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出産の保険医療化でお産が変わる!

SBSK自然分娩推進協会では、代表の荒堀憲二(産婦人科医師)よりメルマガを配信しています。
今回は、メルマガ87号(2023.04.20)の配信内容です。

出産の保険医療化でお産が変わる!
― 今こそ助産院の出番です ―

出産の保険医療化の話が進んでいます。

2023年3月20日に菅前総理大臣がそのための観測気球を打ち上げました。
「出産費用や妊婦健診の費用を保険扱いにすることで個人負担分を支援していくべきだ」という内容でした。

しかし実はこの時、すでに自民党は「こども・若者」輝く未来創造本部(本部長:茂木敏充幹事長、橋本岳事務総長、関係省庁出席者・自見はなこ内閣府大臣政務官、以下多数)を立ち上げており、1週間後の2023年3月27日には「『次元の異なる少子化対策』への挑戦に向けて」を発表しました。
続いてこども政策担当大臣、厚労省保険局長の答弁に続き、2023年4月6日の加藤厚労大臣の令和8年に向けてのアクションプラン発言と、矢継ぎ早に発信が続きました。

まるで(誰かが)絵に描いたような、スピーディな流れであったと言えます。

さて、これで何がどう変わるのでしょうか?

因みに私の周りの若い産婦人科医師達に聞いてみると、
「いいじゃないですか、保険になれば安くなるでしょうし」
「少子化への対策としていいんじゃないですかね」

これに対し「自費であるから部屋、食事、その他もろもろのサービスができた分があるけどそれは保険にできないでしょう?クリニックは困らないかな?」と問うと、
「自費のサービスは勝手にお金とればいいんじゃないですか」と屈託がない。

裕福なお母さんならそれでいいけれど、そうもいかない人がいるので、42万円(4月から50万円)の出産一時金を、もっともっと上げてほしいという声は業界から常に出ているが、保険になればストップをかけられるのでクリニックは困ること、
一定の質を保ったサービスが同じ料金で有名大病院でも受けられ、その上、都会の大病院は麻酔科もいて無痛分娩も保険扱いでできることになるから、都会では「クリニック・中小病院」→「大病院」という妊婦の大シフトが起こる可能性があること、
等の可能性を伝えてみました。

「はぁ、飛騨だとうちしかないから面倒ないですね」

そう、まさに飛騨のこの事態を都会で促進させるような事態になりかねないのです。

ただし物は考えようで、そうなれば分娩は医療管理満開の大病院と、自然分娩派の施設に分かれざるを得ないでしょう。
後者には助産所はもちろんですが、自然分娩を推進するクリニックや小病院も含まれます。しかし後者が生き残るには、自然分娩の重要性のエビデンスを広める必要があります(そのためにSBSK制作の動画を販売していますので、助産所もクリニックもご活用下さい ―後述

日本産婦人科医会の声明

だからクリニックが中心である日本産婦人科医会は以前から、分娩の保険化には強く反対してきました。

自民党の自見はなこ政務官は、自身も小児科医で父娘2代にわたる医師会推薦の医系議員ですから、今回もその筋の活動により、法案は換骨奪胎されて名ばかり法案となりはしないかと心配していました。
しかし今回は先に述べたように前総理まで担ぎ出しその迅速さといい、周到な準備があったようです。

しかし、当然反対派のはずの日本産婦人科医会は2023年4月7日に「出産費用の保険適用化検討に対する本会の見解について」と題して、方針の転換を予見させるような以下の声明を発したのです。

声明では「出産費用の保険適用化には慎重な議論が必要ではあるが、妊産婦の自己負担軽減を推し進めることについては全面的に賛成 であり協力する」とし、慎重に議論すべきは以下の3点で、

保険適用の範囲と運用等によってはかえって妊婦の自己負担が増す可能性があること
妊娠、出産、産後を通して、自費診療の枠組みで行われている医療や保健サービスの取り扱いが不明で、それらが提供できなくなる可能性があること
全国一律の分娩費用になることで、地域によっては分娩取扱施設の運営が困難になり、医療提供体制に支障をきたす懸念があること

公益社団法人日本産婦人科医会による声明より引用

これらについて「国民に資するために、職能団体としてあらゆる可能性を排除せず積極的に議論に関与してまいります」と。

妊婦のために改善に全面協力する、ですから大変いいことです。
ただ「あらゆる可能性を排除せず」の意味が深長過ぎます。

そして2023年4月19日には、
妊娠・出産および産後ケアの安全性と快適性を守っていくために ~ 開業助産師(所)による妊娠・出産および産後ケアについて ~ 」
と題して、下記のように声明を出しています(太字は筆者による)。

妊娠・出産は母子の安全を第一に追求すべきでありますが、同時に妊産婦の満足感を満たすべく、その快適性を支援するなどの配慮も求められています。妊娠・出産時の健康支援を充実させ、さらに妊娠・出産での快適な経験が得られれば、次の出産や子育てに対する意欲を通じた少子化対策にもつながるものと考えられます。しかし、妊娠・出産はいつ異常事態が発生するか予測できないものであり、(中略)異常事態の発生を予防するために、医学的な検査や評価が必要になります。
これらのことが理解されたうえで、個々に合わせた周産期ケアのひとつとして、助産所での妊娠・出産ケアは選択肢に含まれるものと考えます。嘱託医師および連携医療機関は、(中略)当該施設の産科医師と助産師間のコンセンサスと信頼関係に基づいて結ばれるべきものと考えます。
一方、(中略)母子に対するきめ細かな切れ目のない産後ケアが行われるために、出産(分娩取扱医療機関と産後ケア施設間で妊娠・出産経過についての情報共有と異常事態発生に備えた連携が、これまで以上に求められていると考えます。
 日本産婦人科医会は、妊娠・出産の安全性と快適性を守っていくために、日本助産師会をはじめとした関連団体との協議を継続していく所存です。

公益社団法人日本産婦人科医会による声明(日産婦医会発第24号)より抜粋。

あらゆる可能性を排除せず助産所とも連携していく中で「助産所の快適な経験が少子化対策にもつながる」とSBSKが訴えてきたことが、ちりばめられています。

クリニックと助産所が協同する時代が来るのでしょうか
(つづく)

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