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ハッピーエンドの新・教科書。映画『シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!』の秀逸な構成

「ハッピーエンドを書きたい!」と思ったら、ハッピーなエンドまでどう持っていくかが重要。
しかも、ハッピーエンドにしようと思うと、ただのいいお話になってしまいがち。そうならないための教科書的な映画が『シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!』ではないでしょうか。

『シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!』の3行ストーリー

劇作家として鳴かず飛ばずのエドモン。自分に自信が持てず、大スランプの中、ひょんなことから、大物俳優コクランの舞台の作品を書くことに。
しかも舞台までの期限はわずか。浮かばないアイデア、進まない稽古、わがままな俳優たち……そんな中、エドモンは『シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!』を書きあげ、舞台を成功させられるのか!?

みたいな感じが、この映画の3行ストーリーかと思います。

ハッピーエンドを描くなら、その過程がとても大切

「シラノ・ド・ベルジュラック」自体は、19世紀末に作られ、ブロードウェーでもなんども上映されているフランスを代表する作品。

だから、この映画自体、最後は舞台が成功するってのがわかっているわけです。

それでも、観客に「ちゃんと舞台は成立するのかな?」とドキドキしながら観てもらいたい。

そんなときにどうすればいいのか?
『シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!』では、主人公のエドモンを徹底的に困らせます。

困らせるパターンは、大きく二つ。

『物理的に困る』×『心理的に困る』

たとえば、舞台までの時間がないという『物理的に困る』カセが生まれることで、全然アイデアが浮かばないという『心理的に困る』主人公が描かれます。

たとえば、友人の恋愛成就のために手紙を代筆するはめになるという『物理的な困る』ことで、友人が恋する相手に対して、主人公も恋心を抱くという『心理的に困る』が生まれます。

というような感じで、主人公が困る状況に置かれ、その状況に置かれることで心理的な葛藤や相克が生まれます。

さらには、舞台が差し迫ったときにも、思わぬハプニングが生まれたりします。

『シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!』では、主人公のエドモンをどんどんどんどん困らせます。最後の最後まで、困らせます。

なんせ、舞台が成功したのに、カーテンコールに応じる5秒前まで、エドモンは困っちゃってます。ここまで徹底して主人公を困らせることで、「エドモン、どうするの?」「なんてリアクションするの?」と、最後まで引き込まれちゃいます。


『シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!』、上映期間もあとわずかかもしれませんが、1回目は単純に楽しみ、2回目は主人公の葛藤に注目し、3回目は主人公ならではの問題解決の仕方に注目。それで、だいたい覚えたら逆箱を作ってみると、ハッピーエンドにもっていくまでの呼吸のようなものが会得できるのではないかと思います!

『シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!』が好きな人は、実話をもとにした映画『アルゴ』もオススメです!

ラストのハラハラドキドキを生み出す、カットバックは秀逸ですよ!


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