは、「州歌を歌って」とフージャーに聞けば間違いなく「インディアナ」が歌われる、と述べている (Furia & Lassar 2006, p. 17)。

ちなみにインディアナの州歌はポール・ドレッサー作詞作曲の「ウォバッシュ川のほとりで On the Banks of the Wabash」という曲。「バックホーム・アゲイン・イン・インディアナ」は「ウォバッシュ川のほとりで」から歌詞とメロディを少し変えて引用している。具体的には、たとえば「ウォバッシュ川のほとりで」は 「野原から刈りたての干し草の息吹が聞こえてくる From the fields there comes the breath of new mown hay」と歌われるが、「インディアナ」では 「刈りたての干し草が香りを送ってくる The new mown hay sends all its fragrance」と歌われる。

録音

Chu Berry And His Stompy Stevedores (New York, March 23, 1937)
Chu Berry (Tenor Saxophone); Israel Crosby (Bass); Buster Bailey (Clarinet); Cozy Cole (Drums); Lawrence Lucie (Guitar); Horace Henderson (Piano); George Matthews (Trombone); Hot Lips Page (Trumpet)
チュー・ベリーのテナーサックスがもっとも好きな時期の録音。ホット・リップス・ペイジのトランペットもブルージー。それとやはりコージー・コールのドラムが好きでよく聴いています。

Bill Coleman And His Orchestra (Paris November 12 1937)
Stéphane Grappelli (Piano); Ted Fields (Drum); Wilson Myers (Bass); Joseph Reinhardt (Guitar); Bill Coleman (Vocals, Trumpet)
神は二物を与えるとか与えないとか言いますが、グラッペリのピアノ。すごいなあ、と聴いてしまう。ビル・コールマンのボーカルもおもしろい。なによりトランペットがキレているのがいいですな。

Teddy Wilson Sextet (NYC. June 15, 1944)
Emmett Berry (tp), Benny Morton (tb), Edmond Hall (cl), Teddy Wilson (p), Slam Stewart (b), Sid Catlett (dm)
30年代後半のテディ・ウィルソンもかっこいいけど40年代に入ってからも素晴らしいですね。スラム・スチュワートは、この録音だとそんなに目立たないけどとにかくドライブ感のあるベースがとんでもないことになっている。素敵!

Art Tatum Trio (NYC 12 20 1952)
Art Tatum (Piano); Slam Stewart (1952); Everett Barksdale (Guitar)
タイニー・グライムスが入った編成は40年代で終わってエヴァレット・バークスデイルが新たに入ったトリオでの録音。この編成では少なくとも6曲(?)録音している。スラム・スチュワートのアルコ+歌の伝家の宝刀も相変わらず素晴らしい。アート・テイタムはむしろテイタムよりも若いプレイヤーに影響を受けた演奏をしているように思える。最高!

Jerry Garcia (Los Angeles, CA February 1974)
Jerry Garcia (guitar, vocals); David Nichtern (guitar); David Grisman (mandolin); John Kahn (bass); Ron Tutt (drums); Vassar Clements (violin)
ヴァッサー・クレメンツのバイオリンから入るんだけどこれがまた美しい。ドーグみたいだなあと思ったらグリスマンがマンドリンで参加していた。ものすごく好きな録音。

Antti Sarpila Swing Band with special guest Kari Sarpila (Helsinki 1993)
Antti Sarpila (Soprano Saxophone); Kari Sarpila (Tenor Saxophone); Christer Sandell (Piano); Pekka Mesimäki (Guitar); Pentti Mutikainen (Bass); Keith Hall (Drums)
フィンランドのスイング親子の録音。徐々に盛り上がるようなアンサンブルのアレンジがとってもかっこいい!2回上に上がるパターンのエンディングがとてもかっこいい!

Leroy Jones (New Orleans 2005)
Leroy Jones (trumpets); Craig Klein (trombones); Alonzo Bowens (tenor saxophone); Rob Espino (sousaphone); Kerry 'Fat Man' Hunter (snare drum); Cayetano 'Tanio' Hingle (bass drum)
ニューオーリンズのブラスバンド・スタイル。ニューオーリンズのスタイルだけじゃなくてほかのトラッド・ジャズのスタイルにも言えることなんだけど、やはりアンサンブルとソロの両方に志向しているのが聴いていて楽しい。ソロを重視するスタイルもやっぱりジャズと言えばというところがあるかもしれないけれど、私としては聴いていて楽しいのはこういった録音やアンサンブルとソロの両方に気を配ったスタイル。

The Two Man Gentlemen Band (Pasadena, CA 2014)
Andy Bean (Tenor Guitar, Vocals); Fuller Condon(Bass); Brian Kantor (Drums); Jeffrey Moran (Guitar)
残念ながら解散してしまったけど現在のスリム&スラムとも言えるようなジャイヴ・デュオ。アンディ・ビーンのテナー・ギターもすごくかっこいいし、フラー・コンドンのベースの絡み方もかっこいい。なにより歌がよい。ここではブライアン・カンターがドラムで、ジェフリー・モランがギターでサポートしている。本当に一度でいいからライブを見たかったバンド。

Martha Sierra & Yorgui Loeffler (Sabadell September 27 & 28, 2022)
Marta Sierra (violin); Yorgui Loeffler (solo guitar); Magnio Loeffler (rhythm guitar); David Gousset (bass)
バルセロナを代表するバイオリニストのマルタ・シエラとヨルギ・ロフラーのアルバムから。マヌーシュ・ジャズで演奏されたインディアナも美しい。

Félix Hunot & Björn Ingelstam Quintet (Paris 2022)
Félix Hunot (Guitar); Björn Ingelstam (Trumpet); David Lukacs (Clarinet); Raphaël Dever (Bass); Vincent Frade (Drums)
フランスで活躍しているミュージシャンたちが集まった録音。シカゴ・スタイルなんだけどギターがわりとモダンっぽい。

参考文献

Furia, Phillip & Lasser, Michael. (2006). America’s songs: The stories behind the songs of Broadway, Hollywood, and Tin Pan Alley. London: Taylor and Francis.


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