欧州出張記@SOC(その1:EnterEspoo社訪問)
2022年11月15日
EnterEspoo社のシニアビジネスアドバイザー清水眞弓さんを伺いました。
(EnterEspoo社はエスポー市のイノベーション支援組織です)
EnterEspoo社がどうやってイノベーションエコサイクルを回しているのか、というのが僕たちの興味でした。
エスポー市が推進するイノベーション・エコシステム「Espoo Innovation Garden」では、ガーデナー(gardener=庭師)と呼ばれる人たちがスタートアップの触媒としてイノベーションエコサイクルを回していると聞いていました。
そこで、僕たちが同じように「ガーデナー」のようなイノベーションを推進する触媒を取り入れるにはどうしたらいいか、を探るべくEnterEspoo社に話を聞きに行きました。
ガーデナーが果たす役割とは…
最初に清水さんから「ガーナデー」の呼称についてお聞きしようとしたところ、3年前に社名を変えた際に廃止したとのことでした。のっけから梯子を外された感じでしたが、その理由を聞いて納得です。
EnterEspoo社としては、もっと外国にもEspoo市を発信しスタートアップを集めていきたいのですが、「ガーデン(garden=庭)」という呼称がまるでスタートアップを囲い込むような印象を与えてしまい、マーケティング的に誤解を産んでしまっていたとのことでした。
また、ガーデナーという役割は特定のスキルや肩書きに付随するものというよりも、特定の個人の属性としての色合いが強く、そういう人物はガーデナーという呼称に関係なく触媒になっていたということも背景にあるようです。
そのため、今でもガーデナーとは呼ばれていないが役割を担っている人は存在しているようで、草の根的に立ち上がった約20のクラスターの中には"Co-Creation Manager"や"Community Manager"と呼ばれる人たちがおり、触媒となって起業家やスタートアップ・大企業を繋いでいるとのことです。
日本でも、行政や大企業が主導してオープンイノベーションの場作りを進めるようになってきています。ただ、単なるスタートアップの集まりになっているケースがほとんどのようにも感じます。
イノベーションをエコシステムとしてきちんと機能させるためには、ガーデナーのような積極的に踏み込む「触媒」が必要になるのではないでしょうか。
トラスト社会とイノベーション
さらに、清水さんにエスポーでイノベーションが根付いている理由について聞いてみました。
「トラスト(信頼)をベースに動いているからだと思います」
清水さんに言わせると、フィンランドではトラストを前提として社会が成り立っており、例えばヘルシンキの公共交通では乗降の際に切符を確認しません。(僕も空港からヘルシンキ市内へのバスのチケットを買いましたが、一度もチェックされませんでした)
そのトラストが社会の根底にあるからこそ、企業や大学や自治体が連携しようとしたときに、余計な信頼コストを発生させる必要がなくスピーディかつシームレスにイノベーションを追求できるとのことでした。
翻って日本を考えた場合、トラストと呼ばれるものが不足しているのかもしれません。企業同士が連携しても、まずは信頼を醸成するために打ち合わせを重ね、その信頼ができてから本格的に動くということも多いのではないでしょうか。もしくはその信頼を補完するために契約書を交わしたり。
また、トラストが社会に存在する背景には個人の動機に違いがあるようにも感じます。
フィンランドでは、ビジネスライクな考え方に基づいて行動を起こすのではなく、個人がそれぞれの動機をベースとして行動を起こします。
上の方で「エスポーでは草の根的に約20のクラスターが立ち上がっている」と書きました。そのクラスターには大企業も参画していますが、完全なGiverというわけではなく、かといって目先のマネタイズだけを追いかけるわけでもなく、イノベーションのツール(の一部)としてエコシステムに加わっているそうです。
そして、そうすることで人と人とが繋がっていき、新しいイノベーションが生まれるサイクルができているようです。(他にも人材が流動的である、自治体を信頼している、というようなポジティブな背景もあるそうです)
EnterEspoo社による日本企業への期待!
EnterEspoo社はEspoo市の子会社でイノベーションエコサイクルを広げることをミッションとしています。日本企業への期待は大きく、今後はよりイネーブラーとして特徴を強めていきたいとのことでした。
Espoo市のイノベーション環境は疑問視するところがなく、スケールアウトとしても何かしらご協力できればと最後にお話しさせていただきたました。
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