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改訂版が発売した『PR動画の作り方』の序章と1章を載せてみました

2016年7月31日に発売して、4年間まった~く売れなかった本が、2020年7月31日に『改訂版 いきなり効果があがるPR動画の作り方』(言視舎)という形で、発売になりました。

改訂版ということで、「なぜ、この時代に『動画』なのか!?」にも触れている序章と第1章をnote上で読めるようにしてみました。
興味が湧いたら、ご購入くださいませ。

改訂版を作るきっかけになったコロナ自粛

公開前に、改訂版のきっかけを少々。

4年間、全然売れなかった『いきなり効果があがるPR動画の作り方』が動き出したのが、2020年の4月から5月にかけてだそうです。
実は、シナリオ・センターの受講者のなかにも、本書を読んで興味を持ったからという方がちらほら。

「ん?なんか、最近『PR動画の作り方』の問い合わせ多くない?」

そして出版社さんから「あらいさん、改訂版を作りましょう!」と連絡。なぜ急に、『PR動画の作り方』が動き出したのか?あらいなりに考えた背景。

・自粛期間中、自己投資する方が増えた
・動画の撮影術ではない書籍が必要とされた
 →特に、企業の広報やマーケティング担当者の方あたり
・直接的な営業ができない分、『動画』が注目された
・動画への下地が作られていた
 →明石 ガクトさんの『動画2.0 VISUAL STORYTELLING』、5Gの話題など
・自粛期間中、動画での発信が世間的に増えた
 →youtube、Zoom含め、動画へのアレルギーがへった気がします

要は、
動画での発信の必要性が上がったこと
×
動画での発信への違和感が下がったこと

かな、と思います。

ということで、そこらへんも含め、序章・1章をお読みいただけたらと思います。
あと、19日(水)19時から「『PR動画の作り方』本の内容、だいたい話しちゃう」というライブ配信(もちろん無料)もします。内容的には、2章目以降の話をしていきます。
(YouTubeで1時間くらいしゃべっちゃった)

***ここから***

『改訂版 いきなり効果があがるPR動画の作り方』

序章 「伝わる動画」を作る方法

動画を4つのタイプに分けて考えれば、あとは簡単

1.ビジネスで動画を利用したい!でも、何から考えればいいの?

とある会社の社長室。

「スギヤマ、動画によるPRがいよいよ必要不可欠な時代になってきたな」
「たしかに……自粛期間中に、有名youtuberや芸能人はもちろん、企業でもさまざまな動画をUPしてましたね」
「スギヤマ、営業から広報に異動して、3カ月だよな。ウチも、PR動画に力をいれていくぞ!」
「はい……」
「不安そうだな……そんなことだろうと思って、お前の動画作りの悩みをスッキリ解決してくれる助っ人を頼んだから、安心しろ」
「!?」

自信なさげなスギヤマさんですが、本書を手に取った皆さんも「動画の時代が来たな」と思いつつも、何から考えたらいいかわからないというのが本音ではないでしょうか。

実際、「2019年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」(D2C/CCI/電通/電通デジタル)によるとインターネット広告媒体費のうち、ビデオ(動画)広告は前年比157.1%の3,184億円だそうです。

私たち生活者が、テレビやパソコン、スマートフォンを通して動画を視聴する時間も年々増加しています。

SNSとスマートフォンの普及、そして通信回線の高速化が進む今、PR動画はあなたのビジネスを成長させる鍵になるといえます。

|動画を作らなきゃ。でもな……

「御社の社長から、スギヤマさんのお話は伺っています。スギヤマさんのように、動画作りで悩まれている方、最近多いんですよ」
「やっぱり……」

ネットで動画の作り方を調べたり、書店でビジネス書のコーナーや映像書のコーナーに行ったけど、結局どうしていいかわからないという方、案外多いようです。

原因のひとつに、そういった情報の多くが、動画の撮影の仕方や動画を使ったマーケティングの方法が主となっていて、そもそも動画をどう考えて作るのかが示されていないことがあげられます。

本書では、PR動画を作るために、伝えたいことをどう整理し、どう表現したらいいかをわかりやすく解説していきます。

キャプチャ2

|「わからない」がいっぱい

実際に、こんな声が聞こえてきています。
「面白い動画って、どんな動画のこと?」
「面白い動画を作ればいいって言うけど、作り方がわからない……」
「バズればそれでいいの?」
「伝えたいこと、動画でちゃんと伝わる?」
そもそもの疑問もたくさんあります。
「そもそもなんで動画を作るの?」
「動画で伝える目的ってなんだっけ?」
「どんなユーザー向けに作ればいいの?」
「媒体の選び方もよくわからないし」
「制作会社に任せればいいのかな?」
「制作時間や予算、かからない?」
「撮影は、どうやったらいいの?」

