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安心感を大事にしながら仲間たちと学び合い、自信をつけていく授業を目指して

約5年にわたり生徒たちが主体的に学び合うグループ学習を推し進めてきた愛知県岡崎市立竜南中学校。竜南中学校では、授業を支えるツールとしてスクールタクトを活用しています。
チーム学習を取り入れた授業風景、先生方のインタビューは以下の動画でもご覧いただけます。


校長の平任代先生に学校全体の方向性についてうかがい、音楽科の中山美奈子先生と国語科の岩川皓司先生には授業の様子やインタビューを通じ、具体的な実践やその背景にある思いについてお聞きしました。新たな指導法によって生じつつある生徒たちの変化は、大変興味深いものでした。


教員の指導力の向上にもつなげていきたい


岡崎市立竜南中学校は2019年からグループ学習での学び合いを研究テーマとして取り組んできました。そのため、岡崎市が推進するチーム学習に対しては当初から前向きに取り組む先生方が多かったと校長の平任代先生は語ります。

「チーム学習に対しては違和感なく取り組んでいる先生方が多いです。現在は、特に精神的に生徒たちが安定して、その場にいられることを大切にしたいと考えています。生徒にはそれぞれ特性があります。どのような状態が心休まるかもさまざまでしょう。私たち教員はそうした生徒理解の意識を持って学習を促していく必要があると考えています」

さらに、チーム学習に加えて、スクールタクトを使うことでチーム内だけでなく、クラス全体で学びをシェアすることも可能になったと平先生はいいます。

「生徒たちはさまざまな意見を持っています。例えば、国語であれば『こんな解釈ができる』『こうも読めるのでは?』といった多様な考えがあります。スクールタクトであれば、生徒たちが書き込んでいる内容を確認し、『この子の意見はより授業を深めてくれるな』『いつも国語が苦手なあの子が頑張って書いているな』といったことを見て取り、全体にシェアすることができます。これは教員の指導の向上にもつながっていくことでしょう」

また、スクールタクトは個別最適化学習にも親和性が高いと感じているといいます。

「これまでは、一斉授業で30人が問題を解いているような時間に、個々の進捗はわかりませんでした。しかし、スクールタクトを用いれば、一人ひとりの学びの過程を教員が見て把握することができます。

『ここで手が止まっている子が多いから声かけをしよう』と臨機応変に対応したり、つまずくポイントを分析したりすることも可能でしょう。さらに進捗に合わせて課題を配布するといったこともできるので、個別最適化の考え方とも親和性が高いツールだと感じています。

ただ、スクールタクトを使えば全ての授業がうまくいくというわけではなく、教科や授業内容によって使い分けていくことも求められていると考えています」

最後に、平先生は「生徒にはどんなにデジタルが進歩したとしても、タブレットの向こう側にはあくまで人がいるということを理解してほしい」と語りました。ICTは便利なツールとして活用しながらも、大切なことは、あくまで人と人とのつながりである。そこには、そんな平先生の強い思いが込められていました。

岡崎市立竜南中学校 校長 平任代先生

安心感を生みながら個々の考えを表現する力を育む


竜南中学校の音楽科の中山美奈子先生は、全ての生徒の意見を取り上げ、深めていけるような授業を模索し続けていました。チーム学習はその一つで、生徒相互のコミュニケーションを大事にしながら学び合う時間を授業の中に設けているといいます。

また、中山先生は生徒が自身の考えを表現するには安心感が土台になると考えています。そして、スクールタクトはそれを下支えするツールとなっていると語ります。

「スクールタクトの共同閲覧モードで相互に学び合える環境を作ることで、『私の考えが受け入れられている』という安心感が生まれているようです。この心理的安全性があることで、他の生徒に自分の意見をいうことができたり、他の子のアイデアを取り入れて深めたりすることができるようになった様子をよく見かけます。

実際に生徒にスクールタクトの使い勝手についてヒアリングをしました。すると、『これは安心できる』という返事が返ってきたので、現在ではまずは1人で考えた後に、共同閲覧モードにするという授業の流れを大事にしています」

中山先生は、生徒が他の生徒の考えに触れられる環境が整ったことで、自分の考えが整理され、記述へのハードルが低くなったことを感じているといいます。

「これまでは何を書いていいかわからず手が止まってしまう生徒が一定数いました。中には、思考がまとまらなかったり表現する言葉が出てこなかったりする子も少なくありません。

