元素・「視覚」「未知」

  
  
元素・視覚

例――視覚の内部
  
  
第一の見える詩

骨の腕は光のなかに咲きみてり、臺燈る白き花、花

脚の骨へ設計図 雌雄の蕊の立ち聳ゆる支へる冠毛臺

人の創造花茎となりぬ花鍵をさげ豆の芽ほそながく

肋骨のトルソゆ産れてうるはしき白裸婦逆さ吊りにはな

ヒエログリフと古生代化石にかこまれて死と乙女つつがなき、未來史

多肉植物鬱蒼たるに両性のをとめ子宮の容の杯をもて佇ち

骨格図に脚の直角綿花をたてて胴なき腕のとどまる
  
  
第二の見える詩

暗闇の海縹渺へ光るムッシエの頭部、明かす水際の書の上へ手

黒き群翼撓めて水地帯の梯子の上の白き靴へとロプロプ

自然石像は岩禽をオルフェの巨躯は弦楽の胴をかかへり。曠野にて

機械史の未來 靴とりどり積まれ立つトルソに家鴨の戴冠す 騙絵
  
  
第三の見える詩

茹卵光差す地平に立ちき握手の手は消失点までつづき

立方の箱並をつらぬるに毛の禽獣ならび累卵遠近に光
  
  
  
  
元素・未知

例――歌の鍵
  
  
球体の縞模様へ目を吸はれつつ鸚鵡貝裸婦人の魚の閨

楯つ寝台へ處女磔脊柱を抱きて闇の向ふをへだてあれ

仰向きて處女は祷りを。眞裸の少年は俯けり。布寝臺

外套帽残し消ぬ椅子おそろしくをみな朧満月の部屋に

洞窟に螺旋の蛇の柱巻き寝衣の纏はれりをとめは

聖母ガラテアへの外套授与比翼なすうちはねごろも血衣

夜風夫人へ白き羅、髪、並木靡き影の家並み、をとこ

突如消ゆ空間におどろくをみな一枚の掛けぬの手にし

石臺へをとめ泛びつむれるひとみ崖に厚き雲かかりき

大階段跡切れて雉鳩一羽のみ 抛られて中空へ女は
  
  
  
  


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