具体的にどうしたらいいかという疑問もあります。
「ユーザーに伝わるもの、どうすれば作れるの?」
「イメージと違う動画案が出たら、どう直したらいいの?」
「制作会社がこれでいこうっていうのを信じていいの?」
「この動画ならいけるって、上司に説明できるかなぁ」
「当初の狙い通りの動画になるか、イメージがわかなそう」

というわけで、スギヤマさんが迷うっているのは当然なのです。
ですが、動画作りは、やるべきことを整理すれば、とてもシンプルに考えることができます。

|やるべきプロセスは、たったの4つ!

一昔前、動画といえば、テレビCMでした。動画をPRに利用するのは、一部の限られた企業でした。

今や違います。スマートフォンの普及、SNSの普及によって、動画を作るのも、動画を見るのも非常に身近になりました。

そこでビジネスでも動画が注目されています。とはいえ「何から考えればいいかわからない!」という人は多いのではないでしょうか。

でも、安心してください。動画を制作するプロセスは、たった4つしかありません。

1 シナリオ制作・前 →第1章

シナリオ制作・前は、動画を使って、何を伝えるのかという目的、誰に伝えるのかというターゲット、どう伝えるのかという媒体を明確にします。

2 シナリオ制作・中 →第2章

シナリオ制作の段階では、どういうテーマをどんな構成で、どんな素材を使って、どういう映像セリフで伝えるかを明確にします。

3 シナリオ制作・後 →第3章

シナリオ制作・後は、シナリオを読んで直すべき部分を明確にし、直しの指示をします。撮影のための簡単な絵コンテがある場合もあります。その場合は、絵コンテで直しの指示をします。

4 撮影・編集 →附録

シナリオが作られ、何を撮るかが決まれば最後に撮影になります。撮影したものを編集する作業を経て、動画の完成です。

「へぇ~大きく4つのプロセスしかないとわかると、なんか安心します。でも、一つ一つのプロセスが、素人の私にできるのでしょうか……」

2 極論すれば、PR動画は4タイプだけ

|シナリオ制作前に押さえる4つのタイプ

「スギヤマさん、まず何が不安ですか?」
「えぇ~っと……シナリオ制作・前にやるべきことを、どう考えればいいか難しそうです。私、営業畑が長かったせいで、広報的な感覚が全くなくて……」
「なるほど。そんなスギヤマさんでも安心の考え方を紹介しますね。極論すれば、PR動画は4つのタイプしかないのです。どういうことか説明しましょう」

まず動画を使ってPRしたいものは、大きく二つです。世の中にたくさんあるCMも結局この二つのことに絞られます。

・商品の紹介
   or
・会社理念の紹介(ブランドイメージ)

さらにこの二つを、数字や特長などを使って直接的に紹介するのか、それらを使わずに間接的に紹介するのか、表現方法で分けます。ということで、

キャプチャ4

PR動画には図のA〜Dの4種類しかないことが理解できると思います。これが「伝わる動画」のポイントです。この4タイプを使えば、どんな目的で、誰に、どんな媒体を使って動画を作るのかを考えられるようになります。これは1章で詳しく説明します。

|一番大切なのはシナリオ

「うわ~たしかに、すごいシンプル。でも、シナリオ制作・中は難しそう」「?」
「だって、シナリオなんてそれこそ書いたことも、見たこともありませんもの。なんなら、もう撮影しちゃっていいんじゃないですか?
 ほら、便利なアプリもありますよ」

だれでも手軽に動画を編集することができるアプリやソフトも増えてきました。何百通りものフォーマットを組み合わせて、オリジナルの動画を量産できるサービスもあるほどです。
ですが、動画を作る上で、一番大切なものがシナリオです。動画を作るとなると皆さん撮影のことばかりに気を取られがちですが、『いいシナリオがなくては、名作は生まれない』と言われます。土台となるシナリオが描けなければ、優れたサービスを活かすことはできません。

シナリオは伝えたいことを映像にするための設計図と呼ばれます。何万人もの気持ちを動かす映画やテレビドラマには、魅力的なシナリオが欠かせません。シナリオを基に、監督、俳優、美術、音響、照明、衣装などさまざまなスタッフが関わり、映像にしていきます。