そうした子たちは、共同閲覧モードでクラスメイトの記述を見ることで『私が思っていることはこういうこと!』というコメントに出合い、それにアレンジを加えて書き始めることができるようになっています。さらに、いろいろな生徒の語彙を自分のものにして、それが積み重なり、表現力を高めていける可能性も感じています」

中山先生は生徒たちが自分の意見をアウトプットできる機会を増やすべく、スクールタクトのコメント機能も活用しています。

「授業の中で、クラスメイトの意見や回答を見てコメントする時間を設けることがあります。それは、『何がいいと思ったのか』を具体的に表現する機会を増やしたいと思ったからです。言葉で自分の思いを具現化することを大切にしてほしいと思っています」

生徒がコメントを書き込めているかどうかは、スクールタクトの発言マップを見ながら随時確認をしています。

スクールタクトの発言マップのイメージ

「発言マップを見ていると、記述できていない子がわかります。手が止まっている生徒のところに行って、『印象に残った意見はあった? なんて書くと伝わるかな?』など思考を促す声かけを行いながら、記述をサポートします。スクールタクトには、生徒の学習進捗をつぶさに把握できる利点を感じています」

現在は、欠席している子もスクールタクトに入り、コメントを書けるような環境も整えているといいます。顔は合わせていなくても生徒のことを理解できるツールとして重要であると、中山先生は語りました。

中山美奈子先生

中山美奈子先生 2年生音楽科の授業

(スクールタクトを用いた活動を太字で記載)

【導入5分】
■教員
学習課題「校歌に込められた思いを読み取り、表現の工夫を考えよう」を板書
校歌の伴奏後、リズムや強弱などの符号からスクールタクトで配布された楽譜に気づきを表現してみようと伝える

【展開① 15分】
■生徒
教科書の音符や休符の一覧ページを参考にしながら、スクールタクト上の校歌の楽譜にペンマーカーや矢印を使ってマークし、何を表現しているかを書き入れる
「最初は弱くスタートして抑揚をつけて盛り上がるようにしている」
「ここから速度が上がっていて、竜南中学校の元気な雰囲気が感じられる」など
■教員
・スクールタクトの画面を見ながら、「○○さんがいいことを書いているから共有するね」と黒板に書き出すなど個々の学びをクラス全体にシェアしていく

【展開② 15分】
■教員
・「共同閲覧モードに切り替えるので、他の子の意見を見て、コメントを入れていこう」と伝える

■生徒
他の生徒の意見にコメントを入れていく
「転調をきっかけに一気に速度が速まっていることには気づかなかった」
「この歌詞の部分を強調して歌ってほしいという意図に気づいたことはすごいと思う」など
■教員
・「チームになって気づきをシェアしていこう」と声をかける
■生徒
・気づきがあったコメントについて、理由とともに、チーム内で共有する

【展開③ 10分】
■教員
学習課題に立ち返り、「校歌を研究してわかったことをまとめよう」と伝える
■生徒
スクールタクトにまとめを記入していく
■教員
・生徒の席の間を見て回り、個別に指導しながら、「歌詞と関連付けて分析できている人がいたよ!」と個々の学びを全体にシェアしていく

【まとめ 5分】
■教員
「最後に校歌の研究内容を意識して歌ってみよう」と伝える
■生徒
・起立して校歌合唱


匿名機能の利用でいっそう多様な考えの生徒が照らされるようになる


竜南中学校の国語科の岩川皓司先生は、「言葉で伝える力や相手の気持ちを察するといった国語的な判断力を培っていくこと」を目指しています。そうした力をつけるために、新たなツールとしてスクールタクトを用いながら、これまでの学習方法と融合させながら効果を上げていく道を模索しています。

「国語なのでノートに記述するような学習も大切だと思います。これまであった方法を否定するわけではなく、時代が変わっていく中で新たな指導へアップデートしていく部分も必要ではないかと考えているのです。これまでの授業の中で、書くことに時間を取られて心が折れてしまう子もいますし、『ここがわかりません』と言えないまま授業が終わってしまうような子もいました。

スクールタクトの共同閲覧モードを使えば、悩んで手が止まっている子もクラスメイトの真似をして記述することができます。『この授業には合うのでは』と活用を試し、生徒と一緒に授業を作り上げていく姿勢でいると、結果的によい学びにつながっています。時には、生徒の方から『こうやって使う方法もあるのでは?』と意見をもらうこともあります」

