見出し画像

生きてます (高橋敏文)

 稽古場日記。はじめます。去年の暮れまでにプレ稽古が何回かあって、今日、これから11時間後に第二回本公演『月華世紀末狂騒曲』の本稽古がスタートします。さすがにまだやってない稽古に関する日記を出演者に書かせるわけにはいかないので、こうして主宰の私が先陣を切っているというわけです。次回以降は出演者が順番に文章を書いていくので、来る本番に向けて、稽古場のワクワク感をお伝えできればと思っております。

髪を切ったばかりの高橋

 主宰を名乗って公演をやるのは久しぶりです。二度とやるか!と思ったことは何度もありますし、実際、前回公演(2022年5月)をやったときには「これが最後かなあ」なんてぼんやり考えていました。上演できなかった、それどころか稽古場に持ち込むことすら叶わなかった戯曲をいくつも抱えて、(学生)演劇というフィールドから立ち去らなければならない自分の姿が容易に想像できたからです。この 3 か月後に留年が確定するのですが、当時の高橋はそんなことを知る由もなく。
 駒場に余分に居座った1年は、大学入学後の4年間を取り戻すかのような出会いと経験の連続でした。これまで、何だったんだろう。いつの間にか孤独ではなくなっていて、死ねなくなりました。そうなると、一緒に墓場に行く予定だった戯曲を棺から取り出してみざるを得なくてですね、その結果上演することになったのが、『月華世紀末狂騒曲』です。初稿はなんと4年前の6月だそうで、確か大学に入って2本目か3本目に書いた長編だったと思います。当時の稿を見返すと本当にひどい出来なのですが、それを何度もばらして、組み立てて。今日稽古場に持ち込むバージョンは、決して悪くないものに仕上げたつもりです。
 私の心の中にしか存在しなかった青山健治が、調夏彦が、こんなにも近くて遠かった駒場小空間に、そう考えるだけで、おかしくなっちゃいそうです。稽古場のみんなが、彼らを好きになってくれたら嬉しいな。

主宰/作/演出 高橋敏文


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?