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国立小児病院看護師が考える予防における家族への教育の重要性

カンボジアでSchool Health Projectを行っているわたしたちですが、カンボジアのチームは学校保健の専門家ではありません。日本から専門家が来カンできない状況下で、自分たちにできることを模索中。そんななかで、ひとつ、カンボジア駐在のスタッフだからできることを実践中。それは、情報収集と勉強。どちらも時間がかかるものなので、いつやるのかと言われたら、今でしょう!?

国立小児病院を訪問しました

カンボジアでは唯一の国立の小児専門病院です。ほか、国内には4つの州立小児病院があります。人口の30%以上が14歳以下(2018年調べ)のカンボジアでは、小児病院の需要もかなりあるので、待合室は順番待ちの親子でいっぱいでした。
今回の訪問の目的は、カンボジアの子どもの健康ケアについて、看護師さんたちのお考えを聞きたいのと、これから進めていく学校保健指導教官育成においてのアドバイスをいただきたいという2点でした。
幹線道路のひとつロシア通り沿いにかなり広い敷地を構えるきれいな病院で、どこに何があるのかちょっと迷うくらい。手術棟は日本の大使館とNGOの支援、そのほか、KOICAの支援でも立派な建物が建てられていました。

国立小児病院の医師や看護師のミッション

医師や看護師は、患者を診て治療のための処置やケアをするという役割は当たり前ですが、この病院にはもうひとつ重要な役割がありました。医学生や看護学生に講師として教えるということ。国立や私立の医大で教鞭をとっておられるスタッフが複数いました。また、医大の実習等でこの病院を使用することも各大学のカリキュラムに含まれているそうです。
病院でもあり、教育機関でもある、そんなミッションを担った病院なんですね。

予防の大切さと家族への教育

看護師さんが日ごろ感じていることのなかで、ここに来なくても済むような予防ができたのに、ということがあるそうです。感染症がその一つです。身の回りを衛生にすること、それだけで防げる病気です。
また、その年齢に達したのにまだしゃべらない、ふつうの子どもができることができないといったことでカウンセリングを受けにくる親。その多くが自分で気づいたのではなく、周りの人に指摘されて、病院に来てみた、という人がほとんどだそうです。
早く気づけば早い対処ができる病気も多々あります。子どもの病気は親が気づいてあげないと重症になるまで放置されることもあり、親に病気についての知識をつけさせることも、カンボジアの小児医療の課題のひとつだそうです。家族への教育は、ひとつの病院の取り組みだけでできることではなく、カンボジア全体で取り組むべき課題のように感じました。

学校保健の取り組みにむけて

学齢期の子どもたちと長時間接しているのは、親以外には学校の先生です。親への教育も必要だけど、学校の先生が健康や保健について正しい知識を身につけることの重要性を、看護師さんたちも述べておられました。
まさに、わたしたちがこれからやろうとしている「カンボジアで保健室の先生を育成する」ことにリンクしており、プロジェクトの必要性をあらためて実感しました。
アドバイスをくださった看護師さんのひとりは、タイの大学で看護学のマスターを取得してきた方ですが、タイで学んだイエローカードの導入をカンボジアでも進めるべきと考えていました。イエローカードは、就学前の子どもたちの健康台帳で、日本の母子手帳のようなものです。年齢に応じた定期的な健診を受け、それを記録していくことで、学齢期に達した子どもたちが、どのような身体的特徴や既往症を持っているのか、学校の先生が把握しやすくなるからです。

コロナウィルスの病院への影響と懸念

最後に、今回の新型肺炎騒ぎで、国立小児病院に対しての影響を聞いてみました。やはり、人々の外出自粛に伴い、外来の患者が減ったそうです。そこで生じる懸念もあります。カンボジアでは、処方箋がなくても薬局で薬が簡単に処方されます。なので、病院に行けないとき、近所の薬局で薬を買い、それで対処するケースが多々あります。むしろそちらがまだメジャーです。
この薬購入の判断は、個人の知識にゆだねられるため、適切な薬を適切な量採っているかというところは極めてグレー。
結局ここも、国民への健康についての教育というところにつながっていくようです。

やはり、健康と教育は切っても切れないものであるということを強く再認識して、暑い盛りの正午前、病院を後にしました。
お話を聞かせてくださいました、病院長ならびに看護師のみなさま、ありがとうございました。


(プロジェクトコーディネーター YM)

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