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ストーブのない部屋に住み終える(高橋敏文)

 2024年2月、駒場演劇祭(https://komaba-engekifes.framer.website/project)に出展することになった。演劇祭主宰の平田隼大氏(彼には過去公演に2回出演して頂いた)との縁で劇団員の波木も運営に携わっており、彼らをはじめとして関係者にはたくさん知り合いがいる。というか、いつの間にか『月華世紀末狂騒曲』の座組の半数近くが演劇祭に何らかの形で関わっていて、昨年末の私は呻き声をあげながら稽古スケジュールに2週間の空白を設けたのであった(幸い、それを加味しても本公演の稽古は順調に進んでいる)。みんな演劇をやりたくてたまらないらしい。これに伴って稽古場日誌の更新も2週間近く停止するので、今回は番外編として私からネタバレを除く出展作品周りの話を書かせてもらおうと思う。

劇団再放送第2回本公演『月華世紀末狂騒曲』予約フォーム(劇団扱い)
https://shibai-engine.net/prism/pc/webform.php?d=d236zi1w

 演劇祭で上演する『電気ストーブと守護天使の夜』は、おそらく参加団体の中では比較的スタンダードな二人芝居で、15~20分という持ち時間に応えて17分半を想定した脚本となっている。これは当初演劇祭にではなく、本公演の舞台監督も引き受けてくれている幻視譚の加藤葉月に向けて書き下ろしたものだった。加藤は舞台監督だけでなく俳優・ダンサーとしての顔をもち、稽古場でも本当に頼りになる存在だ。彼女を本公演の俳優としてオファーできなかったのは私にとって心残りのあるところで、東京を去るまでの残り時間でできることを探していった結果、今回の出展に行きついたのである。自分が出演することになるとは予想外だったけれども。
 出演するにあたって、伸ばしていた髪をバッサリ切った。美容師さんが切った髪の毛を集めると顔一個分くらいになっていた。子犬じゃん。我ながらものすごく地味な男だ。大学入学時もこんな感じだったっけ。東京に住み終えるために、はじめの地点に戻ってきたのかもしれない。
 ここで一人暮らしを始めて5年が経つ。私は火事が怖くて、部屋にストーブを置いたことがない。先週、粗大ごみに出すためにベッドを解体し、床で寝始めたのだが、思ったよりも寒い。実際は違うのかもしれないけど、床一面が冷気を放っている感じがする。この部屋床冷房ついてたっけ?型の古いエアコンは床を覆う冷たい空気の重さに対抗することをすっかり諦めているらしい。暗闇でぼんやりオレンジ色に光る電気ストーブは、寒さに増幅されたどうしようもなく孤独な夜をいくつも救ってきたんだろうなあ。もう買わないけど。

 駒場演劇祭の本番は2月22日・23日。各チーム3団体、合計60分の上演予定となっている。劇団再放送の上演はCチーム枠、2日目の朝イチから怒ったり、驚いたり、怖がったり、目の覚めるような真夜中のお話をお届けする予定だ。ちょこっとだけ本公演の世界とリンクしているかも……? なお、1日目のAチーム枠で、幻視譚の新作も上演される。こちらではダンサーとしての加藤を目撃できるので、併せてチェックしてみてほしい。

駒場演劇祭2024 予約フォーム
https://www.quartet-online.net/ticket/komabadramafes24

・団員参加情報
チーム C 2/23 (祝金)10:30 開演
劇団再放送 『電気ストーブと守護天使の夜』 高橋敏文
チーム D 2/23 (祝金)  14:00 開演
劇団NUTS!『HOPE』 波木ぺん


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