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彼女が月日と名乗る理由

 2019年12月31日のお昼12時より、月日さんのドキュメンタリー映像『Her Record』が、クラウドファンディング支援者向けに限定公開されている(一般公開は1月以降とのこと)。この文章では、このドキュメンタリーを観て考えたこと、およびこのドキュメンタリーの見どころを、少しだけ書き残しておきたい。

ドキュメンタリーを観て考えたこと

 YouTubeの説明欄には、「これは、月日を追うドキュメンタリーである」と記されてあるが、これはもちろんダブルミーニングになっている。つまりこのドキュメンタリーは、①2019年から月日と名乗り、アイドルグループRAYのメンバーとして活動している女性の、アイドルや女優としての活動を記録したものであると同時に、②彼女が月日と名乗るに至るまでの月日(幼少期からこれまでのアイドル活動まで)の記録でもある。

 こうした『Her Record』の二つの側面を取り出してみたとき、即座に次のことに気が付く。すなわち、①の側面は基本的にネガティブなものとして描き出されている(家族との微妙な関係やこれまでのアイドル活動における葛藤など)のに対して、②の側面はポジティブなもの、月日さん自身の言葉を借りれば、「未来がいっぱいみえるもの」として描き出されているということに。

 ただし、ここで注意しなければならないのは、月日さんは①のようなネガティブな月日を否定し、それらすべてを現在の自分とは切り離すことで、RAYにおける月日としての活動に至ったというわけでは恐らくない、ということだ。そうではなくむしろ、①から②への推移を、これまでの月日を引き受けなおすこととして捉えるほうがより適切であるとおもわれる。このように考える根拠を二つ提出しておきたい。

 ひとつめは、ドキュメンタリー中盤における、ミスiDにかんする語りだ。月日さんは今までにミスiDというオーディションを三回受けている。一回目は書類審査落ちだったので置いておくとして、二回目でファイナリストに選出された後で、なぜまた三回目の応募を決意したのか。このことにかんして、ナレーションで次のように述べられていた。

二度目の応募は、当時の過剰なイジられ役から脱却し、アイドルとしての理想像に近付きたいという思いからだったが、周囲への反発や環境への呪いの側面が強かったと思い返し、もう一度受けることを決めた。

ここからわかるのは、月日さんがどこかの時点で二度目のミスiD応募という過去の経験を捉え直すに至った、ということだ。そしてこうした捉え直しによって、自らのネガティブな月日(①)に対して否定的な態度(「反発」や「呪い」)を取ることから距離を置いた。こうして以前とは違う自分になった月日さんは、再びミスiDに挑戦することに新たな意味を見出し、三度目の応募を決意することができたのではないだろうか。

 二つ目は、『Her Record』というドキュメンタリーのタイトルそのものだ。recordは、動詞なら記録する、名詞なら記録という意味だが、語源を辿ると、re(再び)+cor(心)ということで、「再び心に思い出すために書く」というところから「記録する」という意味になったらしい。要するにrecordとは、再び(re)取り上げるということと切り離せないものだと言える。

 さて以上のような理由から、『Her Record』というドキュメンタリーは、月日さんが、これまでのネガティブなそれも含めた月日を引き受けつつ、それを捉え直しながら、月日としてRAYで活動する姿を描き出したものだと言っておきたい。そしてこうした過去の月日をしっかり引き受けながら、それを捉え直していくことで変化していくという姿勢はそもそも、彼女が現在月日と名乗っていることにはっきりと現れているのだと考えるべきだろう。今の月日さんの活動は、これまでの月日と決して切り離すことはできないし、それを安易に否定も肯定もせず引き受けなおしていくことで、これまでの月日を活かしつつ、変化し続けていくことが可能になっている。だからこそ「月日という人は、知れば知るほどわからなくなる」。

私的『Her Record』見どころ集

5:22あたり 月日さんの中学校の卒業文集が映ってます。文章を読んでみると、月日さんらしいな~とおもえるポイントがあってとてもいいので一旦停止して読むことをおすすめしたいです。あと、字は上手い(とおもう)。

10:52あたり ここで月日さんがちょいちょい見せる表情が出てるのですが、グッとくるポイントとしては、この時の表情は意図的なものでなく自然な会話の流れで出てきたものだということです。

12:48あたり ピョンピョンしています。見よう。

21:05あたり もぐもぐしています。見よう。

35:38あたり 視聴即絶命です。短編映画を撮り終えた直後らしく充実感に満ちており、見るからにテンションが高いのでとても元気が出ます。なかなかに特徴のあるのおなじみの引き笑いも炸裂しているので最低5回は見るべきです。

38:00あたり 引き笑いパート2が出てます。この笑いを引き出したまのちゃんにお小遣いあげたいです。

39:43あたり ここでは10:52のときの表情を意図的にさらに強調してやっているのですが、そのあと照れ笑いをしているとこまで含めた一連の流れが素晴らしい。あと、この前後のナレーションはいいこと言ってます。





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