PR動画の制作でも、最も大切なものはシナリオです。そしてシナリオがわかれば、動画にまつわるさまざまな「わからない」を、すっきりと解消できます。

しかも、押さえるべきはたった一つ。「構成」です。具体的には第2章で説明します。

キャプチャ3

この「構成」さえ押さえられれば、だれでも「伝わる動画」を作ることができるようになります。

さらにスギヤマさんと一緒に「構成」を使って4つのタイプごとにシナリオ制作を実践してみましょう(第2章)。

「シナリオ技術」のいいとこ取り!
これが、この本で提案する「伝わる動画」の作り方です。

|だれでもシナリオを作れるようになる

「スギヤマさん、疑ってます?」
「いや、『構成』だけでいいなら、やってみようっていう気になってきました。でも……なんか、シナリオを作るって、感覚とか才能の世界というイメージがあって」
「技術って言われてもピンとこない。ですか?」
「正直言うと……」

私たちシナリオ・センターは1970年の創立以来、体系化された「シナリオ技術」を教えることで、業界一多くのシナリオライター、小説家を輩出してきました。これまでジェームス三木さんや内館牧子さん、「ひよっこ」「ちゅらさん」シリーズの岡田惠和さん、「ゲゲゲの女房」「八重の桜」の山本むつみさん、「ごちそうさん」の森下佳子さん、映画「超高速!参勤交代」シリーズの土橋章宏さん、小説家では鈴木光司さん、原田ひ香さん、柚木麻子さん、大山淳子さんなどそうそうたる出身ライターを600名以上輩出しています。

連続ドラマの7割の作品は、出身ライターがシナリオを執筆し、シナリオ公募コンクールの9割はシナリオ・センターの受講生が受賞しているほどです。

創作というと、とかく才能やセンスだと思われていますが、もって生まれた才能を発揮するためには確固とした技術が必要です。どんなに才能があっても、技術がなければ多くの人に伝わる作品を作ることはできないのです。

これからの時代、動画を作ることは、動画を観ることと同じくらい身近になってきます。動画が増えれば増えるほど、見映えがいいだけ、無茶苦茶なことをしているだけの動画では、多くの人に観てもらうことはできません。
これまではエンターテインメント業界にしか届けてこなかったシナリオ・センターの持つ「シナリオ技術」を、より多くの方に使ってもらいたいのです。

「つまり、私みたいな人ですね」
「その通りです。シナリオがわかれば『伝わる動画』は作れますから!」
「でも……」
「なんか難しそう……って思っていますね」

映画やテレビドラマを作るために必要なのがシナリオです。そう考えるとなんだか難しそうと思うかもしれませんが、シナリオは小学生から書けます。シナリオ・センターでは地域の小学校にシナリオの出前授業をしています。たった90分の授業で、どんな子でもシナリオを書けるようにしてしまいます。

また、シナリオを使った営業担当者向けの企業研修も行なっています。普段シナリオに一切触れたことのないビジネスパーソンの方も楽しみながら研修に参加しています。
まさに、「シナリオ技術」のいいとこ取りのなせる業です。

3 作る人はもちろん、広報担当者でも知ってほしい「動画作り」のプロセス

「小学生でも書けるなら……でも、ちょっと待ってください。もしも私が、自社で動画を作る場合には『シナリオ技術』を勉強する必要はあると思うんです」
「そうですね」
「でも、制作会社に動画を依頼するなら『シナリオ技術』を勉強する必要はないですよね?」
「やっぱりプロに頼みたい?」
「そうです。なんせプロなんだから、いい動画を作ってくれそうじゃないですか」
「制作会社にお願いするのも一つの手です。でもね、期待したような動画ができるかは怪しいものです」
「え? そうなんですか?」
「だってスギヤマさんは、失礼ですが動画のイメージを制作会社に伝えるコトバをもっていらっしゃらないからです」
「え、伝えるコトバ?」

動画を自分たちで作る場合はもちろん、制作会社に依頼をする場合でも、シナリオ制作前・中・後のプロセスごとに、何をすべきかを理解していないと「伝わる動画」は作れません。丸投げで「伝わる動画」が作れるほど簡単ではありません。
第3章では、シナリオ制作・中はもちろん、シナリオ制作・後に役立つシナリオチェックリストを用意してあります。「伝わる動画」になっているか、リストを使えばだれでも確認することができます。