岩川先生はスクールタクトの良さは全ての生徒にスポットライトをあてられる可能性があることだといいます。

「スクールタクトによって脚光を浴びてこなかった子や目立たない子をきちんと見られるようになったと思っています。実は私も学生時代は人見知りで、前に立って話すことはすごく苦手なタイプでした。しかし、手を挙げて発表しなくても、真面目に授業を受けたり面白い発想を持っていたりする子はたくさんいます。スクールタクトの共同閲覧モードを使えば、これまで前に立ってこなかった子たちに光をあてることができるようになると感じています」

さらに、スクールタクトの匿名機能は岩川先生の思いをいっそう後押しする仕組みだと感じたと続けます。

「国語が得意な子の意見に生徒たちの考えが流れてしまう傾向を少なからず感じていました。しかし、匿名機能にすれば、誰の意見や回答なのかがわかりません。つまり、生徒たちはバイアスがない状態で『いいね』を押したり参考にしたりすることができます。実際に、匿名機能を使ったこところ、これまでとは異なる子が最も多く『いいね』数を獲得していました。公表をする時には、『これ、私です!』と名乗り出ていましたから、よっぽどうれしかったんでしょうね。誇らしげですごくいい表情をしていました。その生徒にとって自信を持つきっかけになったのではないかと思います」

岩川先生は、スクールタクトを活用することで「生徒たちが書いた意見に対して、リアルタイムにフィードバックすることができる」というメリットも感じているといいます。一方で、「たくさんのメリットは享受しながらも、デジタルツールはあくまで道具。自分で使いこなせるようになってほしい」とも語ります。国語の授業の中で、生徒たちが未来で生きる力をつけていくために岩川先生の挑戦は続きます。

岩川皓司先生

岩川皓司先生 1年生国語科(故事成語)の授業

(スクールタクトを用いた活動を太字で記載)

【導入5分】
■教員
教科書の「今に生きる言葉」を全員そろって音読→一人で音読→チームで音読するよう伝える

【展開① 15分】
■教員
「故事成語を使って体験談を書こう」と学習課題を板書
「前回は『矛盾』を使って体験談を書いてもらいました。「(スクールタクトの)匿名機能を使っていたので誰が書いたかはわかりませんが、こんな分布になっています」と発言マップと「いいね」数の分布図を見せる
■生徒A
「それ、私です!」と手を挙げる。他の生徒からは「えー!」「すごい!」と声があがる
■教員
・「では、匿名機能を解除してみよう」と実名にし、「せっかくなのでその時のことを本人に説明してもらおうか」と伝える

■生徒A
・説明する

【展開② 10分】
■教員
チーム学習で、スクールタクトに、選んだ故事成語・由来・意味・例文(体験談)を記入するよう伝える
■生徒
・最初は個人で取り組み、行き詰まったら話し合う

【展開③ 5分】
■教員
・「(匿名機能を使いながら)共同閲覧モードにするので自分と同じ故事成語を選んでいる子のシートを参考にしてみて」と伝える

■生徒
「いいね」を押しながら、他の生徒の回答を見て活かしていく
■教員
生徒の席の間を見て回り、個別に指導しながら、各生徒に「もっと具体的に書ける?」「おもしろい故事成語を選んだね」と声をかけていく

【展開④ 5分】
■教員
「共同閲覧モードを切ったので、自分の体験談を仕上げることに集中しよう」と伝える

【展開⑤ 15分】
■教員
・(匿名機能を使いながら)共同閲覧モードを再びオンにし、チームで話し合い、「これはいい!」と思った人にコメントを入れるよう伝える

■生徒
・チームで印象に残った体験談について話し合い、コメントを入れていく
■教員
「言葉を尽くしてほめることも国語力アップにつながるよ」といった声をかける

【まとめ 5分】
■教員
コメント数を一番もらった人は誰かを発表(生徒は名乗り出たかったら名乗り出る)


安心して自分を表現できる授業を目指して


今回は、心理的安全性が担保されることで、他の生徒に自分の意見を伝え、さらに他の生徒のアイデアを取り入れて考えを深めていく授業を目指す、岡崎市立竜南中学校をご紹介しました。

本シリーズ最終回となる次回は、未来社会を生き抜く力の育成のために、子供たち主体の授業の実現を目指す、岡崎市立広幡小学校の取り組みをご紹介します。



それではまた。
学びとマナビが、ひびき合う。
スクールタクトでした。


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