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ものづくり企業としてのサステナビリティ戦略を探る 第1回 - シュナイダーにとって「サステナビリティ」とは?

この度、シュナイダーエレクトリックは米TIME誌の「世界で最もサステナブルな企業2024」で第1位に選出されました。このランキング、上位は銀行やテクノロジー、コンサルティングなど、物理的製品を作らない企業が多数。そんな中、ハードウェアもたくさん取り扱うシュナイダーがトップの評価をいただけたのは非常に喜ばしいことです。今でこそ無形のソリューションもたくさん抱えているシュナイダーですが、物理的な製品の生産・物流拠点が全世界に200箇所以上存在します。ものづくりの会社だからこそのサステナビリティ実現への取り組みについて、最近シュナイダーに入社し、商品企画部で日々製品に触れている水野さんが、先輩社員に取材しながらその秘密を探ります。第1回はちょっと壮大な企業戦略の話から。

  • 取材者:水野さん 2024年4月入社 
    インダストリアルオートメーション事業部 商品企画部で現在修行中

  • 今回取材した先輩:蛭田さん CS&Q本部長
    本部長でありながら、ジャパンサステナビリティテリトリーリーダーを兼務。日本でシュナイダーのサステナビリティに一番詳しい人。

Japan Sustainability Territory Leader を務める蛭田 

シュナイダーエレクトリックは、電力を効率よく使うためのソリューション「エネルギーマネジメント」と制御・計装のソリューション「産業オートメーション」の二つを軸にビジネスを展開している会社です。その基盤には持続可能性を目指す「サステナビリティ」があり、事業領域をまたいで展開しています。これまでにもサステナブルな取り組みが評価されてきたシュナイダーが、何を目指しどういう考え方を持っているのか、どんな結果を出してどう評価されてきたのか、インタビューを元にレポートしていきます。


シュナイダーにとってのサステナビリティ

シュナイダーエレクトリックは、あらゆる人がエネルギーや資源を最大限活用することを可能にし、進歩と持続可能性を同時に実現することによってインパクトをもたらすことを目指しています。
これを「Life is On」と表現し、この実現のために「持続可能性と効率性の信頼のおけるパートナーになること」をミッションとしています。

効率性を目指す会社は多くありますが、同時にサステナビリティも実現させる、これがシュナイダーの考え方です。サステナビリティをCSR(企業の社会的責任:法令順守や社会的貢献的活動など本業の周りにある活動)ではなく、CSV(共有価値の創造:社会価値と経済価値を同時に実現するもの)として、ビジネスそのものであると捉えて利益としています。
サステナビリティを謳う会社は世界中にありますが、自分たちの事業にサステナビリティをつなげている性質が強く、本業としているところは少ないと思います。(個人的な話ですが、私水野はシュナイダーのサステナビリティを利益とするビジネスの仕方に興味を持ち、成立させていることにワクワクしてシュナイダーに応募しました。)

シュナイダーが考えるのは右側のCSV

CSRとCSVの根本的な違いと課題

水野:上図を見ると、社会価値や社会課題はCSVとして扱った方が効率がよく、会社として理想的な姿に見えるのに、実現できていない企業が多いように感じます。シュナイダーではなぜCSV経営が実現できたのでしょうか。

蛭田:シュナイダーのCSVは利益ではなく社会への還元を重視したビジネスを展開させる意思から始まりました。この成功は、「社会に価値を提供する会社になろう」とビジネスを変革させた経営陣の大胆なリーダーシップと、会社としてのアクションの成果だと思います。
CSRにとどまる企業は発想が逆で、そこが課題です。CSVは「社会に価値を提供する会社になる」ために事業を考え変革していきますが、CSRだと「自分たちの事業で得られた利益を社会的価値に”還元”する」という考え方で事業と社会への価値が分離しており、会社のコアであるビジネスを変える方向には動きません。どうすれば自社の事業で社会課題の解決ができるかを考えるべきなんですが、社会課題への貢献を本業とは別の付加価値として扱ってしまう限り、ビジネスと社会課題の解決がリンクしないんですよね。


現在進行形で取り組む目標
SSI = シュナイダー サステナビリティインパクト

シュナイダーはサステナビリティという社会価値実現のために、2005年から具体的なアクションを始めています。まだ非財務情報開示という考え方がなかった時代から自社独自のKPIをセットし、その達成度を公開し続けてきました。(常に8割以上のKPI達成を継続)
最新のものとして、2021-2025年のゴールとして国連のSDGsに沿う形で設定された、SSI(Schneider Sustainability Impact)というKPI指標があり、グローバルでのゴール11個と、ローカルで定めた1個のゴールに対し、様々な具体アクションをとっています。

水野:2005年にサステナビリティへの具体アクションを始めてから約20年です。今取り組んでいる目標(KPI)について、環境やビジネス面でインパクトが大きなものを教えてください。

蛭田:直近のサステナビリティインパクトの中では、「ゴール1: 環境に配慮した製品からの収益を80%に成長させる」と、「ゴール2: 8億トン分の顧客のCO2排出削減・節減に貢献する」の2つが、環境的・ビジネス的にインパクトが大きいと思います。特に2は面白い。8億トン分のCO2排出削減・節減というのは環境的に大きなインパクトがあります。ただし、お客様のもとでの削減なので、うちの製品が売れなければこのKPIを達成することは困難になります。製品としても環境負荷を低減する必要があり、それがゴール1の「環境に配慮した製品からの収益を80%に成長させる」につながります。

