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応援チケットを買えなくなりそうだった話

応援用のおひねりチケット
というものを見かけた。

なんて素晴らしいんだ。

1枚500円で出演者を応援できるというもの。

客席のパンフレットに挟まっていて、
これを買うとポチ袋が劇場の通路に飾られる。

自分の推しが応援されているのが可視化されるわけだ。

なんて素晴らしいんだ。

はやめに会場についたのもあり、
自分の応援している俳優さんに宛てて
ポチ袋を購入することにした。

近くの会場案内スタッフに声をかける。

すると驚愕の言葉。
「ご購入は終演後になります」

ばかな。

〜ここからは僕の心の叫び(その間0.5秒)〜

終演後は演者と挨拶してるじゃあないか。

僕はこう見えて恥ずかしがり屋なので、
「ボカァ君のことを応援してるんだよ、
 応援チケットを買ってあげよう」

みたいな事を本人を目の前にしてやるのは
抵抗感がハンパないのだ。無理無理。

金だけ払って認識されなくても構わないくらい。
それだとストーカーめいてしまうので、
コソッとやりたいんだコソッと。

こういうと残酷だが、
演劇は面白くない。
プロが作ってもハズレがあるのだ。
プロってのはつまり
年がら年中そのことだけ考えてる奴が作っても失敗するのだ。
アマチュアが作れば何をかいわんやである。

100本観れば90本はハズレである。
1本面白ければ当たり年。
そして、何年間に一本
人生を変える会心のお芝居がある。

というのは僕の先生の言葉だが、
僕もその通りだと思っている。

だからこの公演は観る前から
面白い期待はしてねぇんだよ。
君らが悪いんじゃ無くて、
演劇はそういうものだと思ってんの。
100人に1人の光明になる為に行くの。

ていうかあのね、もっと言いにくいんだけど
つまんないとか好みに合わないならいいの。
ハズレの中には
「不愉快になる公演」も
まぁまぁ含まれているのだ。
身内笑いがずっとあったり
終演時に誕生日ケーキを主催にあげたり
「友達と家でやれよ」
みたいな公演も少なくないの。
万が一そんな公演だったら
ポチ袋買わなくなっちゃうだろうが。

〜そんな思いが0.5秒脳裏を駆け巡った〜

「応援チケットの購入は終演後になります。」

「あ、、、わかりました。じゃあ終演後に…」
(そん時にゃ買わないと思うけど)

チーフと思しき人が遠くから
「大丈夫!今ご購入できますよ!」

二度見した。

なんて素晴らしいんだ。
(本日3回目)


システムだろうかそれとも
咄嗟にチーフは対応したのだろうか。

空気を読んだのだろうかたまたまなのだろうか。
僕は本番前にコソコソと応援チケットを買った。
終演後、俳優には無事何も告げないで帰ることができた。

僕が買いたかったのは
「俳優を好きだを表現する権利」
なので、
後で買うという選択肢はなかった。
表現する声のボリュームは小さくしたかった。
ので、コソッと買った。

あの子が好きだって後で言おう。
てのは、心理的にないわけで。
受付の人には深くお礼申し上げたい。

いまなんだよなー。

言葉にしてない僕の「いま」を
受付チーフが拾ってくれた事に感謝している。
あの当日受付のファンになった。


思考は続く。

開場中の30分は、早めに着いた人には暇だ。
着く側も待つ事をわかってるので、
本を持って行ったりする。

そこにそれとなくレジと商品があれば
まぁ買うかもなぁ。などと考えた。

少なくともこの公演の劇団を僕は知らない。
内容も知らない。
出演者の1人が好きだから行った。
Tシャツはいらない。
公演タイトルの書かれたマグカップも眼中にない。
「俳優を応援できるポチ袋」
だけが光って見えた。

そして僕は出演者ではなく、
当日受付を好きになって帰った。

ステージが舞台とは限らんな。
自分のイベントにも生きる話だよな。
などと思うのでした。

しんろくでした。

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