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All God's Chillun Got Rhythm

「オール・ゴッズ・チラン・ゴット・リズム/すべて神の子にはリズムがある All God's Chillun Got Rhythm」は、1937年、 ガス・カーン(Gus Kahn)作詞、ブロニスラウ・ケイパー(Bronislau Kaper)とウォルター・ジャーマン(Walter Jurmann)が作詞したスタンダード。1937年のマルクス兄弟主演、サム・ウッド監督の映画『マルクス一番乗りA Day at the Races』が初出。「すべて神の子にはリズムがある」という曲。こうした「リズム Rhythm」の使い方はこの時代に特徴的でさしあたり「ジャズ」や「スイング」、あるいは「音楽」と言い換えてよいと思う。

黒人霊歌からのインスパイア

タイトルは、黒人霊歌の「すべて神の子には翼がある All God's Chillun Got Wings」から取られたもの(神が畑で働く奴隷たちに天国での報酬を約束する曲)。また、この”Chillun”は“Children”の黒人英語の発音を文字にしたもの。ここにも英語の発音とスペリングの不一致を見ることができる。

この曲がそういった黒人奴隷に対して直接的に歌われているのかはさらに分析する必要があると思うんだけど、さしあたり「神の子らにはリズムがあり、神の子らにはスウィングがある。金もなければ靴もない。でも神の子どもたちはみんなリズムを持っているんだ」と歌っている。暗い世の中でも、とってもポジティブな歌詞で明るい曲だ。

また、元になった黒人霊歌の「すべて神の子には翼がある All God's Chillun Got Wings」はユージーン・オニール(Eugene O'Neill)の1924年の戯曲に着想をもたらした。さらに先述した通り、このエントリーで扱っている「すべて神の子にはリズムがある All God's Chillun Got Rhythm」は、『マルクス一番乗りA Day at the Races』のために作曲された曲。『マルクス一番乗り』はイギリスのロック・バンド、クイーン(Queen)の名盤の一つ『華麗なるレース A Day at the Races』に着想をもたらした。具体的に「すべて神の子にはリズムがある」がクイーンに影響を与えたかわからないけれど不思議な縁を感じる。

マルクス兄弟の『マルクス兄弟一番乗り』のポスター(左)。ユージーン・オニールによる『すべて神の子には翼がある All God's Chillun Got Wings』のパンフレットの表紙(右上)。クイーンの『華麗なるレース』のジャケット(左下)。以前からフレディ・マーキュリーのフェイクの仕方がキャブ・キャロウェイに似ている時があるように思っている。意識しているのだろうか?いつか調べてみたい。

録音

さまざまな録音があって絞れないけれどさしあたり好きなのは以下の録音。書き出していないけれど、フレッチャー・ヘンダーソン楽団の録音は外せない。

Stephane Grappelli (NY October 9 1995)
Stéphane Grappelli (Violin); Bucky Pizzarelli (Guitar); Jon Burr (Bass)
やっぱりライブの一曲目があう名曲ですな。そして名演。バッキー・ピザレリとジョン・バーの最高のリズムに支えられた、永遠のバイオリン・ヒーローの熱い演奏。ちなみにオーラ・クヴェルンベルグとジミー・ローゼンバーグの演奏は、このグラッペリの録音を元にしている。

Dick Meldonian Trio (NY March 13 1983)
Dick Meldonian (Soprano Sax); Marty Grosz (Guitar and Vocal); Pete Compo (Bass)
マーティ・グロスのギターが出すリズムがめちゃくちゃ気持ちのいい一曲。素晴らしすぎてハッピーになります。

Dick Hyman (NY 1996)
DIck Hyman (Piano)
巨匠のソロ・ピアノ。この人の演奏はほんとうに素敵ですね。スイング!

Mary Lou Willams (New York, October 7 1946)
Mary Lou Willams (Piano); June Rotenberg (bass); Bridget O'Flynn (Drum)
アンディ・カーク楽団でアレンジとピアノを担当していたスーパー・ピアニストのピアノ・トリオでの録音。ちょっとビバップっぽい。

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