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『劇場版放送禁止:復讐執行人』でフェイクドキュメンタリーという形式の限界について考えさせられた【フェイクドキュメンタリーを止めるな!】

このところフェイクドキュメンタリーシリーズ『放送禁止』のことをひとつひとつレビューしていますが、

今回は、このシリーズがついに劇場版に進出した、『放送禁止 劇場版~密着68日 復讐執行人』についてレビューしたいのです。

ただし、この劇場版については、前回の「第6回デスリミット」のレビューのなかでざっくりとは話してしまっているので、

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今回は、本作について私が感じた、ひとつの問題点について、正直な意見を申し上げましょう。

すなわち、この『放送禁止 劇場版~密着68日 復讐執行人』 は、シリーズの中では、うまく行っていないところがあるのではないかなと。私自身、見ていて、凄く感じたところがあるのです。

というのもですね、、、まあ、以下、『放送禁止シリーズ』が辿ってきた過去エピソードを並べてみますので、じっと見てくださいね

第1回が心霊スポット、
第2回が大家族、
第3回がストーカー、
第4回は隣人トラブル、
第5回が自殺志望者、
第6回が夫婦間暴力、

をそれぞれ扱い、「表向きは社会問題を扱ったドキュメンタリーだが、視聴者がよーく見ると、その裏でもっと怖い事件が進行している(たいてい、表の事件(ストーカーとか夫婦間暴力とか)はもっと闇深い犯罪を隠すカモフラージュだった、というドンデン返しがくる)」というのが『放送禁止』シリーズの持ち味。

そして、この劇場版は、第6回の「夫婦間暴力」と同じ時間軸で展開していた平行の物語、という複雑なベースの上に、

「警察の手をも巧みに逃れながら、復讐代行という裏稼業を粛々と進めている謎の組織」への潜入取材ドキュメンタリー、という話が展開されます。

、、、と、

私がこの劇場版について持っている疑問点を語るには、ここまでの説明で十分でしょう。というか、勘の良い方はもう、「ん?」ときづいちゃったかもですね。

そうなのです。そうなのですよ、、、

この『放送禁止』シリーズは、

いかにもリアリティのある現代の社会問題を扱っているドキュメンタリー、、、を模した、フェイクドキュメンタリーでした。

そう考えると、一作目は少し試行錯誤の段階とみなしたとして、他のエピソードは一貫していました。

だって考えてください、フェイクドキュメンタリー作品が「隣人からの騒音による嫌がらせに苦しんでいるAさんのお宅に取材班はお邪魔することにした」と始まったら?「ああ、隣人トラブルってよくニュースにもなる話だよね。リアルな設定だな」と思いますよね?

フェイクドキュメンタリー作品が「夫の暴力に苦しんでいるというBさんのお宅を取材班は訪れた」と始まれば、「ああ、夫婦間暴力というのはよくニュースにもなる話だよね。リアルな設定だな」と思いますよね。

「大金を振り込まれることで、警察の目すらも見事にかいくぐりながら、どんなターゲットにも接近し、法律では裁かれない悪人への復讐を代行する組織に、我々は取材を許された」となったらどうですか?「いや、、、なにそのスーパーな組織?!アメコミ世界かっ?!」とツッコミが引っかかってしまい、せっかくのフェイクドキュメンタリーなのに「そもそもこんなことが現実にあるわけないのでは?!」と最初からノレないのでは?少なくとも私はそうだった。

フェイクドキュメンタリーなわけなので、表向きは「よくあるドキュメンタリー映像」を模さなくちゃいけない!なのに、「こんな事件、現実にあるわけなかろう」と最初から思われてしまうような、突飛なキャラクターや突飛な組織や、突飛なシチュエーション登場させてしまうというのは?シリーズコンセプトを考えるとかなり無理めな冒険だったのでは?

でもでも、弁護をしておきますと、この劇場版、純粋なミステリーとしてはとても緻密にできてるのです。テレビ版第6作で謎のままにされていた伏線が一気に回収される中盤とか。復讐代行組織のリーダーの正体が、二転三転するドンデン返しラッシュとか。

ドキュメンタリーを模しているところにリアリティが感じられないが、ミステリーとしての構成はちゃんとしている!、、、でもそれって、究極の問題にぶち当たりますよね?「となると、このシナリオは、フェイクドキュメンタリー形式にしないほうがよかったのでは?つまり、普通のフィクション形式で、ミステリードラマとして作ったほうがよかったのでは!?」という。

そういう意味で、私にとってこの『劇場版:復讐執行人』は貴重な事例となりました。フェイクドキュメンタリーという形式の限界を教えてくれた事例と受け止められますからね。図らずも、というところでしょうが。

ただし!

これで放送禁止シリーズは終わらない!

それどころか、おそらく、制作側もこの『劇場版:復讐執行人』でうまく整理できなかったところは認識しきっていたようで、

この後に制作された、『劇場版:ニッポンの大家族』では、見事にシリーズの原点に立ち返り、「カナダからきた外国人チームが日本の田舎の家庭の日常を取材する」という、なんとも「リアルに存在しそうなドキュメンタリー」をぴったりと模しつつ、胸糞な恐怖を味わせてくれるという、シリーズ最高の出来栄えを結実させてくれるのです!

この二作目の劇場版、『ニッポンの大家族』については、いずれ私も熱い絶賛レビューを書くつもりです、乞うご期待を!


子供の時の私を夜な夜な悩ませてくれた、、、しかし、今は大事な「自分の精神世界の仲間達」となった、夢日記の登場キャラクター達と一緒に、日々、文章の腕、イラストの腕を磨いていきます!ちょっと特異な気質を持ってるらしい私の人生経験が、誰かの人生の励みや参考になれば嬉しいです!