キャプチャ6

「そうか……、もしも私が制作会社に動画制作を依頼するとしても『こういうねらいで、こんな動画を作りたい!』って動画のイメージを伝えるコトバが必要だし、できたシナリオには『こう直して』って伝えるコトバが必要なんだ!」
「その通りです。動画制作会社の方々に、PR動画制作時にぶつかる問題について、インタビューをしてきたんです」

|映像制作現場の声

企業側の……
・テーマが不明確。
・映像にしたいことが多過ぎる。
・イメージしている動画の提示がない。
・動画の使い道が定まっていない(動画を最終的にどうしたいかがわからない)。
・撮影に立ち会わない。
・動画が出来上がってから、直しを要求される。

数名の方にインタビューさせていただいたところ、重複する意見も多く、大体同じポイントで問題を抱えやすくなっていることに気付きました。

依頼する企業としては、よくわからないからプロにお任せしてしまいたい……というところですが、制作会社だって、しっかり固まりきっていないアイデアを形にすることは不可能です。

「そうかぁ。いくらプロでも、いきなり作ってください!ってだけ言われても困りますよねぇ」
「でも、意外なことも聞けました。『こんなふうに撮りたい』『あんなふうにしたい』と、意見を言われるのは、そんなに嫌ではないみたいでしたね」
「へぇ~。そこは『口出さないで!』ってことかと思ってました」
「聞かないとわからないものですねぇ」
「そうですね。あと、作りやすいものもあるようで、『企業の商品PRは作りやすい。担当者が商品の魅力をしっかりわかっているから』って教えてくれました」
「作りにくいのは?」
「会社自体のPR動画については、企業側から『こんな動画で……』と指定があっても作りにくいんだそう。びっくりしたのは、会社概要のパンフレットを渡されて、そこから考えて欲しい、なんていうのもあったそうです」
「それはちょっと、雑ですね……てことは、やっぱり動画を作る制作に関わるなら、『シナリオ技術』を身につけた方がいいんですね」
「はい。そうしないと予算と時間ばかりがかかってしまう、なんてことにもなりかねませんから」

|「伝わる動画」をつくろう!

この本は、「伝わる動画」を作るための本です。プロのシナリオライターを目指す本ではありません。そのためプロが使っている「シナリオ技術」を、皆さんが「伝わる動画」を作るために使いやすいように紹介していきます。「スギヤマさん」という動画初心者の仮想聴講生と一緒に、「シナリオ技術」のいいとこ取りをしていきましょう。紹介する動画の例は1分前後で作れるものを想定しています。

この本を読むだけで、動画を使って商品の紹介、会社の理念の紹介をすることができるようになります。

さらに、誰に向けて、どんな媒体を使えばいいのかまでわかるようになります。今までよりも多くの人に「いいね!」と思ってもらえるようになります。
結婚式や二次会用のVTR、ホームビデオを作る際にも使えるおいしい本です。

「あ、あの!」
「急にどうしたんですか? スギヤマさん」
「だんだん、燃えてきました! だからこそ、お聞きしたいんです」
「?」
「えっと…ウチは老舗の手帳メーカーです。大企業ではないです。でも、商品力はどこにも負けません! 自信があります! だから、動画を使ってそこをちゃんと伝えたいんです」
「!」
「あ、あと会社のことも知ってほしいです。ムチャクチャな社長ですけど、手帳への想いとか社会貢献への想いとか、尊敬している部分もすごいあるんです」
「動画を使って、それらを伝えたいんですね」
「はい! 私なんかにできるでしょうか?」
「大丈夫ですよ、スギヤマさん。ひとつひとつのステップを慌てることなく、一緒に進んでいきましょう。そうすれば、営業から広報に異動したばかりのスギヤマさんにも、『伝わる動画』が作れますから!」
「頑張ります!」

この本とともに「伝わる動画」を作って、あなたの会社のこと、商品のことを今よりももっともっと多くの人に知ってもらいましょう。

付録として、シナリオの書き方、絵コンテの書き方、シナリオ用語集(本文中*がついている言葉)、動画の撮影方法、編集方法を簡単ながら紹介します。

では早速「シナリオ技術」のいいとこ取りをしていきましょう。
はじめましょうか、スギヤマさん。

キャプチャ7

第1章 動画を使ってプロモーションするには

何をどうしたらいいか、 具体的に解説します

1 動画サバイバル時代の到来!

