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プロに聞く、次世代の高卒のキャリアづくり(第1回 キャリア教育研究家 橋本賢二氏) 後編

※ 本稿は、一般社団法人スクール・トゥ・ワークの2019年2月6日付ブログ記事「プロに聞く、次世代の高卒のキャリアづくり(第1回 キャリア教育研究家 橋本賢二氏) 後編」の転載です。

世間では注目されてこなかった非大卒人材、特に高卒就職者のキャリアづくり。わたしたちスクール・トゥ・ワークでは、データをもとに各分野の有識者に意見を伺います。

今回は、現役官僚の立場でありながら若者のキャリアについて研究や講演活動をされているキャリア教育研究家、RIETIコンサルティングフェローの橋本賢二さんへご意見を伺います。

前回 プロに聞く、次世代の高卒のキャリアづくり(第1回 キャリア教育研究家 橋本賢二氏) 前編

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古屋:
就活は、いろいろ言われてはいますが、社会で自分を見つめ直したり適性を考えたり自分がどう社会に役立つか考える機会にもなっていると言われますものね。高校生はそれすらする時間がないということですね。

橋本:
キャリア教育=進路指導という考え方にとどまっており、高校までの先生のキャリア教育は「進路の指導」の域を超えられていない部分がいまだにあります。さらに言えば、社会全体として高校生までの「子ども」に対して、キャリアに対する意識づけをやって意味があるのか、と思ってしまっている状況があると思っています。

例えば、地元に就職した場合は、地元での働き方やキャリアづくりにコミットしていかないといけないのに、それもできていないということですね。

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古屋:
また、高卒就職者を採用している業種に差がありすぎます。情報通信業が圧倒的に少ないですね。

橋本:
20世紀のシステムをそのまま支えてしまっていますね。20世紀の産業構造が、そのままこの数字となって残っているのだと思います。

職種による違いも大きいでしょう。小売業ではマネージャー系と現場という切り口でみると圧倒的に労働集約の現場系に高卒人材が就職していると思います。

また、地元では、大企業の工場で働くって一番かっこいい就職先なんですよね。

古屋:
離職率もそうですが、高卒就職者を社会としてあまりにももったいない活かし方をしているのをどうにかしないといけないと思うのですよね。

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同時に高卒が中小企業に多く就職する現状って、本当に若者の力を引き出せてるのかというのを疑問に感じるんですよね。

橋本:
昭和からこれまで、大学を卒業して大企業に就職するというキャリアパスがあまりにも一般的になりすぎて、個人側も企業側も固定観念になりつつありますよね。大企業の採用ですと、「大卒じゃないといけない」「〇〇大卒以上」というような大卒信仰がありますよね。

ただ職種によっては、本来は大卒である必要はないんですよね。本当にスキルとしての大卒に期待があるのは、一部の学生さんだけ。
そして、中小企業は逆に「大卒を取りたくない」という負の分断があると思います。

古屋:
中小企業は大卒者や大学院卒者をとろうとはしているけれど、採用して「はて?」となっているお話をよく聞きます。使いきれていない。そこをうまく支援してあげる機能が必要ですよね。

橋本:
面白い話がありまして、学習意欲が旺盛な中小企業の二代目、三代目には経営系の社会人大学院で学んでいる人が多くいます。そして、そこで学んだ手法を地元で使うと成功するそうです。それくらい、都市と地方の知識差はありますから、地方の中小企業に都市部の企業が行っている採用ノウハウや定着支援は有効に機能すると思います。

古屋:
面白いですね。また、入職経路が固定化されていることも大きな問題だと思っています。高卒で最優秀の人々はすぐGoogleとかに就職して育っていくようなルートがあったらいいですよね。どんどんそういうルートでキャリアを作ればいいと思う。

橋本:
そうなった時は、自分の進路を絞り混む作業が必要ですよね。逆に選択肢が少なくなったりしませんか?

古屋:
初職が、「何を学ぶべきか視野を広げる」機会にもなると思うんですよね。Googleいったら自分は何するのかを調べていかないといけないじゃないですか。本当に自分が社会人としてやっていくために、大学に進学して何を学ばないのかいけないのか、考えるきっかけになると思うんです。

橋本:
真の学び直しですね。それはあるかもしれないですね。

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古屋:
先ほどのお話でもありましたが、大きな規模の事業所に限定すると、離職率は高卒と大卒で逆転し、大卒の方が高くなります。「キャリア観」ができてないから離職率が高いのではないのですよね。

橋本:
これは、つまりは企業側が人材を育成できていない、ということに他ならないですよね。継続させるのが人事の仕事であって、それが浸透しないと採用コストも人材育成コストも無駄になります。企業側が人材育成できない現状があって、今の状況が当たり前ではないという認識を持たないといけないですよね。これが今のこの国の現状ですよね。

また、離職率の数字の理想水準は人材戦略によって変わってきます。極論すれば、「人材を使い捨てる」みたいな企業は離職率多くてもいいという考え方で採用するかもしれないですし。選ばれないでしょうけど。

古屋:
日本の企業の採用は最初の数年は「スクール性」があると思っています。最初の数年は学校のようなものだから、どんな仕事をするのかと具体的にわかって入る必要がない。

橋本:
採用がアバウトすぎる現状はおおいにあります。それはお互いにとってもよくないですよね。

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古屋:
最後ですが高卒と大卒の初任給の違いについては良く言われています。経済合理性の観点からは、大卒プレミアといいますか、これが「学歴の価値」になるわけです。

橋本:
実は、高卒と大卒の生涯賃金の差は企業規模の就職先の差なのではないか?という仮説をもって統計を調べてみましたが、実際にはこの差を埋めるほどではありませんでしたね。やはりプレミアムはありそうです。

古屋:
ポテンシャルを計測するのは難しいですから学歴で一律になっているのですね。若者がどんどん減っていくなかで、若い世代のポテンシャルを最大限発揮させるための打ち手はまだまだあると思っています。

橋本さん、本日はありがとうございました。



一般社団法人スクール・トゥ・ワーク
 一般社団法人スクール・トゥ・ワークでは、学生及び早活人材(非大卒人材)に対するキャリア教育事業等を行っています。
 私たちは、キャリアを選択する力の育成を通じて、未来を生きる若者全てが安心・納得して働き、その意欲や能力を十分に発揮できる社会の実現を目指します。

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