4、5年くらい前、本気で転職を頑張っていた時期がある。今の職場はパートであることと、待遇も良いとは言いにくく、これから先のことと、年齢のことを考えて、ハローワークに通っていた。障害をオープン(開示する)かクローズ(隠す)かどうか悩んだが、通院日は平日だし、時々だけれど鬱が酷すぎて起きることができない朝もあるので、オープンで探し始めた。それに、企業には障害者を一定数雇わなければならないという規則もあるので、そっちの方が良いのではと考えたからだ。

障害者雇用枠の求人で良さそうなものが見つかれば応募していたのだが、書類で落とされてしまう。ハローワークの障害者窓口で履歴書の書き方をレクチャーしてもらったが、それでも落とされる。障害者の合同面接会に行き、何社かその場で面接したけれど、どこにも引っかからない。

私は学生時代からバイトや仕事の面接を死ぬほど落とされる。バイトの面接に連続で15個落ちたこともある。自分ではどこが悪いのかさっぱりわからない。面接の時に変な服装をしたわけでもないし、言葉遣いが悪いと言うわけでもない。面接の時間の15分前にはきっちり店に着いている。しかし、落ちるたびに自分がいらない人間であると突きつけられ、最終的には死んだ方がいいのではないかと言う気持ちになる。私は原因がわからないけれど、第一印象が最悪なのだと思う。

いろいろ悩んだ末、以前支援職をしていた上司に相談して、就労支援事業所を紹介してもらった。公的な機関がやっているところで、面接に支援員が同行したり、就労するまでサポートをし、就労後も継続的に支援をしてくれるというところだ。

ただ、私は平日の昼間に働いているので。就労支援を受けるために仕事を休まなくてはならない。上司に相談して、休みをもらって、事業所で登録をしてきた。その後、仕事の技術を見るテストがあるというので、さらに仕事を休んで、半日テストをした。書類の数を数えるとか、パソコンで入力をしたり、重いものは何キロまで持って運べるかなどをして記録をつけてもらった。

テストが終了した後、担当の人が「小林さんにあった仕事があれば連絡します。自分でもハローワークでいい仕事があるか見つけてください」と言われた。正直、ハローワークにはずっと通っているけれど、同じ求人がずっとあるような状態だし、事業所に直接「働ける障害者を紹介してください」と言ってきた企業の方が取ってくれる率は高いだろうと思い、ハローワークはいったん行くのをやめて、担当者からの連絡をまった。しかし、待てども連絡は来ない。二週間たち、三週間たち、一ヶ月経った。自分から連絡した方がいいのかと思ったが、ここまで連絡が来ないということは私のテストの結果が酷すぎたのかも知れないと思い、かける勇気が出なかった。それでも、数ヶ月間は「もしかしたらかかってくるかも」と思ったが、一年経ってもかかってこなかった。

いろいろな書類を記入して、障害者手帳のコピーとかも出した気がする。テストの結果も教えてもらえないまま、私は事業所から見捨てられた。

私は障害者になってから、支援者からまともな支援を受けたことがない。自分は福祉に関する文章を書いているけれど、良い支援者にあったことがない。デイケアのスタッフから「引きこもっているメンバーの家を訪ねてほしい」と言われて「それはピアサポートですか?」と尋ねたら「あなたなんかにできるわけないでしょ」と笑われたし、自殺未遂をしたらデイケアを出入り禁止になった。もちろん、就労につなげてもらったことは一度もない。そのため、私は助けを求める力がとても弱い。正直、福祉の仕事をしている人に何かを頼んでもやってもらえると思えないし、良い方向に動いてくれるとも思えない。今回の就労支援はかなり勇気を出したし、時間もかけたのだが、意味がわからないまま強制的に終了になった。それから2年たち、3年たち、5年たった。

職場で会議があり、就労の話題になった。みんなが就労支援の話をするので、勇気を出して自分の体験を話した。その時、就労支援事業所を紹介してくれた上司が「電話してみてもよかったかもね」と言った。「もしかしたら、小林さんは既に働いているし、自分で探せるかもと思って連絡をして来なかったのかも」と言われた。私はその言葉に動揺した。自分で探せるなら半日もかかるテストなんて受けないし、わざわざ日時を予約して事業所まで来ないだろう。私は会議が終わった後の昼休み、勇気を出して就労支援事業所に電話をした。

電話に出た人に名前と用件を告げると、以前担当した人がまだ在籍しているらしく、すぐに出てくれた。そして、なぜか「空いている日に面談しましょう。いつにします?」と空白の5年がなかったかのような言葉を発した。

私はまず、連絡がずっと来なかったので、テストの結果が気になっていると尋ねたら「テストは全く問題ないです」と言われた。では、なぜ、仕事の紹介をしてくれなかったのかと尋ねたら「正社員で給料が16万から17万でしょ。正社員はなかなかないし。契約社員とかパートばかりだから」と言われた。もちろん、正社員は私の希望だけれど、もし、どうしてもないのなら「少し譲歩してこの職場はどうですか?」とか連絡してくれても良さそうだし、テストの後、一切連絡をして来ないというのはどうなのだろうか。

相手の男性はテストの後、数年間連絡をよこさなかったことを一度も詫びないのを不誠実だと思った。でも、言葉には出せなかった。しかし、悲しくなってきて、思わず電話口で泣いてしまった。「まだ、そちらに行った時は30代だったので、最後のチャンスだと思っていたんです。もう40代なので、転職は難しいと思っています。それにコロナウイルスでこんな状況なので、今からそちらに伺っても遅いと思います」と、言ったら「40代でも遅くはないですよ。今でも仕事はあるにはありますよ」と担当した男性は続けた。しかし、30代より40代の方が不利であることには間違いないし、リーマンショックよりひどい不況だと連日ニュースで言われているのだから、昔より今の方が圧倒的に不利だと思う。私は泣きながら相手に対しての怒りよりも自分に対して腹が立った。信用したら裏切られるし、健常者は障害者をどこかで馬鹿にしている。支援に携わる者の方がひどく偏見を持っている場合もある。

「利用したくなったらまた連絡します」と言って電話を切った。障害者へのたゆまなき支援というものを私は今も昔も知らない。


いただいたサポートは自分が落ち込んだ時に元気が出るものを購入させていただきます。だいたい食べ物になります。