というわけで、 「伝わる動画」の最初のステップを踏みだしていきましょう。私たちの身の回りには動画があふれています。動画を導入することのメリット、動画が置かれている現状、動画の種類、動画を作るための考えかたも少しずつ整理していきましょう。

スギヤマさんもまだ、これから具体的にどんな動画を作りたいのかまでは把握しきれていない様子です。動画作りで困っている方も、スギヤマさんと同じ状況なのではないでしょうか?

この章では、動画作りの初めの一歩、シナリオ制作・前から一緒にひもといていきましょう。

|動画を使うメリット

「あの~そもそもの質問、いいですか?動画ってなんでこんなに増えたんでしょうか」
「そうですよね。簡単にPR動画の変遷を整理してみましょうか」

『動画元年』と言われて久しい昨今ですが、テレビCM以外でPR動画が話題になったのは、2015年の大分県の観光PR動画「シンフロ」や宮崎県小林市の移住促進PR動画「ンダモシタン小林」などではないでしょうか。いわゆる、youtubeで配信し、sns上でバズる動画が流行しました。

その後、2017年くらいに料理の早回し動画がFacebook上などで流行り、2018年にはInstagramのIGTVやTikTokなどの動画プラットフォームが話題になりました。

そして2020年6月現在、新型コロナウィルス拡大防止による経済活動の自粛などもあり、いままで動画での発信に消極的だった企業からの発信も増えているのではないでしょうか。

つまり、動画が増えた要因は、発信する側のハードルが下がったこと、スマートフォンの普及と通信インフラの向上により、受信する側の環境が整ったことがあります。

「確かにスマホひとつで、観る側にも伝える側にもなれますもの」
「そうなんです。さらに、動画はお客様にとって、『わかりやすい』のではないでしょうか。料理の早回し動画が流行ったのも、テキストよりも料理の工程が『わかりやすい』からではないでしょうか。スギヤマさんは、いつ動画を見ますか?」さんは、いつ動画を見ますか?」
「うーん。ほしいものがあるとき、ですかね?例えば、ほしい家電があったらその商品の動画をみて、操作性や使用イメージを確認しますね」

動画は、お客様の知りたい情報を、テキストや画像よりも、わかりやすく伝えることができます。例えば商品紹介の動画を見せることで購買に繋げることができます。電通メディアイノベーションラボによる『情報メディア白書2020』によれば、若年世代では、ECサイトでの商品認知と商品購入が、同時に起きていサイトでの商品認知と商品購入が、同時に起きているという分析があるほどです。

企業側のメリットとしても、お客様に店頭に来てもらわなくても購入してもらうことができれば、人件費や固定費を抑えることができます。

「動画、すごいですね!」
「ですよね。他に、あまり関心がなかった分野でも動画ならどうですか?」
「面白い動画だと、なんとなく観てしまうっていうのはあります」
「そうです。だから動画なんです」
「!」

動画を使うことで、いままでなかなか自社の商品に興味を持ってもらえなかったお客様にもアプローチすることができます。

また採用担当者は、 「私たちの企業が欲しい人材は……」という動画を自社HPに載せています。そうすることで会社のことを知ってもらうことはもちろん、具体的に働いている姿をイメージしてもらうこともできます。

動画は、お客様にも企業にも大きなメリットがあります。今後、ますます動画でのPRは増えていくといえるでしょう。

|わかっているようで、 わかっていない動画

「やっぱり動画なんですね。でもなぁ」
「?」
「 『頑張ります!』とは言ってみたものの、そもそも、何がわからないかが、わかっていない気がするんです……」
「じゃあまず、私たちの周りにある『動画』を調べてみましょう!」

街へ出ると、実にたくさんの動画に出会います。電車を待っているプラットフォームにも、電車内にも動画が流れています。大きな交差点には大型ビジョンがあります。テレビが置いてあるお店からは、テレビCMが流れています。スマホに目を落とせば、SNSで必ずと言っていいほど動画が配信されています。

タクシーに乗れば、目の前のモニターからはパーソナライズ化されたPR動画が流れます。

大型家電量販店をのぞいてみましょう。ふっと横を見ると、量販店の店頭に置かれたディスプレイでは、最新のパソコンのプロモーション動画を流しています。

「あ、これ、私が動画で見ていたパソコンです。ほら、紹介動画が流れていますよ」
「なるほど。この動画はすでに購入を検討している方向けに作られたものですね」
「へぇ~」
「PR動画のAタイプ『商品直接型』です」

|A 商品直接型

・ 商品やサービスの購入をお客様に促すときに効果的
・ 商品やサービスについての具体的な数字や機能について伝える
・生活雑貨全般(家電・食品・衣類・雑貨)に使える
・ 商品紹介ページ、ECサイト(Web)、公式SNSとの相性がいい
・シナリオの難易度は低い