2021-2025年のスパンで取り組むシュナイダーサステナビリティインパクトのゴール一覧

後から調べたところ、シュナイダーは2018-2020年で、お客様の1億34万トン分のCO2排出削減に貢献していました。数字があまりに大きいので圧倒されてしまいますが、直近は更に5年かけて8億トンです。また、環境に配慮した製品の収益も2020年の時点で76%になっています。
明確に数字で示すとそのインパクトが比較しやすく、過去に設定したゴールから着実に進歩し、更に大きな目標を2025年に向けて設定していることがわかります。


シュナイダーが客観的に受けている評価

シュナイダーは、2021年にはダボス会議にてコーポレートナイツ社が発表するランキング「最も持続可能な100社」の1位に選出されました。同ランキングでは13年連続でトップ100にランクインしており、現在もトップ10を維持。今年は米TIME誌のランキングでも「世界で最もサステナブルな企業2024」の第1位に選出されました。フランスのecovadisの評価もプラチナを獲得しており、評価対象100,000社の上位1%に当たると言われています。

シュナイダーが得ている様々な外部評価

水野:多数の評価を受けていますが、ポイントはどこにあると考えますか?

蛭田:これまでの私たちのオファー、ポートフォリオがサステナビリティを推進するものであること、そして自社の活動をサステナビリティに結び付けた独自のKPIであるSSIの力が大きいと思います。シュナイダーのサステナビリティへの取り組みは、かなり進んでいると見てもらえることも多く、日本の企業でその戦略や手法を教えてほしいとレクチャーを頼まれることもあります。

自分の会社の自慢ばかり書いてきましたが、これらは国際的な評価で、客観的事実に基づいて評価されているものばかりです。中には、日本企業も関わりの深いものもあります。例えば、元々イギリスで設立され、気候・水・森の3分野で環境負荷に関する情報開示を促すNGO、CDP(Carbon Disclosure Project)の活動には、約2,000社の日本企業が情報開示を行っており、多くの日本企業がシュナイダーと同じように、各分野でのAリスト入りを果たしています。


お客様に提供するサステナビリティ

私自身、入社以来約70件ほど国内のお客様を訪問しましたが、サステナビリティを気にかけているのは国際的にビジネスを展開する企業の経営陣やCSR職の方ばかりでした。大企業でも現場の人の関心はまだまだ低いと感じます。この現実はある程度想定していましたが、サステナビリティについて世界で高い評価を得ていることは私が入社を決めた理由の一つだったため、ギャップを感じる部分でもあり、シュナイダーが日本にどうフィットするのか毎日考えています。コスト優先でサステナビリティが浸透しない背景、そこにシュナイダーが提供できる価値についても聞きました。

製造業ではサステナビリティの優先順位が下がりがち?

水野:お客さんを訪問すると、日本の製造業ではサステナビリティよりもコスト削減が優先順位の高いテーマになっていると感じます。

蛭田:確かにそういった側面はありそうです。会社がCSR的な考え方に留まる限り、サステナビリティは本業とは別の場所に存在し、二の次であり続けます。ビジネスが苦しくなれば優先順位が下がってしまうわけですよね。
ただそこには日本固有の難しさもあります。日本は、海外と比べるとどうしても国土的な条件で再エネ普及のハードルが高い。人口が多く、経済圏として成熟していることも、クイックに身動きがとりにくい理由になっているかもしれません。ヨーロッパ諸国は、国あたりの人口が少ない分、市民と政府や企業の距離が比較的近くて、企業が市民の要求に応えられなければ存続できなかったり、政府にも市民が要望を伝えて反映させることがしやすい面があります。その反面日本は人口も多く社会のコンパクトさがないので、大きな転換が起こりにくい構造。企業の経営者側や製造業という産業だけの問題としてではなく、日本社会全体でどうすればアクションを加速できるか考えるべきですね。

水野:なるほど。現時点ではまだサステナビリティへの関心が低いお客様にも、シュナイダーが提供できるソリューションはあるでしょうか?

蛭田:既に環境に配慮した製品の売り上げは75%を超えているので、シュナイダー製品を選んでおいてもらうと、環境への負荷という観点で安心だと思っていただいて間違いありません。また、企業戦略としてサステナビリティにどうにか取り組みたいと考えている方には、サステナビリティ戦略についてのコンサルティングも提供しており、排出量の見える化ツールや再エネ電源の調達など脱炭素化支援も行っています。

シュナイダーならではのユニークさはどこに?

水野:こうしたソリューションを含め、シュナイダーを選ぶことによるメリットやユニークさはどこにありますか?

蛭田:私たち自身がメーカーであるというところがまさに独自性です。コンサルタントとして戦略やロードマップを策定するだけでなく、その後の具体的な実行の部分、ひいては1つ1つのコンポーネントまでソリューションを提供することが可能である点がまず1つ。そして、サステナビリティについての評価はもちろんですが、スマート工場として自社工場も世界的なお手本工場に認定されているので、自らがメーカーとして経験し培ったノウハウを提供しており、説得力があるのがもう1つの強みでありユニークなポイントですね。また、製品を導入していただいた場合には利用中のケアやサービスまでを一貫して行っているところ、グローバル展開している点も他のメーカーと比較したときの強みです。

水野:ありがとうございました!

インタビューを終えて
今回は「シュナイダーのサステナビリティ」という概念的なところから入った記事でしたが、メーカーであってソリューションをお客様に提供できること、自社で培った実際の経験談をもとにノウハウを提供できるところが強みであると最後には教えてもらいました。次回の記事では、サステナビリティをリードするメーカーとしての商品に対するサステナ的こだわり、ものづくりのこだわりをご紹介します。(水野)



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