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中3にオススメしてもらった映画『幸せなひとりぼっち』が、とてもよかった話

シナリオ・センターのあらいです。

こないだ中学3年生の男の子に、最近観たオススメ映画を教えてもらいました。それが、『幸せなひとりぼっち』という2016年に公開されたスウェーデンの映画でした。

で、めちゃくちゃよかったので、思わずnoteにしたためております。

シナリオ・センターとはシナリオ・センターは、1970年からシナリオ(脚本)、小説を書きたい方向けに講座をして50年。ジェームス三木さん、内館牧子さん、岡田惠和さんなど700名以上の脚本家、小説家が誕生しています。
祖父の新井一が投げ打った私財で、できあがった教室です。
https://www.scenario.co.jp/

教えてもらった経緯

シナリオ・センターでは、『キッズシナリオ 考える部屋』という小・中学生向けのシナリオ教室をやっています。(6月に新クラス開講しま〜す!)
先週の『考える部屋』の際に、開始時間での集まりが良くなかったので、いつも面白い発想をしている中3になったばかりのYUくんに、
「最近観た、オススメの映画とかある?」
と聴きました。
そしたら、教えてくれたのが、映画『幸せなひとりぼっち』でした。

YUくんの説明を聞いていて、観てみたくなったので、観てみた次第です

観たくなったポイント

YUくん曰く、この映画の主人公は、奥さんに先立たれた偏屈なおじいさん。
トップシーンで、スーパーで花を買うときにクレームを言って、店員をこまらせるような人だとか。

さすが、1年近く『考える部屋』に参加しているだけあって、主人公のキャラクターの掴み方がうまい!

で、YUくん曰く、そのおじいさんは、孤独にうちのめされ、早く奥さんの元に逝きたいと、首吊り自殺をしようとする。
でも、いざ、自殺をしようと縄に首を通すと、家の前が騒がしい。騒がしくて、自殺ができない。なので、自殺をやめて怒鳴りにいく。

もう、これだけの説明で、こんな主人公のドラマを観たくなります。

そして、YUくん曰く、自殺をしたいおじいさんなんだけど、なんだかんだと隣人と関わらなくちゃいけなくなり、自殺ができなくなる。
ちょっとずつ、人との繋がりを作っていく、そんなお話です。

一行ストーリーで、いえば、
奥さんの元へ逝きたいと願っている偏屈なおじいさんが、隣人との関わりの中で自殺ができずに困りながも、人とのつがなりを取り戻す話。
でしょうか。

シナリオ、うまいな!と思ったとこ①

主人公のおじいさんのキャラクターが最高です。
別に悪いことをしている訳ではないけれど、口うるさくて、偏屈。それがトップシーンからよくわかります。

でも、それだけでは魅力的ではないわけです。地域のゴミをぶつくさ言いながら、仕分けたり、あそんだままになっている子どものおもちゃを、砂場から掘り出して並べたり。

二面性が、しっかりと描かれているわけです。
構成で言えば、『起』の天地人の紹介が、めっちゃうまい。無駄がない!説明的でもない!!

シナリオ、うまいな!と思ったとこ②

『死になたい』という貫通行動。
貫通行動というのは、物語を通しての一貫した主人公の行動原理のようなものです。
『幸せなひとりぼっち』の主人公は、亡くなった奥さんの元に逝きたいという貫通行動があります。
ですが、その貫通行動を、ことごとく邪魔されます。しかもその邪魔に対して、主人公のキャラクターだからこそ、一番したい自殺をほっぽってでも、黙ってられなくなってしまうところも、にくいシナリオです。

ふつうなら、家で首を吊ろうとしたら、ピンポーンとチャイムがなる的なことを考えそうですが、そうじゃないのがいいワケです。
これ、ガリレオシリーズの映画『容疑者Xの献身』に通づるところがあります。

障害が物理的だけではないところが、うまいな、と思うのです。

シナリオ、うまいな!と思ったとこ③

シャレードで、感情や人間関係の変化を伝えるうまさ。
シャレードというのは、間接表現のことです。

主人公のおじいさんは、奥さんのことをずっと愛しています。それを台詞ではなく、描写で伝えます。
捨てられない奥さんの洋服、その服をそっと撫でるおじいさん。
これなんかは、『その夜の侍』に通づるところがあります。

人間関係の変化も、シャレードで表現しています。
近所の人に嫌われていたおじいさんが、徐々に周りとの関係を築いてきます。それは、日課にしている近所の見回りに、勝手に近所の人が加わるシーンから伝わってきます。
しかも、おじいさんがやっていことを、マネしてついてきます。

これ、ラストシーンへの伏線にもなっています。いい余韻を生み出します。ここら辺もにくいシナリオです。

結論:YUくんに教えてもらってよかった

YUくんにオススメを聞いて、観てよかったです。ちょっと日常に疲れている方や、人とのつながりが恋しい方、もしくは、ちょっと人とのつながりから離れていたせいで、めんどくさくなっちゃったなんて人にも、オススメです。

見終わったら、温かい気持ちになれる、そんな余韻のある映画です。アマプラで観れます。

▼子どもたちと楽しく物語作りについて学ぶシナリオ教室『考える部屋』▼
6月開講です!

▼おじいさんが主人公で大好きな映画『エリックを探して』▼


シナリオ・センターは『日本中の人にシナリオをかいてもらいたい』と1970年にシナリオ講座を開始。子ども向けキッズシナリオも展開中。アシスト、お願いします!! https://www.scenario.co.jp/project/kids_assist/index.html