「へぇ~たしかに掃除機のCMとかもそうかも。他にも洗剤のCMとか、なんか結構見ますよね」
「一番目にする型ですね。ファッションブランドが、IGTVを使って店員さんが商品紹介をする動画が増えてきましたが、あれも商品直接型ですね」 「上の階には、旅行代理店がありますよ。沖縄で家族が楽しそうに遊んでる動画って、CMとかSNSとかで観るじゃないですか。最後に『家族と過ごす楽園』だとかってコピーで終わるやつです。あれも商品直接型ですか?」
「あぁそれなら、商品間接型ですね」

|B 商品間接型

長期間での認知拡大、ファンの獲得をしたいときに効果的
・ 商品やサービスによる体験を伝える
・ 体験に重きを置くサービス(レストラン・宿泊施設)などに使いやすい
・SNS広告との相性がいい
・シナリオの難易度はやや低い

「商品間接型というのは、商品そのものを紹介するよりも、その商品を使っている時間とか空間とかライフスタイルみたいなものを提案しているイメージです。『家族と過ごす楽園』なら商品間接型、 『いまなら70%オフ!』なら商品直接型です」
「会社理念の紹介については、家電量販店では、見かけなかった気が……」
「スギヤマさんがほしがっていたパソコンの公式サイト、のぞいてみましょうか」
「公式サイトですか?」
「ここをクリックしてみてください」
「ん?なんか会社の理念やら沿革やらを動画になっていますね」
「これが理念直接型の一例です」

|C 理念直接型

・企業理念をより詳しく伝えたいときに効果的
・ 企業の理念や目標について、明確なメッセージを伝える
・ 求人サイトや会社案内、リクルート、社内広報向け
・シナリオの難易度はやや高め

理念直接型のPR動画は、昨今ではリクルート向けの会社説明会や社内広報などにも使われ始めています。
「あぁ~なんかウチの社長も、こういうのやりたがってました。あとは、理念間接型ですか?」
「はい。おそらく難易度は一番高いですね」

|D 理念間接型

・企業理念をより多くの人に知ってもらいたい場合に効果的
・企業の考え方や理念を感じ取ってもらう
・SNS広告との相性がいい
・シナリオの難易度は高め

「高級ブランドのCMで、なんかすごいかっこいい!みたいなのありますよね?」
「そうですね。商品が全面にでていないけど、会社の理念とか姿勢とかが印象に残る動画です」
「あ、SNSでも見たことあります。それは社長さんが何でも挑戦してみるっていう面白い動画でした。けど、 『挑戦する企業』っていう印象は感じました」

私たちの周りには、

多くのPR動画があります。ですが、先の章でも述べたように突きつめると4つに分けられます。

|4つのタイプに分けて動画を考える

世の中には、さまざまなPR動画があります。その中から、自分たちがどんな動画を作ればいいのかを考えると目が回りそうです。しかし、4つのタイプに分けて考えると頭が混乱せずにすみます。ここからは考える手順を、詳しくみていきましょう。

動画を作る上で、最初にやるべきことは目的・ターゲット・媒体を決めることです。先の4タイプを使うと、シナリオ制作・前に押さえるべき目的、ターゲット、媒体を整理することができます。

|目的を明確にする

まずは、動画を撮る目的を決めましょう。目的があって初めて何を作ろう、どんなふうに撮影しよう、という話ができるようになります。
大きく分けると、商品の紹介なのか、会社理念の紹介なのか、この2つの軸で考えます。

動画を制作する側、依頼する側で、そもそも何のためにこの動画を作るのかという、目的を共有することは必須です。

作業が進んでいくと、当初の目的から外れてしまうことがあります。いつでも動画を撮る目的に立ち戻ることを忘れないようにしてください。

「わかる気がします。会社の紹介なのに、せっかくだからもっと商品のアピールしようよ!みたいな話になったりして」
「はい。当たり前のようですが、動画制作に関わる全員が、最初に頭に入れておかないといけないことです。目的を押さえておかないと、何が言いたい動画なの?ってお客様に思われてしまいます」

|ターゲットと媒体を明確にする

商品の紹介か会社理念の紹介かが決まったら、誰に紹介するのか、どんな媒体を使って紹介するのかを整理していきます。2つの表現方法を軸にして考えていくと整理することができます。

|直接型が向いているターゲットは?

