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「木村きこりの統合失調症ライフ カミングアウト編」木村きこり著 を読んで

感想文集ー統合失調症をもつ人の著作を中心にー no.4


木村きこりさんはアーティスト・漫画家で、統合失調症をもっておられます。
この作品は、美大生時代に統合失調症をカミングアウトした経緯を自叙伝的につづられたものです。

テンポのよい漫画で、とても読みやすいです。
同時に内容は深く、決意への過程、周りの反応、カミングアウト後の思いなどが描き込まれています。

カミングアウトまでには山あり谷あり。
一般に重大な決心をするとき、その理由は一つではないことが多いように思います。
いくつかのベクトルがそれぞれに揺らいで、やがて一点に向かう。
作品中では8つのエピソードが描かれています。
その重なりのなかで徐々に固まってゆく思いが伝わってきます。

最終的に腹をくくったきっかけが、あるネガティブな出来事だったのもまた印象的です。
余談ながら私自身、人生を左右する重要な局面で迷っていたとき、あるイヤな出来事のおかげで踏み出せたことがあり、そういうのってあるよなあと自分勝手に共感しながら読みました。

そして「描きたいものを描く」という切実な決意。
ここで大きく踏み出す主人公の姿に勇気づけられます。

ところで、木村きこりさんの他の漫画作品には差別をテーマにしたものがあります。(みんなねっと 2022年1月号、2月号 全国精神保健福祉会連合会発行)
そこでは他者から向けられる差別だけでなく、自分の中の差別感情を掘り下げておられます。

カミングアウトや自分の中の差別感情といったデリケートな問題を正面から取り上げ、自身の内面にまっすぐに向き合う作品を読むとき、私はアーティストである木村きこりさんの覚悟に触れたような、なにか強い光を見たような気がするのです。

木村きこりさんのほかの書籍もおすすめです。
さらに、絵や立体作品など多彩な創作活動をしておられます。



(追記)
木村きこりさんがこの感想文についてツイートしてくださいました。
ありがとうございます。



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