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Buddy Bolden’s Blues/Funky Butt

「バディー・ボールデンズ・ブルースBuddy Bolden’s Blues」は、バディー・ボールデンBuddy Boldenによって書かれたジャズ/ブルース・ナンバー。資料によってはジェリー・ロール・モートン Jelly Roll Mortonが書いたという記述もあるが、これについては後述するようにモートン自身が否定している。具体的にいつこの曲が書かれたのかは不明だけど、少なくとも最初の録音はモートンのバンド(Jelly-Roll Morton's New Orleans Jazzmen)によって1939年になされた。ニューオーリンズ・ジャズの大スタンダード。

もともとのタイトルは「ファンキー・バット Funky Butt」で、モートンは「アイ・ソート・アイ・ハード・バディー・ボールデン・セイ I Thought I Heard Buddy Bolden Say」として録音している。またI heardが現在完了形になっている場合もある。そんな感じでタイトルの揺れが非常に多い。

さて、なぜモートンが作曲者とされているのか、このことにかんする具体的な理由はわからなかったが、おそらく最初に録音したのがモートンで、その際のコピーライトの登録がモートンだったからだろう。ただし、この曲についてモートンは次のように述べている。

これは最も初期のブルースのひとつだ。間違いなく、最も初期の本物のブルースだ。本物のバレルハウス・ブルースの一つだ。作曲者はバディ・ボールデンで、私がこれまでに聴いた中で最もパワフルなトランペット奏者だった。この曲名は、ホンキートンクのをやっていた連中が名付けたんだ。ボールデンがこれを演奏している間、ボールデンのバンドは短いテーマを歌った。

(Morton, 1938, p. 51)

実際にさまざまなところで語られているけれど、「おしり butt」という表現からも明らかなようにこの曲は卑猥なことやタブーなどさまざまなことがこの曲のメロディに合わせて歌われた (Barker 2001)。現在、主に歌われているのは検閲がかかった歌詞となっている。

録音

Jelly Roll Morton (NYC December 16 1939)
Jelly Roll Morton (Piano, Vocal)
モートンの弾き語り。この前にバンドで”I Thought I Heard Buddy Bolden Say”として録音しているけれど、わたしはこちらの方が好み。しっとりと歌っている。

Viper Mad Trio (New Orleans, 2013)
Molly Reeves (vocals, guitar); Kellen Garcia (bass); Ryan Robertson (trumpet)
ニューオーリンズの若手/中堅代表のモリー・リーヴスのバンドの録音。リーヴスのギターとボーカルが非常にセクシー。この曲では一番聴いている録音。

Haruka Kikuchi (New Orleans October 3 2017)
Shoichi Yamada (Trombone); Tomohiko Miwa (Drums); David L. Harris (Trombone); Kyle A. Roussel (Piano); Richard Moten (Bass); Haruka Kikuchi (Slide Trombone)
菊池ハルカさんのジャパン・コネクション第四弾。今回は山田翔一さんと三輪朋彦が参加。3人のトロンボーンがとんでもなくかっこいい。カイル・ラッセルのピアノをここではじめて知ったんだけどこれも素敵。

Derrick Shezbie (New Orleans 2019)
Derrick Shezbie (Trumpet); Louis Ford (Clarinet); Revert Andrews (Trombone); Carl LeBlanc (Guitar); Jerry Anderson (Drums); Chris Severin (Bass)
ニューオーリンズのトランペット奏者のデリック・シェズビーの録音。バディー・ボールデンのトリビュート盤に収録されている。ウィントン・マルサリスの録音よりもだいぶレイドバックしていて私としてはこちらの方が好み。

Don Vapie & Jazz Creole (London 2019)
Don Vappie (Vocals, Banjo); Clarinet (David Horniblow); Sebastien Girardot (Double Bass); Dave Kelbie (Guitar);
ドン・ヴァッピーがロンドンで活躍するミュージシャンと一緒に録音した一枚から。デイヴ・ケルビーとセバスチャン・ジラルドットの作るリズムが本当に素敵でそれに絡むヴァッピーとホーニブロウがとんでもない。

参考文献

Morton, Jelly Roll. (1938). Transcript of the 1938 Library of Congress Recordings of Jelly Roll Morton (Alan Romax Interviewed). Washington D.C.: Library of Congress.


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