「スギヤマさんは、手帳メーカーですよね」
「はい!」
「では手帳を買う人の年齢、性別、名前を具体的に考えてみてください」
「そうだなぁ……。鈴木さやか、31歳」
「いいですね。じゃあ、彼女はどんな仕事をしていますか?家族構成は?」
「えっ?そんな話、要ります?」
「まぁまぁ。続けてください」
「人材派遣会社のマネジャー。結婚しながら仕事も両立するデキる女性!手帳の使い易さにはこだわりがある!とか?」
「すばらしいですね!この方はすでに手帳に興味がある方ですね」
「はい!まさにウチのお客様像です」

自社の商品、自社についてすでに興味を持っている方をターゲットにする場合に有効な表現手段が直接型です。

すでに興味を持っている方をターゲットにする直接型の動画では、商品についての詳細な情報や会社理念について、ストレートに伝えると大変喜ばれます。

「先ほどの鈴木さんはテレビをよく観ますかね?」
「そうですね~鈴木さんは、テレビドラマはよく観ているような気がします」
「ということは、テレビCMも有効かもしれませんね」
「はい!でも予算がないので……この世代の方なら、ECサイトに動画を載せたら観てくれそうです」
「手帳に対する御社のこだわりや理念についてはどうですか?」
「結構、興味を持ってくれるかもしれません!そうか、鈴木さんのような方に観てもらいたいなら、当社のホームページでもいいわけですね」

ターゲットが決まれば、そのお客様が接する媒体を考えることができます。
直接型の表現は、顕在層のお客様に対して有効に働きます。

キャプチャ8

|間接型が向いているターゲットは?

「今度は手帳にあまり興味を持っていないけど、必要になるかもしれない人を考えてみましょう」
「え~と、佐藤次郎さん、27歳、IT系メーカーの営業、独身。家族とは離れて1LDKのマンションに一人暮らし。スケジュール管理はアプリを活用」
「手帳よりアプリ派なんですね。この『佐藤さん』的なターゲット層には、 どんな媒体が有効そうですか?」
「そうですね。テレビは観なそうだけど、ニュースサイトの動画CMとかSNSに流れていたら、気になって観てくれるかもしれませんね!」

自社の商品や理念について、まだあまり知らない方をターゲットにする場合に有効な表現手段が間接型です。

「スケジュール管理はアプリで十分」と思っている方スケジュール管理はアプリで十分」と思っている方に、手帳の機能について詳細に説明しても聞く耳を持ってくれません。間接型の表現は商品そのもの、会社理念そのものに興味を持っていない潜在層をターゲットにする場合に有効に働く傾向にあります。間接的にそれとなく、商品や会社の良さをアピールすることができます。

「商品の向こう側にいる人を考えるのって、作る時も売る時も必要なんですね」
「さすが、営業畑の長いスギヤマさん。鋭いですね」

ターゲットとなるお客様は、興味を持っている顕在層とこれから興味を持ってもらいたい潜在層の二つに分けることができます。ターゲットの属性がどちらなのかがわかれば、動画を制作する目的に合わせて、直接型か間接型か、表現方法を選ぶことができます。

|媒体の特性も意識しておく

一口にビジネス向けの動画といっても、目的とターゲットによって媒体との相性は変わってきます。いい動画が撮れた!といって、とにかく動画を載せても効果を得ることはできません。

動画の目的とターゲットに加え、媒体の特性を踏まえて、配信する必要があります。主にPR動画で使われている媒体の特性をまとめた次の図を参考にしてください。

キャプチャ9

「こんなにあるんですかぁ~」
「いえいえ、これはまだメジャーなものだけです。この先3年後、5年後、新しいものも出るし、もしかしたら今メジャーなものがマイナーになることもあるでしょうね」
「ひぇ~。移り変わりが早いですね」

動画を配信する媒体において考えておきたいポイントのひとつが、その媒体がどんな画面を通して観られるのか、です。街頭ビジョン、映画館、テレビ、パソコン、タブレット、スマホと、デバイスの大きさはさまざまです。動画を流したい媒体が、どんなデバイスで観られるのかを考えておく必要があります。
また動画を観る状況の違いにも注意が必要です。映画館でのCMやテレビCMは、CMが流れること、流れるタイミングを視聴者は経験的に知っています。CMが流れること自体に、違和感はあまりありません。

SNS広告の場合は、タイムラインに視聴者の予期せぬタイミングで流れます。動画は目に入りやすい分、お客様が欲しいと思う情報や、魅力的な内容でないと、楽しい時間をジャマされた気持ちになってしまうのです。PRのための動画が逆効果になる、なんてことになるかもしれません。

「伝わる動画」を作る際には、必ず媒体の特性についても整理しておいてください。

「よ~し、撮影前にやらなくちゃいけないことが大体わかってきたから、もうそろそろ撮ることについて話をしませんか?」
「そうですね。では、今度はスギヤマさんが動画でやりたいことを整理していきましょう!」

2 作りたい動画を24つのタイプに当てはめてみる

動画をつくために必要な考え方が整理されてきたと思います。本章の総まとめとして、あなたが作りたいと思う動画を、スギヤマさんにならって4つのタイプに当てはめて考えてみましょう。

「社長に言われていることが実はたくさんあるんです。まずはウチの定番製品『手帳』の売り上げアップ」
「商品直接型にうってつけですね」
「それと、手帳シリーズのPR」
「認知度UPなら、商品間接型でいきましょう」
「まだあります。採用や社員教育の一環で、社長が会社の理念を語りたいそうです……」
「3つ目は、理念直接型ですね」
「まだあります。ウチの会社って『人の人生に寄り添う会社』っていうのが会社自体のスローガンみたいなもので、それも世の人々に知ってほしい!なんて大きいことを言い始めちゃって……そんなのも動画にできるんでしょうかね?」
「大丈夫ですよ。これは理念間接型がむいてそうです 」
「多いでしょうか?」
「いえいえ、この4つは、企業が動画として作るもののパターンに当てはまっているので、その特徴が生きる動画を作ればいいだけです。さっきのやりたいことを、 4つのタイプの図を使って整理してみましょう!」

キャプチャ10

|スギヤマさんの課題はみんなの課題!

先ほど挙げた、スギヤマさんのやりたいことは、
①手帳のPR(購買UP)
②シリーズの告知(認知UP)
③欲しい人材の説明(共感UP)
④会社の方向性のPR(認知UP)
どの企業でも、動画を作成する目的は大きく分けてこの4つではないでしょうか。

早速、4つのタイプに分けてみると……

ざっと特徴と用途などを絞ってみると、このような違いが見えてきます。
みなさんが作りたいと思っている動画も、4タイプを使って整理してみましょう。

キャプチャ11

|『バズる』ことや再生回数は求める必要なし

とかくPR動画を作るとなると、 『バズる』ことや再生回数を求めがちですが、それは一時代前の話ではないでしょうか。

動画を作る目的は、あなたの商品や会社のファンになってくれているお客様に、わかりやすく商品を紹介することや、意外な開発秘話といった物語を届けることです。そしてその結果として、商品を購入してもらったり、より根強いファンになってもらうことです。そのために、何百万という再生回数は必要でしょうか。

PR動画においても、再生回数ではなく再生の質こそが問われるようになります。再生回数は増えたけど、売上が上がらない、間違ったブランドイメージがついてしまった……そんなことが起きないように注意が必要です。

多くの動画に接しているお客様の目は、思ったよりも肥えています。気を付けなければいけないのは、映像の面白さ、見せ方の斬新さだけの、中身のない動画にしないことです。
「伝わる動画」を作るため、動画制作に関わる全ての人が、シナリオ制作・前に目的・ターゲット・媒体についてきっちりと整理をしましょう。

では次の章では、4タイプごとの構成のポイントを紹介します。
さぁ行きますよ!スギヤマさん。

ポイントの整理
・ビジネス動画は4つのタイプに分けられる
・動画を作る〈目的〉を押さえる
・動画を観せたい〈ターゲット〉を具体的にする
・動画を観てもらう〈媒体〉の特性を摑む

***ここまで***

【改訂版】いきなり効果があがるPR動画の作り方
発行日:2020年7月31日
編著者:新井一樹
執筆:岡田千重・内藤麻貴・田中和次郎
発行者:杉山尚次
発行所:株式会社言視舎

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序章と1章は、ここまでとなります。お読みいただきありがとうございます!

続きが気になる方は、下記のURLに配信したyoutubeライブをご参考にしていただければと思います。2章以降の各タイプごとのPR動画の作り方について、だいたい話しております!

もちろん、本書をご購入いただき、じっくりお読みいただけたら嬉しいです。便利なので、Amazonリンクを貼っておりますが、ぼく個人としては本はやっぱり書店さんで買うのが一番だよな、と思います。

それでは、少しでもみなさんのお役に立てたらうれしいです。貴重なお時間、ありがとうございました!


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